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フジロックフェスティバルのエセタイマーズの残念な感じに関しての考察

 8月20日から22日まで新潟県の苗場スキー場でフジロックが行われた。フジロックの開催に関しては、多くの地域で新型コロナウイルス感染対策に関する緊急事態宣言やまん延防止重点措置が行われている環境下で延べ3万人規模の音楽フェスが行われることには賛否両論があった。

 個人的には同時期での大規模フェスに関しては反対であったものの、同フェスの様子をYouTubeでライブを見て楽しませてもらったが故にアンビバレンツな気持ちの中でエロ本を読む聖職者の如く罪責感に苛まれながら複雑な気分で見ていた。時期はどうであれ、音楽という芸術的な営みは社会に必要であるからやむ得ない部分もあるのかと自分なりにも無理矢理消化していた。

 しかし、問題の事件は忌野清志郎Rock’n’Roll FOREVERという企画のステージで行われた。忌野清志郎の曲を色々なアーティストが歌うというステージであった。そのステージでエセタイマーズと称した三人組が現れた。エセタイマーズとは、タイマーズという忌野清志郎が体制批判の前提とし風刺的に作ったバンドのパロディである。そのメンバーがすごく豪華で、ブラフマン、OAUのTOSHI-LOW、アジアンカンフージェネレーションのゴッチ、MONOEYES、the HIATUSの細美武士、ドラムはHi-STANDARDの恒岡章で構成されていた。日本ロック・パンクファンからすると流涎ものの超豪華なメンバーであり、私も全員のファンであったため期待に胸が踊らされた。しかし、この期待はのちに大きく裏切られることになる。

 エセタイマーズの最初の曲はタイマーズのカバーの名曲デイドリーム・ビリーバー(原曲モンキーズ)から始まった。そこまでは無難に終了した。

 問題は次の曲、「タイマーズのテーマ」である。突然、エセタイマーズからノータイマーという歌詞が出てくる。非常に違和感が生じた。

 「タイマーズのテーマ」は基本的にtimerは実質、大麻という意味であり、歌詞全体を自分なりに要約すると大麻と女と過ごす快楽的で愛おしい時間の流れを示す大麻礼賛の曲である。ノータイマー(ノー大麻)ではそもそものタイマーズの楽曲の意味の否定になるのである。その後もタイマーズの曲の毀損は続くTOSHI-LOWが「ネトウヨやめてよ、レイシストやめてよ、差別をやめてよ」と歌い上げると、ゴッチも「ガースーもうやめてくれ、棒読み答弁聞きたくない」と自分の政治的主張を歌詞に取り入れていく。もう「タイマーズのテーマ」の故忌野清志郎の詞の意図とは到底かけ離れた別の曲になってしまっていた。

 まさに「似非」タイマーズの「似非」タイマーズのテーマであった。大麻と女と過ごす快楽的で愛おしい時間の流れを示す大麻礼賛の曲を、ネトウヨや政府や総理大臣の批判の曲に改変される。個人的にはこれだけの詩の改変は故忌野清志郎の毀損にあたるのではないかと思ってしまった。

 しかも、タイマーズには総理大臣という総理大臣を揶揄した曲があり、政府や総理大臣を批判したければ同曲を歌えば済むことである。

 そして、そもそも論として総理大臣や体制を批判したければ、あえて、忌野清志郎Rock’n’Roll FOREVERのステージで忌野清志郎の詞の土俵を借りるのではなく、自分のバンドのステージで自分の曲の詞を変えて歌えばいいのではないのだろうかと非常に疑問に思ったし、エセタイマーズのメンバーが非常にかっこ悪くみえてしまった。

 そんな中で皮肉なことに今年のフジロックフェスティバルは、国から9千万円の補助金をもらうことになっている。その事実に政権批判をしたエセタイマーズのアジアンカンフージェネレーションのゴッチは何を思っているのだろうか。

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