2023年に読んだ本。

今年は9冊(マンガ・棋書は除く)。

1.教養としての精神医学(松崎朝樹/KADOKAWA) 
この本のキモは、各疾患の解説よりも精神疾患というものが人類の歴史のなかで生まれたものであることを誰にでも分かるかたちに落とし込んでいるところだと思う。
疾患の解説については、そもそも精神医学が一冊の本にまとめられれば苦労はないわけで。

2.臨床心理学(丹野義彦ほか/有斐閣)
分厚い本だけど、臨床心理学についてはこの本を読むのがいちばんの近道だと思う。各疾患のモデルがわかりやすく解説されている。

3.もういちど読む山川倫理(小寺聡編/山川出版社)
ひとりで漫然と読んでいると「偉い人のカタログ」になってしまうな……というのが正直なところ。議論することの必要性をあらためて感じた。

4.ハンチバック(市川沙央/文藝春秋)
今年読んだ唯一の小説。当事者を取り巻く環境が軽妙に描かれている。
ただ、その後の文学界を見ていると「何のためにこの作品を芥川賞に選んだのか」という気持ちはある。

5.小川さゆり、宗教2世(小川さゆり/小学館)
自分の信じてきた価値観やコミュニティを疑い否定しなければならないことの残酷さを突きつけられた。田口ランディさんの「選ばれることは、受難である」という言葉を思い出す。

6.はじめて人事担当者になったとき知っておくべき、7つの基本。8つの主な役割。(労務行政研究所編/労務行政)
7.人事担当者が知っておきたい、10の基礎知識。8つの心構え。(同上)
人事に関する知識を身につけたくて読んだ2冊。
緑本はベーシックな知識がわかりやすく説明されていてよかったけれど、赤本は執筆者の思想が前に出過ぎている気がしてあまりいい印象ではなかった。ことダイバーシティに関しては「進めてやってる」という態度が透けて見えたのも残念。

8.LD(ラーニングディファレンス)の子が見つけたこんな勉強法―「学び方」はひとつじゃない!(野口晃菜・田中裕一/合同出版)
教育現場のひと向けの本だけど、それ以外のひとが読むことで教育現場の現状やギャップを知ることができるのではないかと思う。会社では便利なものを当たり前に使っているけれど、学校ではまだそうではない。

9.看護のための精神医学第2版(中井久夫・山口直彦/医学書院)
中井久夫先生の代表的な著作のひとつ。現在のようなエビデンスに基づいたものというよりも、学問と叙述的な文章が柔らかく融けあうことを赦されていた時代のもので、それがとても心地よい。ボリュームのある本だけど、知識はこの本で完結しないということも教えてくれる一冊。
叶わないことだけど、現在のピアサポートや当事者が声をあげるようになったことについて中井先生の意見をお聞きしたかった。必ずしも優しい言葉ばかりではないと思う。

☆☆☆

読んでよかった本もあるけど、「自分の世界が拡がったか」と言われると微妙な気がする。特に教養系のものは一冊で完結しがちだけど、本とはそういうものではないし、来年はそれを忘れずに新しい本と出会いたい。
小説やマンガも読めたらなとは思う。フィクションをあまり読まないのはそれなりの理由はあるけれど、それはまた別の機会に。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?