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生命の部品となる物質が出来上がる→生命の出発点

46億年前に生まれた地球では約40億年前くらいには生命は生まれていたのではないかと考えられています。でも最初の生命はどのようにして生まれたのでしょう。その結論はまだ出ていないし、解決できるのかも分かりません。しかしこの至上命題を追求する価値はあるでしょう。私たちはどこから来たのでしょうか。

生命が生まれるためには我々の体を作る材料がないといけません。美味しい料理を作りたくてもその材料がなくてはいけません。今回はその生命の材料がどのようにできた可能性があるのかを簡単にまとめます。

生物は主に炭素や水素、酸素、そして窒素や硫黄といったものが連なったいわゆる高分子な有機物からできています。有機物なしに生命を論じることはできないでしょう。そこでこれまで多くの研究者は生物を介さない(無機的な)プロセスで有機物を生成する方法を探ってきました。

初めにそのような実験を行ったのが Miller (1953) でした。 Miller は当時考えられていた原始大気の成分をフラスコ内に入れて放電を続けることにより,数種類のアミノ酸を得ました。 その後も同様のモデル実験を通じて無数の有機物が合成されています。つまりアンモニアやメタンに満ちた環境での雷放電などを想定したような実験です。

環境条件としては,熱水噴出孔を模したものから,大気上層部の条件を想定したものまで様々な条件が調べられ, エネルギー源も同様に太陽光(特に紫外線),放電,宇宙線,放射線,火山,加熱(熱水),天体衝突など幅広く調べられています (Miller & Urey, 1959; Mojzsis et al., 1999)。ただ一方で Millerの想定した原始大気とはアンモニアやメタンを主とした還元型大気でした。原始地球の大気、海洋の組成はいまだに定かではありませんが、どのような組成を想定するかで結果は大きく変わってしまします。

ただこのようにして無機的に有機物を合成できることを明らかにしたことは非常に大きな成果で、現在でも多くの科学者によって支持されています。

地球内での雷放電による簡単な有機物の生成などに加えて、地球外の天体も有機物の供給源として注目されています。 最新の研究では隕石や微小隕石,星間塵,彗星などから多くの有機物が検出されています。有機物の濃度に着目するのであれば, 彗星のような巨大な天体衝突が最も効率が良かったという意見もあります。 逆に巨大な天体が地球に衝突した場合,衝突時に内部の有機物が破壊される可能性も高くなるため, サイズの大きくない星間塵の方が供給源としてより影響が大きかったとする意見もあります。 また一段式火薬銃という大型のピストルのような装置で金属を打ち出し、水と気体が入ったカプセルに衝突させることで、有機物が合成されることも明らかにされました。つまり天体衝突は単に内部の有機物を運んだだけではなく,衝突によって有機物の合成にも関与したと考えられています 。 これは大気の酸化還元状態とは関係がないようで,有機物の供給源の一つだったのかもしれません 。

アミノ酸は様々な方法で生成されることがわかってきたが、核酸や脂肪酸についてはどうなのでしょうか。生命にとって何が必要なのかはこの記事にもまとめられています。

核酸の構成要素である核酸塩基についてはシアン化水素やシアン化物、シアノアセチレンを初期物質にする実験によって生成されることが報告されています。隕石からも発見されているだけでなく、隕石衝突を模した実験でも生成することが明らかになってきています。

核酸に含まれる糖(リボース、デオキシリボース)についてはホルムアルデヒドという分子を原料に粘土触媒の存在下で生成されることが明らかとなり,隕石からも検出されました。

脂質については疎水基と親水基を持つ、いわゆる両親媒性分子があり、 それが膜のような組織を作れればいいのですが、これに関しても隕石由来の物質から膜のような組織ができたとか、高分子な有機物が高温の反応で膜組織ができたとか、タンパク質でも球状の膜のような構造が作れるだとか様々な報告があります。そもそも核酸やアミノ酸のような分子が深海熱水の水の通り道にできる多孔質な岩石のスキマに濃縮されて生命分子が出来上がっていくという仮説もあり、この場合は脂質の膜はいらないと考えられている。

これらからわかるように、生命の材料は様々な化学反応、生成場において形成される可能性があり、もちろん地球だけでなく隕石などによる地球外からの供給、隕石衝突時の反応などによっても形成される可能性があるようです。しかしもう一つわかるのはその時に想定する原始の大気海洋の組成や、反応が起こる環境が非常に重要だということもわかります。

以上のように,全てではありませんが重要な生体分子は何らかのモデル実験から得られていることがわかります。 これらの様々な有機物はオパーリンの「有機のスープ説」で知られるように海洋に満ちていったと考えられています。つまり何らかの方法(それは一つである必要はない)でできた有機物が海洋を満たし、何らかの過程で濃縮されることでさらに高分子の有機物が出来上がっていったと考えられています。

どのように生命が生まれる準備がされていったのか。有機分子たちは生成されるだけでは足りず、濃縮される必要もあります。モデル実験で得られた実験条件はそれぞれが様々な生成場、初期物質を想定しているので、全てが都合よく同じ場所でできているとは考えづらい。生成した有機分子が壊れないで安定的に存在していられる環境も必要です(基本的に有機分子は加水分解ですぐ壊れてしまいます)。不確定要素はまだまだありますが、有機分子が無機的に出来上がることはわかったので、今度はこれが多く繋がり、さらに高分子が出来上がるプロセスがわかればさらに生命の誕生に近づきそうです。

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