香港の「タイに行ったら呪われた」系ホラーについての論文を書きました


昨今の情勢の中、外出を避け、自宅で読書や映画鑑賞などして過ごされている方も多いかと思います。

そんな方に、というわけではないのですが、最近私が書いた香港映画についての論文がWeb上で公開されたので紹介します。

(上のリンク先で、PDFをダウンロードしていただけます。)

内容は香港映画の中でもホラー映画、さらにその中でも東南アジアが舞台となっているものについてです。

古今東西、ホラー映画にはさまざまな「お約束」ないし「あるあるネタ」があり、ファンの方々はホラーの本来の主題である恐怖と並んで、そんな様式美を楽しんでらっしゃるのではないかと思いますが、おそらく香港ホラー映画界における最大の「あるある」は、

「東南アジアに行くと呪われがち」

なんじゃないかと思います。
(次点で「怪奇現象、日本占領期の怨霊のせいにされがち」)

1980年代から1990年代にかけて、香港人主人公が東南アジア(特にタイ)に行って呪われて大変なことになるという筋書きのホラー映画がたくさん作られ、ひっそりとサブジャンルを形成するまでになりました。

だから香港ホラー映画において、「東南アジアに出かける」というのは一番の死亡フラグです。

わたしはこの種の映画を、荒木飛呂彦先生の提唱されている「田舎に行ったら襲われた系ホラー」という類型になぞらえて、

「タイに行ったら呪われた系ホラー」

と呼んでいます。


背景には、香港では、東南アジアには「降頭」(ゴンタウ)という呪術があるという風に信じられていることがあるようです。すでにこの「降頭」が登場する小説についても以前ここで紹介したことがありますが、フィクションだけに出てくる魔法ではなく、実際に新聞の報道でも降頭疑惑が取り上げられたりもします。

これはいかなる現象なのか。とても気になったので、普段プライベートでは絶対に見ない(理由:怖いから)ホラー映画をいくつも見て、共通するあるあるネタをとりあげてまとめたのが上の論文です。

論文、というか実際にはそれ未満の研究を掲載する「研究ノート」という区分で、本格的な考察はまだ書けていない部分もあるのですが、その分、ある程度多くの方に読んでもらえるように、論文の形式に捉われないエッセイよりの書き方をしてみました。

内容はともかく作品はそれなりの数を紹介・解説してありますし、関連するホラー映画系の参考文献も文末に示してあるので、みなさまの読書や映画鑑賞の参考にしていただければ幸いです。

取り上げている映画は、一部の界隈ではそれなりに知名度があるものなのですが、古い上にどれもB級(またはZ級)のものばかりなので、日本でのDVDの入手は難しく、ネット配信でもみられないものが多いですが、ネットでゴニョゴニョすればゴニョゴニョできてしまうかも……。


こんな時代ですから、家で楽しく過ごしましょう。

ホラー映画鑑賞で「楽しく」なれるのかは人それぞれでしょうが、ホラー苦手な人間が書いた解説なので、この中の「あるあるネタ」を踏まえながらみていただければ、少なくともクスりとはしていただけるんではないかと思います。

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