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2010.11.6『学び合い』北海道  「第3回 子どもの姿を語る会」  振り返り&アンケート

1.次の内容について教えてください。
 
 (1) この会で得たもの
 何と言っても、これまでの会以上に幅広い分野から参加者を得て、多面的に子どもや教育について意見交流することができたのが一番の収穫であったと感じます。特に我々が初回から意識してきた「対話(ダイアローグ)」に関して、ワールドカフェを含むファシリテーションの専門家である岡山先生(札幌ディベート研究会代表)や丸山さん(neco塾事務局)が参加して下さったことで、大いに学びが深まりました。また『学び合い』実践者である勝山先生(真栄小)とテーブルを共にし、より具体的に実践上の悩みや課題をお聴きできたことも良かったです。勝山先生の人脈で、江別市議の林さんや子育てコーチングの石谷さん、病院事務職の関谷さんなど様々な立場の方が参加して下さり、「子どもの姿を語る」という一点で場を共有していることの不思議さを感じていました。石谷さんとは「自己肯定感」の重要性において意見が一致し、「まるごと受け止め、認める」ことの大切さについて語り合うことができました。私としても、用意していった「研修部便り」から、庄井良信氏(北海道教育大学)の『自分の弱さをいとおしむ』の引用箇所を示して、孤立より協働、禁止より承認を大切にするその考え方を紹介させて頂きました。勝山先生も、「クラスの子ども達を、全員お互いのコーチに育てる」との趣旨の発言をなさっており、「子どもから引き出す」という点でコーチングと『学び合い』が共通の理念を持っていることを確認することができました。

 「教育人間塾」でご一緒している飯田さん(すくーるhana主宰)や亀貝先生(札幌自由が丘学園理事長)が参加して下さったことも有り難いことでした。飯田さんは事前にブログhttp://ameblo.jp/schoolhana/entry-10690841306.htmlやメールマガジンで会について紹介して下さいましたし、亀貝先生もブログに会の感想を書いて下さいました。http://blog.goo.ne.jp/kametarou_2005/e/2c35bca680e2d0b30bf3f9687f24fdd7
 飯田さんとは後半、同じテーブルとなり、私が提起した「ホール・システム・アプローチが目指すもの」というテーマでの議論につきあって頂きました。飯田さんが実践されている「らくだメソッド」における「インタビュー・ゲーム」も一種の対話技法であり、ホール・システム・アプローチと共通の理念を持っているように感じます。岡山先生は「これはWhole system approach in a roomなのです」と教えて下さいました。多様な利害関係を持つステーク・ホルダーが、一つの場を共有しつつ合意を形成し、その中でそれぞれの価値観や思考を変容させていく。多様性を前提とするからこそ豊かなコミュニケーションが生まれる、との捉え方を共有できたように思います。その時には語れませんでしたが、以前お話しを伺ったことのある竹内常一氏(國學院大學名誉教授・全生研常任委員)の「対立が協働を生む」との言葉を思い出しました。

 今回は現役教師の参加が少なく、教室での具体的な子どもの姿を語り合う場面が少なくなってしまったのですが、そんな中で光陽小の原田先生から、『学び合い』に関心を持って実践されているとのお話しをお聴きすることができたのも嬉しいことでした。第1回と第2回は参加者のほとんどが教員で、具体的な教室でのエピソードが多く語られたのでしたが、それとは又違った視点で学校の現実を語り合うことができたように思います。情報大学の大学院で教育工学(情報教育)を研究されている元木さんや、藤女子大学で学ばれている大場さん(山田先生の教え子)など教育に関心を持つ若い方も参加して下さり、世代や立場を越えて「学び合う」ことができました。『学び合い』の普遍性や懐の深さを改めて感じる機会となったように思います。
 
(2) もっと知りたいと思うこと
 限られた時間でしたので、参加して下さった全ての方とは対話できなかったことが残念でなりません。亀貝先生が紹介して下さった「リアル熟議」のテーマである「公教育のあり方」のような大きなテーマについても、『学び合い』の理念に照らしてもっと考えてみたいと思いました。「熟議」は民主党政権が目玉として掲げる新しい政策形成手法ですが、北大大学院で公共政策を専攻された林市議とは、いつか別の機会にその辺りの議論をしてみたいと感じました。私は個人的には「熟議」の発案者である鈴木寛文科副大臣の言論について批判的な意見を持っているので、林市議がお持ちになっていた鈴木氏の著作を巡って、改めてワールドカフェをやってみるのも面白いかもと思いました。

 亀貝先生とは同じテーブルになれませんでしたが、ブログに書かれている「いわゆるゆとり教育も、その本当のねらいが浸透する前にねじ曲げられてきたといえる面もある」との指摘には、我が意を得たりとの気持ちになりました。私は「研修部便り」で2学期から「確かな学びを求めて」との連載をしています。第11号(8/31)で中教審の「ゆとりか詰め込みかということではなく、基礎的・基本的な知識・技能の確実な定着とこれらを活用する力の育成をいわば車の両輪として伸ばしていくことが必要」との文言を引用しました。亀貝先生のおっしゃる「ねじ曲げ」を見事に表現している文章であると、私は解釈しています。詳しくは現在準備中の人間塾レポート「市川伸一『教えて考えさせる授業を創る』の検討」で展開したいと思いますが、「子どもの姿を語る会」としても、改めて話題にしてみたい論点かと思います。『学び合い』の基本理念である「子ども集団は有能」「子どもに任せる」との考え方は、ゆとり教育の理念とも重なります。寺脇研氏を呼んでフォーラムを開いてきた札幌自由が丘の理念とも重なるものでしょう。ワールドカフェ・コミュニティ・ジャパンが目的として掲げる「コミュニティがつながりを取り戻し、新しい価値を生みだす社会の実現」とも関連してくるテーマかと思います。今回の出会いをさらに発展させ、新たな『学び合い』の場を創り出したいと思います。今後ともよろしくおつき合い下さい。

2.その他感想や要望があればお願いします。
 いつもながら、会の企画・宣伝・受付・進行・会計…と、中心となって動いて下さった山田先生に、心から感謝致します。第2回の振り返りで、私は以下のように書きました。

まだ始まったばかりで、方向性の定まらない会ではありますが、『学び合い』を軸にしつつも、幅広い立場の方が参加して語り合える、懐の広い会でありたいと思います。今回縁合ってFS『漂流教室』の皆さんとも繋がることができましたので、「子どもの姿を語る」ことから広く人間発達援助者が繋がり『学び合う』会に少しずつ成長して行ければと思っています。

 3月に『学び合い北海道』を立ち上げてから、まだ半年あまりではありますが、着実に上記のような会のあり方が実現しつつあります。他の地域で行われている『学び合い』の会とは、どうも趣旨が違う様に感じますが、西川教授の『学び合い』実践にこだわらないからこそ見えてくる『学び合い』の良さの様なものがあるように感じます。こういった「懐の深い会」であり続けるからこそ、多くの方々に『学び合い』の理念を知っていただくことが可能であるようにも思います。山田先生も『学び合い』に拘らず「子ども達の幸せの追求」へと向かおうとされていますし、勝山先生もそれに賛同しておられました。これまで4回の企画を実施してきましたが、そこに参加して下さった方々の多様性こそが、我々の会の独自性なのではないかと考えます。『学び合い』実践者だけではなく、『学び合い』に関心を持つ教員(小・中・高)、フリースクール・私塾といった民間の教育関係者、コーチング・ファシリテーション系のワークショップ実践者、教育(政策)に関心を持つ政治家、病院事務など一般の方、保護者、学生…、これまで関わって下さった皆さんとのつながりを大切に保ちつつ、より開かれたコミュ二ティを志向しながら、慌てず・騒がず・坦々と、少しずつ前進できればと思います。さらに多くの皆さんと「子どもの姿を語る」ことを通じて出会えることを楽しみにしたいと思います。関わって下さった皆さんに改めて深く感謝致します。本当にありがとうございました。

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