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美白への執着心を拗らせていた話

「色の白いは七難隠す」

いやいや、7どころか。
清潔感、透明感、柔らかさ、甘さ、儚さ…
白く光る濁りのない肌は、私の憧れる全てを含んでいるように思えた。

小学生の頃。
白雪姫が転校してきた。

とても色白で滑らかな肌の持ち主である彼女は、たちまちクラスの人気者になったし、男の子からもモテモテだった。
もちろん肌が白いから人気者、ということではなかっただろうが、彼女を褒めるときには必ず「色白いしねぇ」というのが枕詞のようにつけられた。

美白全盛期の時代だったからというのもあっただろう。
なるほど確かに、白い肌はとてもキラキラしていて彼女の可愛らしさを際立たせているように見えた。

一方で自分はというと、メラニン量が多く日焼けしやすい、しっかり黄味を帯びた肌。
正しい紫外線予防の方法なんてまだ知らなかった頃。
誰に会っても「いい色に焼けてるね〜!」とか「運動部?」と言われるほどの小麦色の肌。

もちろん望んでそうなったのではないし、自分の肌の色は全く気に入っていなかった。
「健康的、元気そうでいいね」というニュアンスで言ってくれていることはわかっていたが、言われる度にガリッと心の奥が削られた。

加えて、疲れていたりストレスを溜めてしまうと顔を出す、痒みを伴う目元の謎の肌荒れ。
恐らくはアレルギーが関係しているのだろうが、いくつか皮膚科を回っても具体的な原因はわからず、塗り薬を処方されて終わりだった。

目元という、最も見られる場所。
「あれ?なにこれ?」と思われているのではないかという想像が膨らみ、勝手に居心地悪く感じてしまい、人と目を合わせることができなくなっていた。

そんな、肌に対するコンプレックスをグツグツと煮詰め続けた少女は、大人になるにつれて、化粧を覚えた。

このパウダーファンデを塗れば、肌が明るく見えるし、目元の荒れている部分も隠せる。
この下地はファンデのもちを良くしてくれるから、時間が経っても綺麗な状態でいられる。

コスメが、私の肌を変えてくれる。
大嫌いだった自分の肌を、変えてくれる。

もうこれは魔法だ。
変わっていく自分を見るのは、なんと楽しいのだろう。

美しい女優さんのように、とまではいかずとも「今ならあの頃の転校生の女の子にも引け目を感じずにいられる」と思える程度には、自尊心が回復していった。
コスメによって整えられた「人並みのそこそこ明るくて綺麗な肌」が長年のコンプレックスを溶かし、安心して人と目を合わせられるようにしてくれた。

時は流れ、美しさの基準も変わった。
今は「美白」という言葉を使うこと自体、少し古臭く感じられる。
肌の色も、顔の作りも、体の形も、人それぞれ。
その人なりの美しさを育てるという素晴らしい時代。

小学生の頃あんなに忌み嫌っていた日焼け肌も、今は羨ましいとすら思う。
つるんと光る褐色の肌は、健康的な美の象徴だ。

小学生の自分に教えてあげたい。
肌が白いことだけが美しさじゃない、美しさは人の数だけあること。
あなたにはあなたの良さがあるよ、と。
そして自分の良さが見つけられなかったとしても、美容やコスメが、必ず力を貸してくれる。

今、私は美容に携わる仕事をしている。
肌の悩みを打ち明けてくれるお客様の話を聞いていると、かつての自分を思い出して泣きたくなることがある。
なんとか、できることの全てを出して、寄り添いたいと思う。

人は何に悩み、何を求めているのか。
自分の持つ何に満足し、何をコンプレックスに感じているのか。

美容というジャンルの中でなら、強め重めの想いをもって、私にもできることがある。
そう信じてこれからも学び吸収し、容姿や肌について悩むすべての人の明日を変えられる可能性に責任を感じながら、伝えていきたい。

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