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#36 14歳からサンタさんへ

娘の部屋にこっそり入る。中学2年生だから慎重になる。
とってつもなく散らかっている。

毎年サンタに手紙という名の欲しいものリストを書いているのでチェックしにきたのだ。
ドアから窓の手紙が見えた。距離は3mほど。散らかっているからか自然と忍び足になる。家には僕以外いないのに。
サンタは内側にいない、外側にいると確信しているのだろう。字面を外向きに貼る優しさが妙に嬉しい。
証拠を残さないよう恐る恐る手紙をめくり覗き込む。
手紙は2部構成になっていた。
「サンタさんへ」から始まり欲しいものリストには第1希望〜第5希望まで書いてある。
そして例年にはなかった第2部にはサンタへの感謝と、自分の今後の目標が書いてあった。
「毎年ありがとうございます」から始まり、来年は高校受験があるのでそれについてどういったことをしていくのか。などが書いてあった。
今まで味わったことのないような感動をした。

窓際で覗き見ていると首が痛いので写真を撮って部屋を出た。
すぐに写真の中の手紙を読んだ。
何度も何度も読んだ。

娘はこんな文章を書けるようになったのか。
14歳だからこれくらいは驚くようなものではないかもしれないけど、一緒にいた14年という時間がそうさせない。
まるでサンタと会話しているような文章に親の影はなく、「離れたところでちゃんとやってるで」と言われているようだ。
自分の見える範囲にだけ子供を置いておくなんて自己中心的な考えではこの感動はできなかっただろう。

中学生になるとサンタいない説を信じる子供がほとんどかもしれない。早い人は小学生とか。
信じるとか信じないとかではなく、やるのかやらないのかだと思っている。死ぬまでやろうと思っている。これくらいのファンタジー要素をたくさん折り込まないと人生やってられないだろう。
しかしこれはどこかのタイミングで暗黙の共同作業にしなければならない。お互いが役割を把握して演じ続けるのだ。これからどうなるかはわからない。来年も。

おかげさまで、生きていけます。