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【連載小説】『忘れもの』

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連載小説です。 誰しもが心に抱える裏側の自分。 つい否定したくなる自分の影に人は向き合うことができるのか。 そして、自らの表と裏に出会うとき、人は何を考え、何を感じるのか。 人は…
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記事一覧

『忘れもの』 【最終話】 「忘れもの」

******  森の入り口を案内するように、シロツメクサが元気よく咲いている。  子供の…

『忘れもの』 【第12話】 「こころ」

****** 「だからあんたらメガバンクは信用ならんとよ!」  岡崎勤が顔を真っ赤にしな…

『忘れもの』 【第11話】 「本音」

****** 「葉山さん、担当が変わって早々で申し訳ないが、手形の15億を返済しようと思っ…

『忘れもの』 【第10話】 「変化」

******  春の長雨は、アシナガの森の生き物たちにとっては恵みの雨だ。  植物たちは…

『忘れもの』 【第9話】 「気づき」

******  社宅は築30年の鉄筋コンクリート造の4階建だった。  敷地の四方を万年塀が囲…

『忘れもの』 【第8話】 「仮面」

****** 「葉山さんは八王子のお生まれですかぁ。わしも若い時にはしょっちゅう東京に遊…

『忘れもの』 【第7話】 「光と影」

******  顔をゆっくりあげると、涙がレンズのように瞳を覆った。  絵の具を水に垂らした時にできるマーブル模様のように変形した空が見える。  まるで水の中から眺めているようだとノエルは思った。  しばらくこのまま眺めていたいと思ったが、まばたきすると、涙はポロポロと粒になって落ちていった。  スギゴケがノエルから流れ落ちたしずくをキャッチしたらしく、かすかに葉っぱのタップする音が聞こえた。  もう涙は出てこなかった。  身体中の水分が無くなってしまったのではないかと思

『忘れもの』 【第6話】 「追憶」

******  駅舎がだんだんと大きく近づいてきた。小刻みに揺れていた電車は、ポイント切…

『忘れもの』 【第5話】 「芽吹き」

******  足元はぺんぺん草の緑と白でにぎわっている。  アシナガの森も新たな季節の…

『忘れもの』 【第4話】 「転落」

****** 「社長、そこをなんとかお願いできないでしょうか。このとおりです。お願いしま…

『忘れもの』 【第3話】 「出逢い」

    ******  アシナガの森にある切り株の椅子の周りにはスギゴケの絨毯が広がって…

『忘れもの』 【第2話】 「すれ違い」

 ****** 「葉山、今月の数字、大丈夫なんだろうな」  支店長の片岡から呼び止められ…

『忘れもの』 【第1話】 「別れ」

****** 「ノエル、ごめんね。許して、ノエル……」 グレーのヒールが静かに音を立てな…