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#35 「イイ感じ」

少し不思議なのが、「学校行かないっす」と言って卒業までの8か月ほど夕方に1時間だけ授業を受ける日々を送った娘が、中学校へ入学して何事もなく3学期を迎えていることだ。
何事もないことに微かな不安を感じる僕はどうなんだと思いながら山形に冬が来た。

同じことを何度も言うけれど、僕ら夫婦は娘が学校に行こうが行くまいが、どちらでもいいのだ。
娘が産まれてからずっと思ってきたし、これからもそうだろう。
どちらでもいい。と言う表現は曖昧なので、それってつまりなんなのか考えた。
娘の将来のことなのか。お金のことなのか。親の仕事に関わるのか。
どれも芯を外したボテボテの当たりのなかで「どちらでも親の機嫌は悪くならないよね」という右中間を深々と割るいい当たりが出た。ホームラン級ではないけど今後につながるいいバッティングができたと思います。
学校に行っても行かなくても。好きな食べ物が、服の好みが、手にとるお菓子が、僕ら親と違ったとしても機嫌がおかしくなることはない。
ヤジることも、乱闘騒ぎもない。
子供が一方を選んだとき、親の機嫌が悪くなるのなら、それはどちらに問題があるのだろう。ピッチャーかバッターか、ここで野球を出す意味は全くないんだけど。

食べているもので身体ができているならば、メンタルもそうなんじゃないか。脳も身体の大切な一部ですよね。
家族のなかで僕だけ2年ほど前から食生活をグッと変えてみた。
試しながらなので流動的に細かい変化をしてきたけど、ざっくりというと、タンパク質と脂質をたくさん摂って甘いものを控えめに。
ビタミンや鉄などもしっかり摂る。
運動も大事かなと筋トレもする。というスリーをベースに。
食事でたくさん摂るには難しいのでプロテインとサプリメントでプランニング。
誰かが言っていたから。本に書いてあったから。とはキッカケに過ぎなくて、続けてきたのは体感が大きい。
体調を崩すこともなく、鼻炎のアレルギーが軽減され、クソ暑い夏に庭仕事をしていた。体のラインの変化は副産物程度の喜びとして、なにより精神的な変化はとても嬉しい。イライラすることがほとんどない。

あつまれどうぶつの森。プロテインを見つけて「これは買わないとな」と思ったそう



娘は小さいころから小食で、甘いものを頻繁に食べるわけでもなかった。
そのせいか身体は平均よりも小さめ。
こういった子供に栄養面でなにができるのか考えて、先ほどのをベースに今の食事にプラスしていった。あれはダメこれもダメなんて言ってはダメだと思う。
慎重に慎重に、約1年たった。
体調を改めて聞くと「イイ感じ」と言う。何がイイのかわからないが、娘もまた何かを体感しているんだと思う。
楽しいことを楽しいと思えるには脳内物質が必要なんだけど、材料がなければ不足するんじゃないかな。

「こどものため」といって周りの大人が自分を犠牲に何かをしようとするのが好きじゃない。
「学校に行きたくない」と子供が言ってきたとき、1番マズイのは親が下を向いてしまうことだと思っている。
子供のメンタルがまいってしまってるとして、見上げて見える親の顔が絶望的なら、その場の空気は地獄の地獄だ。
行く行かないの前に、イイほうに向かう気がしない。
やりたくないことをやっている大人の顔なんて子供はすぐにわかる。
子供のためになにかをする前に、親の心身の健康の方が遠回りかもしれないけど子供のためだ。

ご飯をたくさん食べることができない娘に自分を実験台にしながら栄養をプラスしたことで、学校に行けるようになりましたと簡単には思っていない。
ただ、小さな小さな要因にはなったのかなと思う。
小学校から中学校へは周りの友人たちにさほど変化はない。
入学してすぐに「待ってました」みたいなことを言われたようだ。
友達関係はどうなのかな。馴染めるのかな。なんて親の不安は一瞬で消えてしまった。友人たちには感謝しかない。
親が見ている子供の姿はごく一部だ。見えないところで楽しいことを楽しいと感じている。たとえ親と好みが違っても関係ない。
楽しいものは楽しいのだ。おっさんのニオイは臭いのだ。

学校に行こうが行くまいがどちらでもいい。
娘はどちらでも楽しい経験をしているんじゃないかな。
学校に行かなかった日々は僕がいろんなところに連れ出した。
理科室で先生と僕と娘で花を使った実験や、天体の動きをバスケットボールとライトを使って観察した。大きな声を出して1番騒いでいたのは、僕だ。
僕も8か月が最高に楽しかったのだ。
大きな声については謝りたい。



入学早々、密リスクを避けようと運動着で登校していた。
高っけー制服を買ったのにさ。
だからというわけじゃないけど、春から制服姿を撮っている。
どうせ子供のためにやるんなら好きなことがいいなと思う。
大人が楽しそうにしてると、根拠のない希望っぽいものがあるような気がするんですよね。

おかげさまで、生きていけます。