詩│漆黒


1.漆黒

消えてく消えてく消えてく
夢のように消えてく
さっきまであったほら
見ているたった今
ほらあるじゃない
目の前でこぼれ落ちて
消えてく消えてく
どんなに嘆いても
どうしようもなく
じっと見やっている目の前で
消えてく消えてく消えてく


2.凝視

渦巻いて溢れてこぼれ落ちる
息が荒くなっても尚
足の指を絡ませても尚
何かを壊そうと見せても尚
蠢く
無駄に丈夫な肋骨の内側で
このどうしようもない、何なの
わけも分からず「もう」とだけ
うめいて
たまらなくなって
抱きついた


3.灰色

消えちゃった
消えちゃった
もう消えちゃった
真っ暗闇が
消えちゃった
一瞬
ほんの一瞬だけだった
「おかえり」
ううん。
真っ暗闇の方が、誰かと繋がれるから
でももう消えちゃった
また一人の世界


4.背景色

胸に残ったのは
いつか飲み込んだ
甘いレモンの
絞りカス



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