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5. 今日こそはの受診、そして入院

 今日こそは、何が起きているのかはっきりさせたい。いや、なんとかしてもらわないと生活できない!
 薬の調整レベルではない治療に進んでほしい!医療のことはわからないが、今のようなまどろっこしい事は、なんだか違うんじゃないか。僕の体がそう言っている!
・・ぐらいの気持ちで、しかし強い気持ちとはうらはらに、弱々しくP病院へと向かった。3月10日の事である。
 あとから考えるとみっともなかったが駅のホームからタクシー乗り場まで、最短距離を考えながら前傾姿勢で痛みをこらえつつ手すりを利用して移動。朝イチの受診なので、消化器内科の扉もまだ開いていない。廊下の長椅子にこれみよがしに、いや、やむを得ず横たわる。もう見栄も外聞も気にしていられない。うーと小さくうなりつつ時間を待つ。あわよくば通りすがりのナースに声をかけてもらえればラッキー。しかし現実はオープン前は皆忙しいのだ。診療開始まで待った。そして、開場。その後はベッドで待機に移行。

 まずエコー検査のオーダーから始まった。検査の先生の動きで何か見つかった事がわかる。
 「あれ?」ヒソヒソ、ひそひそ、他の人を呼んで・・・小さな声が続く
 「これって、ここがこうだから、あれですよね。」「そうですね、こちらから見てみて」「おそらくそうでしょう」
 なんだか複数での検討が続いている。横たわり、聞こえないふりをしながら、やっと何か見つかったか。次に進めて良かったと思った。検査のこともあり、痛みがひどいので即入院となった。ここまでを長く感じていたので、心から良かったと思った。事態は良くないのだけれどね。

 いくつか検査を経てわかったことは、十二指腸が腫瘍で極端に狭くなっており、生検もでき、その後、結果として十二指腸がんと判明した。
「十二指腸のがんは非常に稀で、治療方法も標準ガイドラインもまだ確立できていないんです。日々治療方法は進歩していて、アメリカの研究機関の新しい治療法も参考にしながら、他の課の先生方とも連携して最善を尽くします」というフレーズを何回か聞くことになる。
 苦しんだ末にやっと納得する結果を得た僕には、ほんのちょっとだけ言い訳に聞こえたが、まあ、多少時間がかかったのはしょうがない事と納得している。論理的に対処していることがよくわかっていたからだ。素人にはインターネットだけで医療の機微を判断することは無理である。

 さて、入院が決まったがコロナの時期だから家族面会や物品受け渡しも制限がある。家の者は耳が悪く車もないので、やりとりがちょっと大変そうだと思い、自分で院内売店を利用して補助さんの力もお借りして下着や上履き、口腔用品入浴セット等を自分で揃える。売店で封筒を買って郵送で書類を頼んだ。地元ならもっと簡単にできたのにと少し思ったが、いろいろな取り組みを進行中の大きな病院である安心感があった。
 入院準備、今考えると苦しい中よく自分でやったなあと思う。

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