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専門医機構の「へき地勤務必修化」は本当に批判されるべきか。

医師の内輪の話となりますが、
専門医機構が、専門医維持のためにへき地勤務を求めるようにするかもしれない、ということに対して、
現場の医師から強い反発が示されています。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201806/556467.html

専門医の質を担保するためのシステムであるにも関わらず、
かつ医師が食っていくための「専門医」という肩書を人質にするような形で
へき地への人材の補填をする
というやり方には賛同しません。

「医師の質の担保」と「医師偏在対策」は分けて考察されるべきです。

ただ、一方で
専門医機構も、それに反発する医師も
「へき地医療、地域医療はやりたくないもの」
「へき地は専門医が専門性を維持するのに不要なもの」
という前提のもとに話が進んでいるように見受けられます。

身の回りに救急医を中心にジェネラリストや地域医療に近しい医師が多いせいか
「あー、こんなにみんな地域で働きたくないんだなー」
と改めて認識し、
知人も含めてあからさまに
「地域いきたくない!田舎いきたくない!」
と表明しているのをみて、
少しばかりショックでした。

そもそも「地域住民の中で医療を行うことが、医師のキャリアとして魅力的ではない」という医師の業界の価値観やキャリアプラン、医学部教育って、なにかはき違えていませんか?

ニーズベースに考えれば、
まず、「地域住民が必要としている医療」という概念がどこかにあって、
一方で、「医師個人がキャリアとして得たい医療提供能力」があって、
その総計の収支が合わない、というのはどこかにゆがみがあります。

つまり、
地域住民のなかにあっては得られない「専門性」というものが、医師にとってのキャリアアップになっている。

この価値観と、それを支える構造のゆがみから考え直さないと
(つまり自分たちの得たい専門性は、国民の求めているものに合致するのか)
このゆがみが温存されたままになってしまいます。
ゆがみは、過去から現在には(大学)医局制度によって支えられ、
それを今度は専門医制度が引き受けようとしているだけです。

専門医機構に対して物申すのであれば、
同時に旧態依然とした医局制度にも物申さなくては
現状の医局制度+寝当直バイト+医療の地域間格差/過重労働
にあぐらをかいた既得権益に取り込まれたものである
と批判されても仕方ありません。

じゃあ、対応策としてなにがあるのか、というと
「これが根拠がある!」
というほど強いものはありません。
しかし、
1, へき地出身者
2, 総合医
3,へき地/地域医療専門のプログラム
4,卒後早期のへき地研修
5, 学生のへき地医療実習
6,奨学金
7,キャンパスがへき地にある
8, へき地勤務の義務化
などの方法が考えられており、
効果が実証されているのは、1,2が主です。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/iken/22/1/22_1_103/_pdf

実際、僕自身 2,4,5が影響して、
救急という総合診療色の強い職で、
かつへき地とまで言わないけれど都心ではなく、地方勤務を続けています。

よって、専門医機構にできることはたしかに「義務化」や「人数配分の調整」というような政治主導、トップダウン型の施策となるのかもしれませんが、
まずは
・卒前教育からの総合医への誘導/教育
・学生や初期研修医の地域医療実習の拡充
などの方法がよいかもしれません。
実際に自分たちができるのは、
いわゆる「都心」「大学」「スペシャリスト」でなくても
「地域」「総合診療」で楽しく仕事ができ、そして必要とされていることを
あった学生や研修医に伝えることくらいですが。

そして、これは医療の地域間格差、いま問題になっている医療崩壊にも同じ根底でつながっていると思います。

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