地方と首都圏の大学事情

そろそろ大学受験シーズンも終盤に差し掛かりますねこんにちは。
うちの息子も受験生でしたが、いくつかの学校から合格をいただき残りの合格を待っている時期です。

さて、最近Yahoo知恵袋なんかを眺めることがちょっと増えたんですが、なんでしょう、地方国立大と都市部の私立大の変な殴り合いみたいな投稿がよくあります。偏差値競争お好きですね。ムシキングとか流行るのよくわかるわー。

こどもが受験するようになって改めていろいろ調べてみるとなかなか面白いんですが、国立大学ってあるじゃないですか。あの東京大学とか京都大学とかそういうやつ。首都圏在住だと「国立大学≒超難関」というイメージがあって、並の受験生が手を出すとやけどするぜ、という感じなんですけど、地方だと「いやまず国立大学、せめて公立大学」という方が多いそうです。
で、難易度、所謂偏差値的なやつを調べてみると、「旧帝大」と呼ばれているところ(東大・京大・阪大・名大・北大・東北大・九州大)や医学部、それに大都市圏にある国公立大学(一橋や東工大や神戸大、あるいは千葉大、横国、大阪公立大など)を除くと、だいたい偏差値50~60の間に収まっていたりします。いや高いほうがえらいとか低いほうがどうこうとかっていう話じゃないですよ。おおむね、「ちょっとした進学校でまあまあ真面目に勉強してれば手が届きそうな大学」というのが、その地域の国立大学、という位置づけです。

例えば高知県。あくまで例です。
高知県には国公立大学が3つあり、国立は高知大学、そのほかに高知県立大学と高知工科大学(※元々私立大だったところが公立に転換したところ)です。そのほかに私立で高知学園大、高知リハビリテーション専門職大というのがあるようです。
国公立の3校の募集定員合計は約2,000人ほどです。高知県の18歳人口は約1万人程度、進学率は44%とのことなので、4,400人ほどの子たちが大学へ進学します。私の予想では、概ね半数の子たちは地元の国公立に進む、というイメージではないかと思います。
ちなみに高知大学の学生数は全体で5,500人ほど。人口68万の高知県で5,500人ですから、人口比で同じ規模の大学が仮に神奈川県にあるとすると、約7万3,000人ほどの規模になります。日本最大規模の大学、日本大学の学生数がだいたいそんなもんです。つまり、「高知県民は神奈川県民のために日大規模の大学を国立の名のもとに与えられているレベル」ということになります。贅沢ですね。
なお実際に神奈川県にある国立大学は横浜国立大学ですが、学生数は1万人ほど。大規模大学と中規模大学の境目くらいの学校です。
ちなみに18歳人口比では若干比率が下がって神奈川県は8万人程度なので、同比率だと4万4,000人規模の大学、ということになりますが、それでも早稲田大学に近しい規模の国立大学という、この世に存在しないものが必要になります。

現実には首都圏を含めた都市部ほど大学進学率が高い一方で、国公立大学は難関ばかりなので、多くの学生は私立大学を目指さざるを得ない、という状況になります。私立高校までは「私立はお金がある人がいくところ」になっていますが、大学に関しては実際には私立の中高一貫校でみっちり受験戦士として鍛え上げられた人たちが、都市部の国公立大学に進むわけです。東大合格者の7割は中学受験組、なんて記事が少し前に話題になっていましたね。貧しい進学希望者ほど私立大学に行かざるを得ず、高い奨学金を抱えて社会に出る、というつらい現実が横たわっているのが、現代の日本です。

さて、地方に話を戻すと、高知大の医学部については流石に高偏差値ですが、その他の国公立はベネッセの難易度一覧で偏差値52~59程度、となっています。まあまあ頑張ればなんとかなりそう、と高知の進学希望の皆さんは思うレベルですね。まあまあ真面目に頑張ってやってるよね、というお子さんは、どこかの学部には無理なく進学できるんじゃないでしょうか。
偏差値というのはあくまで、ある模擬試験を受けたときのその人の成績の相対的な位置と、実際に合格した人の成績の比較です。もっといえば、「どれくらい頑張ればその大学に入れるか」という指標です。高知大を目指すのと早稲田を目指すののどちらがえらい、ということは特にありません。
まあまあ頑張れば地元の国公立大学に行ける、というのは極めて健全です。なにせ私立大学は高いからね。安いとこ行かれるなら、それがいいです。

一方、地方の私立大学が定員割れで大変、というニュースはたびたびあります。地方の国公立大学事情がこのような状況で、あえて私立大学に行こう、という状況というのは、
・地方の国公立大学に進むには学力が足りない
・国公立大学よりも魅力ある私立大学である
のいずれかのケースに当てはまると思います。

地方の私立大学定員割れの影響は、「入学定員厳格化」というかたちでなぜか東京の私立大学だけ狙い撃ちするようなかたちであらわれました。おい、早稲田や慶応の定員を厳格に絞ったら地方の私立大学の定員が充足されるのか、それはファンタジーに過ぎるぞw
理屈としては無理筋で、魅力ある私立大学にする、あるいは高知工科大学のように公立大学に再編して、安い費用で通いやすくする、といったかたちで入学希望者を集めるのが筋ではないかと思います。

一方、都市部の国公立大学のキャパシティ不足は、地方と比べると極めて不平等な状態を都市住民に強いています。そして現在の受験制度は、「小中学生からの課金ゲーに成功したセレブリティに都市部の難関国公立大学の枠をあげる」という、親ガチャに近いもので子供たちを縛り付けているわけです。
これを解消するのに、じゃあ都市部の国立大学を増やそう、キャパシティを増やそう、というのは、なかなか難しいことだとは思います。神奈川に早稲田大学規模の国立を!ってどこに作んねんいくらかかんねん、というのはサルでもわかりそうなものです。
じゃあ地方に移住すればいいじゃん、という極端な意見もありそうですが、仕事や人間関係をすべて捨てて未知の土地へ、というのがすべての人にとっての現実解でないのは自明です。

この問題を解決するのに、一番簡単で公平なのは、「すべての大学をいっそ無償化してしまう」ということです。おい、いくらかかんねん、というのは、実はすでに調べている人がいて、今の学生数が維持されている前提だと年間約3兆円だそうです。
誰もが能力に応じて、行きたい大学を選んで行かれる、というのは憲法26条の理念に沿ったものです。
いきなり3兆円の捻出が難しい、ということなら、例えば「国公立大学含めすべての大学の年学費は50万円固定。二部と通信はその半額」とすると、ざっくりの計算でその半分、1.5兆円で済みます。何ならたばこ税を全額大学の運営費に充てよう、とすれば、十分お釣りがきますしタバコをすうモチベーションも上がるというものです。

なんにせよ、今のクソ高い大学の学費というのは日本経済の足元、個人消費に多大な影響を与えますし、少子化の加速の一因とも考えられます。
子育て支援を標ぼうする政治家の皆さんには是非前向きにご検討いただき、明日にでもなんとか法制化していただきたいものです。いやほんと切実なんだから。

なお、ちょっと書きたいことが書ききれていませんので、別稿をあげる予定です。いつになることやら。


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