眠れない夜は決まって、
どうやったって人との距離が埋まらないことを思い知る。
どれだけ一緒にいる時間が長くても、
どれだけ深い話をした相手でも、
結局は私以外の他人で、
違う場所で生まれて、
バラバラの場所で、それぞれ死ぬ。
その紛れもない事実が、
たまらなく私の胸を締め付ける。

見つめているものが完全に違うことを
どこかから感じ取ってしまったとき、
音も匂いもしない宇宙の真ん中で
ただ1人、私だけが宙に浮いている。

ひとは、重なり合えない。
そんなことは私が産声を上げた頃から
この世界の道理としてそこに在ったはず。
それなのにすっかりと忘れて生きている。

しらないばしょで、
お互いの頬に涙が伝ったことも
顔を真っ赤にして1人でに怒ったことも
誰かを思って目尻を垂らしたことも、
全部、平行線で重ならない。
知らない人の人生みたいに、それぞれの時間の中ではなかった事になる。


別々のものを見つめて交差することのない目線が、私と人との間にある小さくて深い溝を露呈してゆくから、わたしの心はまた、
とてつもない強さでへし折られるのだ。

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