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ひとすじの光を信じる

「見えてくれ!」

「お母さんのところまで歩いてくれ!」

先生が叫ぶ。

網膜剥離で突然失明した風太。自宅での2日間の点眼治療のあと、再び診察に訪れ、見えているかどうかを確かめるために、歩行テストが行われました。

・歩行テストの方法

部屋の中に障害物として薬の空き箱を3つ置く。

部屋の端に風太を連れていき、わたしは逆側の端から風太を呼ぶ。

見えているのであれば、障害物を避けてこちらへ歩いて来られるはず。

部屋の隅っこに移動させられた風太、一瞬固まりじっとしていましたが、ゆっくり歩き出しました。

そしてすぐにまさかの惨事、

風太がしゃがみこみ、大便を・・・!!

緊張した空気が一気に緩む。「すみません!」と粗相をひたすら謝る…

先生が「大丈夫ですよ、よくあることです」と笑い、看護師さんが手際よく処理してくれました。

気を取り直して、再度の歩行テストにチャレンジ。


風太は、障害物を次々となぎ倒して、わたしのほうへ歩いてきました。

「やはり見えていませんね・・・。全くよけようとしませんでしたね」

先生が静かに言いました。

その後のコットンを眼前で落とす検査にも反応はなく、

風太の失明は確実なものとなってしまいました。

先生の説明によると

・視力回復するために、これ以上の内科的な治療はない。

・これから、病院としてできるのは風太が見えない暮らしをしていくためのサポートをすること。

・外科的な処置として網膜剥離の手術をしている病院があり、今までに数人紹介したことがある。ただし、風太の場合は網膜がほぼ剥がれているので難しいかもしれない。また手術ということで風太の身体にも負担がかかるし、金銭的な負担もある。しかし、まだ5歳なので手術を前向きに検討してもよいかもしれない。


例え数パーセントでも希望があるならば、風太の眼に光を取り戻したい。

網膜剥離の手術をしたいですと先生に伝えました。

先生がパソコンの前に座り、ある動物病院の名前を検索してホームページを開きました。

眼科のみのクリニックで、主治医からの紹介が必須で予約診察のみ。紹介状もWEBで主治医が登録するようになっており、ずいぶんシステマチックだなあと感心しました。

診察予約のページにうつると、直近今後1か月の予約は全て埋まっていて×印がずらりと並んでいました。

しかし、「急性の失明を伴う場合は緊急対応しますので、お電話下さい」との一文が。その場で先生がすぐクリニックに電話をかけてくれましたが、土曜日で既に診察時間外となっており、電話はつながらず、あとで先生からメールを入れて下さることに。

どうかどうか一刻も早く手術ができますように。

祈るような気持ちで病院を後にしました。


スナフさん、画像お借りしています。ありがとうございます。




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