救急医が在宅医療を学んで得た気づき
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救急医が在宅医療を学んで得た気づき

佐々木暁洋

救急での勤務と同時平行して、4月から総合診療科の先生の訪問診療につかせていただき、在宅医療についても勉強をはじめました。

結論からいうと非常によい経験です。
救急では、心肺蘇生・外傷蘇生、敗血症蘇生などにやりがいがあり、
プレホスピタルではひとりで判断を迫られるのが楽しいのと同様に、
在宅は、臨床をやる中でこの先も継続して関わっていきたい現場のひとつだと感じています。

在宅医療をなぜしようと思ったのか、というといくつか理由はありますが、一番わかりやすい理由としては、
「八戸を中心に、病院前診療、ER、集中治療室、手術、カテーテル、麻酔、一般病棟管理で退院まで。急性期病院の一通りはみたことがある。だけど外来診療や自宅で生活する人、介護施設など病院の外の医療や福祉や人々の生活を自分は知らない」
これが一番大きな理由です。
実際にその視点だけでも学びはありましたが、当初思っていたのと違った気づきもありました。

まず自分がいかに自宅療養などに関わる様々な職種について具体的にイメージできていなかったがわかりました。
いままでERでは、救急車を呼んだヘルパーに「既往歴は?」と医学情報をたくさん聞いていました。
介護施設からERへの搬送に施設スタッフが付き添いとして来院して待機するのは当然だよね、と思っていました。
正直ケアマネジャーがどういう仕事をしているのか明確にイメージできていませんでした。
これらが気づけてイメージできるようになっただけでも収穫です。

そして、walk-in患者を含めて、高齢者などの生活の不安定さや、ここから数年先にむけた生活継続の現実性の見込み、のようなことを考えるようになりました。
介護申請は?いまの自宅の介護体制で持続可能か?このひとがあと5年後になっても介護できる?そのときに備えて、なにかERからでも手配できることはないか? など。
プライマリケアや地域医療としての救急を考えたとき、ある程度経験を積んだ救急医は一度、在宅医療を経験してみるのは有益かもしれません。(専攻医に…とも思いますが、ノッてきている医者学年くらいのときにはその価値に気がつけない救急専攻医もいるかもしれません ちょっとした経験値と成熟が背景として必要かな、と思っています)

あと…患者さんは「人間として大先輩」なんだ、ということを実感する機会もありました。
病院診療では経験したことのない「生きざまをみせていただく」という経験は、こちら側の生き方を考えさせられるようなインパクトがあります。

わかりやすく言えば、例えば、「ひとの死」に触れるときです。
救急では、親身になっていたらこちらの感情がもたないような「死」を日常的に扱います。そのため、自分の「感情を切り離して」「いったん気持ちを無にして」話をする、というテクニックを自然と身につけ、実践しています。
一方で、在宅のようなところでは「ひととひと」が接するような印象があり、
そのなかで、目の前のひとの死に触れることは自分の感情にダイレクトに働きかけてきます。家庭医や総合診療の先生たちはどうやってこの感情をコントロールしているんだろう。あえてコントロールしないのかもしれません。

先にも書きましたが、救急を専属にやっているひとはぜひ少しでも在宅医療に触れてみてください。救急外来の診療や、病棟担当患者をもつスタイルの救急科なら病棟診療の質もあがると思います。

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佐々木暁洋
地域医療、健康格差に興味をもつ救急/集中治療医