詩│巨象は食みたい


山々を、風を、川を、夢を、貴方を、赤子を、卵を、
砕かずに、
丸ごと、
みたい。

噛めば壊してしまうその
無駄に丈夫な歯。
私は強いから、
みんなのように、
本音を、愚痴を。吐かずに済むが

私はもう、自重に、己の強さに耐えられない
歩けばアリを踏み潰すし
その道の草は枯れていく
貴方に残った歯型はいずれ毒のように巡って、私の見ている目の前で、本当に目の前で、1グラムずつ蒸発していくに違いない
最後に残った欠片すら拳に握れないまま、
忽然と世界が枯れ切る

だからといって手加減をし、
歩かず、笑わず、砕かず、体育座りをしたその周りに水をやり、淑やかに、慎ましく、正しく生きたら、
本当の私は消え失せて、
誰も、私ですら、私の悩みなど知らないまま、世界は巡っていくのかもしれない。
、、、それでいいのかもしれない。

すまない


私はただ食みたい。
歯の一本もない赤子のように
力いっぱい口を閉じても優しく貴方を包み込むくらいに
その一筆が、"力強く"、半紙に描かれた時、もう私に失うものなどなくなるというのに。

どこに行ったのだ、私の赤子時代は



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