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大石笹身
2022年8月18日 20:11
通勤が無くなったら吹き出物が出てきた。医者に行っても化膿止めと抗生物質しかくれない癖に、治ったと思ったら次が出てきてきりがない。要は運動不足なのだろうと考え、朝の散歩を始める事にした。家を出て、特に目的地もなくぶらぶらと歩いていくと、雑木林の辺りでヒヨドリが私に鳴きかける。「奇異奇異、奇異奇異」私はそんなに奇異だろうか。もう少し行くと足元からコオロギが呼びかける。「殺せ殺せ」流石
2019年4月11日 08:52
丘の上…彼女に…もう、自由だ…伝えてくれ。土砂降りの雨の音にかき消され、声が聞こえにくい。 目の前にいる人間の顔が見えないほどの雨。「ナタキ、警邏の時間。」「…んん」 部屋の中央に設置された冷石から放たれる冷気により、心地よい温度を保った室内でナタキは転寝をしていたようだった。 うすく目を開けると、外は暗くなっていて、いつの間にか光石の外灯がついていた。 ナタキは同僚に起こされて、いささ
2019年4月11日 08:48
「なんで俺は凡人なんだろうな?」「確率の問題っしょ。」山崎の疑問に、岸田が即答した。「確率?」「うん。」 岸田は頷くと、目の前に置かれたファミレスの薄いオレンジジュースをストローでかき混ぜた。 氷がカラカラと涼しげな音をたてる。オレンジジュースは果汁100%に限るのだが、ドリン クバーなので仕方がない。「春色苺パフェになります。」店員が笑顔で山崎の前に苺パフェを置いて去っていった。 山
2019年4月11日 08:49
僕はいつだって恐かった。兄さんはとても賢くて、でも、理解できない人で。 僕は逆らえずに、いつだって黙って従っていた。 本当に嫌でも、何も言えずに兄さんの言うとおりにしていた。 兄さんは、別に僕を蹴ったり殴ったりして、傷つけたりするわけじゃない。 ただ、僕に、「あれをしろ」「これをしろ」という。 何か皆に言われたくないことを兄さんが知っているとか、そういうことでもない。 兄さんが兄さんだというだけ