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生命を生み出した大大大昔(冥王代)から大大昔(太古代)の地球

かつてパスツールの白鳥の首型フラスコの実験で、生物が自然に発生することはありえない、つまり自然発生説の否定がされた。しかし生命は最初からいたわけではなくどこかの時点で生まれたはずである。ではどうやって生まれたのか。この生命のoriginをめぐる探究はいつの時代でもホットな分野であり、いつまでも残る最大の謎と言ってもいいのではないだろうか。

この議論もいずれは書こうと思うが、まずはその準備段階として生命が生まれることのできる環境はいつ出来上がったのか、これを知ることも重要であるし、同じように知るのが難しい。

生命は地球の大気・海洋・地殻のシステムの上に成り立つ。いわば生命を育む母体が出来上がらなければ生命は生まれて繁殖していけないし、そのゆりかごの状態が「生命」という現象を生み出すとも言える。


↑地球は約46歳で、カタマリ魂のように太陽系付近の微惑星を集積して出来上がり、その集積のエネルギーでドロドロに溶けていた=マグマオーシャン状態だった。僕ら生命はこんなドロドロマグマの上では生きていけないし、同じように水が凍ってしまうような環境でも生きていけない。

そんなマグマオーシャンが冷えてきて大陸地殻が出来てきた。

高温高圧のマグマが冷えてくると密度の大きい玄武岩などは下部に落ち込んでいく。一方で比較的密度の小さい岩石(花崗岩類、2.7g cm^-3)は密度の高いマントルに浮いた船ような状態になる。これが大陸地殻である。38億年前のグリーンランドのイスア地域などに存在する花崗岩類やそれが変成(熱や圧力を受けた)された片麻岩の存在から、すでに大陸が38億年前には存在していたことがわかっている。

では海はどうなのか。

我々生命には水が必要である。水などの溶媒がないと脂質やアミノ酸といったあらゆる分子は移動が出来ないし、水に溶けてイオンの状態になった元素でないと利用するのは難しい(固体の鉄から鉄を吸収するのは難しいですよね)。生命があらゆる生存手段を獲得している現代ですら砂漠で動植物が生きていくのは至難の技である。海は生命を育むために重要である。

(上の記事で書いたような説もある。これも面白いのでぜひ読んでみてください)

最初の海はまた38億年前のイスア地域にその痕跡をみることができる。それが分かるモノが、枕状溶岩と堆積岩の存在である。これはジルコン鉱物から推測されるモノよりも決定的な証拠と言えるだろう。

枕状溶岩は吹き出した溶岩が水で急に冷やされて表面が急速に固まり、それを突き破って内部の高温のマグマが吹き出す、という過程を繰り返すことにより何重にもこの構造が重なったモノである。枕を重ねたような楕円形の溶岩の累層構造からこの名前が付けられた。これは現代でもみられる現象で、マグマが海洋底に吹き出して冷やされた証拠なのである。イスア地域ではこれが観察される。

堆積岩とは大陸が風化(削れたり崩れたりすること)したりして河に流されると海に到達する、大きな粒子(礫とか砂)は海岸の近くに堆積し、粘土などの細かい粒子は遠くまでいって堆積する。さらにそれが海の中で土石流が起きるとタービダイトと呼ばれるぐちゃぐちゃの堆積層ができることがある。このような堆積岩は粒子サイズの違うものが水による運ばれやすさの違いに起因して形成される。つまり堆積岩は海洋がないと形成が難しく、イスア地域ではこれも観察されるのである。

まさに海の化石と言える。

ではその時の大気はどうだったのか

大気に関しては推定が非常もい難しい。海洋や大陸近くと違って、岩石として残ってくれていないからである。現在でも様々な科学者たちがその姿を明らかにしようとしている。そこで代表的なお話を紹介する。「暗い太陽のパラドックス」「セーガン博士説」「キャスティング博士説」である。

まず46億年も前になると太陽が今よりずっと小さかったと予想される。すると地球に届く光は70%程度と見積もられる。そうすると平均気温は22℃程度下がり地球は氷に覆われてしまう。すると氷は太陽光をさらに反射するから(アルベドが高い)さらに寒冷化が進んでしまう。しかし海洋の存在を示す証拠がある。これが「暗い太陽のパラドックス」である。

「セーガン博士説」これに対しメタンやアンモニアなどの温室効果がすが大量にあれば凍り付かせずに済むと考えた。あとはモデリングで大体のその濃度が割り出された。一方でCH4やNH3といった還元物質はマグマとの反応によって安定して存在できないこともわかっている。

そこで登場したのが「キャスティング博士説」である。この大物先生は代わりに二酸化炭素CO2大気を想定した。CO2はマグマ存在下でも安定して存在できる上に、温室効果もある。現代の微生物のほとんどが二酸化炭素を固定して有機物(生物の体)をガンガン作っていることからも予想されるように初期の生命が二酸化炭素に適応した可能性はかなり高い。二酸化炭素大気を想定した場合、現在の二酸化炭素濃度の100-10000倍程度のCO2濃度があったと予想される。大気の10%とかそんくらいは含まれていたんじゃないか?って感じである。これがどんどん下がり現代のレベルになったのである。現代では大気の0.04%(400ppm)をしめている。

他にも硫化カルボニルや一酸化炭素が主流ではないか、とか、アンモニアも部分的には存在したとか、アンモニアではなくもっと安定なN2(普通の窒素ガス)が多量にあったとか様々言われているが、もっとも主流なのはやはりCO2(+N2)大気ではないだろうか。



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