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燦然、イレブンは多賀に咲く~J3第17節 ヴァンラーレ八戸戦レビュー~

 梅雨入りか?という長々しい雨にいい加減に辟易としてきた今日この頃。

 全国的に天気の悪い中で行われた八戸のナイトゲームは、いい天気に恵まれたようで何より。いいですね、ナイター施設。早くユニスタにもできないかな。

 アウェー席はご用意されませんでしたが、しっかりと試合をDAZNにて楽しませてもらいました。ありがとうございました。

 この記事では2021年9月3日に行われたJ3第17節、テゲバジャーロ宮崎対ヴァンラーレ八戸戦のレビューを行います。
 試合前に書いたプレビューについては上記の記事をご覧ください。

0.忙しい人はここだけ読んでください

・テゲバ、後半戦初勝利おめでとう!
・あまりにも美しい、美しいゴール
・八戸GK蔦が凄すぎた。

 それでは、以下より本題です。

1.血を通わせろ、巡らせろ~スターティングメンバー

○テゲバジャーロ宮崎

八戸プレビュー1

前節長野パルセイロ戦からメンバーチェンジは4人。梅田、大熊、井原、植田を下げ、代わって渡邊、奥田、大畑が入りました。梅田がいたポジションには藤岡が入り、前回の八戸との対戦同様、左サイドを張るのは渡邊。
 ゴールキーパーは前節2失点の植田に代わり石井が入りました。序列の話を以前のレビューでしましたが、これを見るとゴールキーパーの序列自体は結構フラットなのかもしれません。失敬。
 何より特筆すべきは最終ラインの入れ替えです。右サイドの徳永とのラインを生かすため青山、そしてキャプテンの代を残し、井原がいたポジションには大畑、そして左SBのポジションには、大熊の代わりに第1節以来の出場となる奥田を起用しました。奥田の復帰を機会に、固定されつつあった終盤の競争を促します。

○ヴァンラーレ八戸

八戸レビュー1

 前節岩手戦でベンチ入りしなかったFW島田拓海。試合後の29日、左ハムストリングスの肉離れによる戦線離脱が発表されました。
 第5節から主にオフェンシブハーフとしてスタメンを張り、天皇杯でもJ1、横浜FCから得点を挙げ、3回戦進出に貢献するなど攻撃面でチームをよく引っ張ってきた島田の離脱は中々に痛いものでした。前節は左OHのポジションに前澤甲気を置き、敗れはしましたが得点に絡む見事な代役ぶりを見せました。
 今節は島田のいつもいる左OHには前節同様前澤が、そして同じポジションの右には、上形ではなく中村が起用されました。
 また、左SBには元ホンダロック、テゲバの戦い方を知っている伊勢が起用され、テゲバと同様後半戦初勝利を狙います。

2.鮮やか、駆け抜けるは白い稲妻~前半戦

 前目から積極的なプレスをかけ、ショートカウンターを狙ってくるヴァンラーレに対するテゲバの戦略は、いつもと変わらずポゼッション志向のサッカー。終盤からメリハリをつけながら、細かく繋いで前線を狙います。
 立ち上がり5分はテゲバもパスミスがやや目立ち、中盤で青森OHにボールを奪われる機会もありましたが、CBが間合いを作って落ち着いて対応。大きなチャンスには結び付けさせません。

 5分を過ぎたあたりから宮崎の攻撃がつながり始めます。この辺りは前がかりになってボールを奪いに来ている中で、中盤にできているスペースに橋本が下りてボールを受け、最終ラインの裏を抜ける藤岡にボールを供給したり、あるいはサイドに散らして攻撃の可能性を探ります。

 こうした選択肢を見せていると、積極的なプレスも臆してしまい、ポゼッションされている間はブロックを敷いて攻撃を待とうという形になります。プランBです。
 個人的な意見としては宮崎がなかなかボールを失わない中で、八戸が得意の攻撃パターンに持ち込めず、だいぶ攻めあぐねている印象を受けました。プレスに行けば行くほどワンタッチでうまくかわされてしまう。

 テゲバジャーロの特徴を一つ改めて挙げるとするならば、(もう皆さんご存じでしょうが)ワンタッチパスの精度が高いことだと思います。
 受ける前からルックアップしてどこに出すかをしっかり想像し、アイコンタクトや声掛けによって意思疎通をしっかりとって攻めにつなげていく。

前半15分の橋本のゴールは、まさに「テゲバらしい」速攻から得られた得点だったと思います。じわりじわりと前線を上げて(プレスを自重し始めた八戸がラインを下げた、という見方もありますが)、攻撃の機会を窺うテゲバ。起点は大畑の鋭いパスからでした。

八戸レビュー3

 3バックのヴァンラーレですが、テゲバは最終ラインに藤岡、橋本、渡邊が張っており、それぞれに伊勢、赤松、小牧がマークについていました。
 しかしSB徳永が中に入り込み、裏抜けのチャンスを窺っていました。伊勢はこの時点で、藤岡と徳永の2人をチェックする必要があります。

 テゲバの最終ラインにプレッシャーをかけに行く前線と、前線へのボールの供給に備える最終ラインとで、ヴァンラーレサイドは分断が起こり、中盤に大きなスペースができていました。
 そこで最終ラインを押し下げていた前線から、渡邊が中盤のスペースに引き、小牧を引き付けます。そこを千布がよく見ていて、大畑に渡邊を指さしました。

スライド11

 ワンタッチパスは、パスを出す相手の動き、位置取りをよく見ていなければ往々にして成立しません。テゲバがすごいな~とよく思うのは、阿吽の呼吸と言うか、普段からオフザボールを死ぬほど意識した練習をしているんだろうな、と感じさせるシーンが試合中にいくつも見られることです。
 得点シーンは特に顕著でした。渡邊の空いたスペースでの貰い方(②)、藤岡から1枚はがさせる為に、赤松を引きつける橋本(③)、そして伊勢から意識を向けさせる徳永の動き方。
前線にいた選手が全てヴァンラーレディフェンスから藤岡を剝がすための動きをした結果、見事藤岡がゴールに対して前を向いて、フリーでボールを受け取ることができたわけです。
 藤岡のシュートに対する伊勢のディフレクションがゴール側に逸れたところを、猛然とダッシュしてきた橋本が押し込んで先制。個人的には藤岡がボールを受けた時点で正直「あっ、決まった」、と思いましたが、伊勢と小牧がよく戻って対応しました。
 流して1タッチ目でシュートに持ち込めていれば、この1点目は恐らく藤岡のゴールになっていたと思います。いずれにせよ素晴らしい攻撃でした。

 テゲバは攻勢を止めることはありません。前線へのボールの供給がとにかく繋がる繋がる。青山、奥田の両SBが溌溂としたプレーを見せていましたね。
 失点後のヴァンラーレは、ボールを持たれれば5バック気味にラインを敷き、とにかくボランチとの距離も近く、タイトにディフェンスしていたのが印象的でした。とにかくここでは今一度気を引き締め、点を取らせないぞ、といったメッセージのようにも見えました。
  ボールを奪われても前目前目からプレッシャーをかける守備で、見事に守備陣の攻撃参加を躊躇させ、フォーメーションの分断を起こし、決定機を与えずに済んだ、テゲバとしてはパーフェクトと言っても過言ではない前半で、試合の折り返しを迎えます。

3.The world is for him who has patience.~後半戦

 後半キックオフ、前半からのメンバーチェンジは両チームになし。

 テゲバは変わらず、ポゼッションを志向した形で前線を上げ、攻撃の機会を窺います。八戸も変わらず、ボールを奪ってからのショートカウンター狙う形で、ゴールを脅かそうといった様相。

 しかし51分、中盤で新井山が受けたファウルから素早いリスタートにより前線にボールが渡り、最終的にはペナルティマーク付近から八戸の7番中村にシュートを打たれる機会がありました。このシュートは惜しくも枠の左にはずれます。
テゲバ守備陣の課題は、プレーが止まった時の意識の弛みにあると思います。ここが改善されてくるともっとよくなってくるはず。
 前節長野戦の2失点目は、プレーは切れていないにも関わらず大熊と千布がレフェリーへのアピールで足を止めてしまったことが大きな要因となってしまっていました。プレーの中では非常に集中力高く守備ができるだけに、ここはとてももったいないなと思います。常に集中を切らさずにプレーするなんて、土台とても難しいことなんですけどね。

 追加点が欲しいテゲバでしたが、八戸GK蔦がとにかく冴えていました。前半の話になりますが、30分には橋本の落としから千布のコースぎりぎりを狙う強烈なミドルシュート。ゴール向かって左下と、非常に対応が難しいコースなのですが、いい位置でのポジショニングも相俟ってファインセーブ。この集中は後半も続き、54分の前田のシュートに端を発した宮崎の猛攻も、得点の気配こそ色濃く感じるものの、最終的には蔦に防がれてしまい得点が奪えない。テゲバにとっては非常に嫌な流れをつくられるプレーが続きました。
 もしこの試合が引き分け、もしくは八戸の勝利に終わっていたなら、僕としてはMOMに蔦を選んでもいいと思えるくらいでした。キーパーが蔦でなければあと2点は取れていたかもしれません。とてもいいキーパーだと思います。

 八戸の葛野監督は、ハーフタイムコメントで下記二点を指示しています。
「最終ラインの押し上げ」
 と、
「ボール奪取後の幅を使った揺さぶり」
 です。
 実際に後半立ち上がりからの八戸は、簡単に奪ったボールを失わず、きちんとシュートまで繋げられる攻撃ができていたと思います。宮崎も集中したディフェンスで対応していきましたが、追加点をなかなか取れない雰囲気が重くのしかかり、時間が経つにつれて八戸にボールを持たれる時間がだんだんと増えていきました。

 とりわけ明確に苦しくなってきたな、と思い始めてきたのは、中村に代わって上形が入ったところからですね。最終ラインに張り付いてタメを作ったり、ヘディングのターゲットになったり。
 プレビュー記事でも書いたんですが、ヴァンラーレは3-4-2-1と3-3-2-2と、流動的にシステムを変えながら攻撃と守備を切り替えています。攻撃の時に切り替わる3-3-2-2のツートップの部分に岡ともう一人、右側のIHが収まることが多かったんですが、とりわけ上形、岡のツートップの方がヴァンラーレは攻撃がやりやすそうでした。攻撃に関するアイデアがたくさんあるいい選手なんですね。
 そういった形で後半の飲水タイム後のテゲバは防戦一方となっていきました。カウンターの機会もあったので、長野戦程絶望した時間にはならなかったものの、それでもゴール前での迫力ある攻撃に怯え、ただ時間が過ぎてくれと願うほかありませんでした。八戸FW陣、恐るべし。

 そうしている間に89分、最後の交代カードは渡邊に替えて井原。最初はてっきり奥田を1枚上げるのかな?と思っていたんですが、まったくそうじゃなかったです。

めちゃくちゃフラットな形の5バックでした。

 このままでウノゼロで試合を終えるための超守備的な交代。分析的な目線で試合を見始めたのが最近なので、実際にあったら指摘してほしいんですが、少なくともテゲバで5バックって全然印象にないんですよね。
 とにかく分かりやすい交代でした。

 後半ATは恙なく進行したものの、前澤からのボールの供給から上がっていたSB廣瀬がヘッドで前に落として上形がダイレクトでシュート。完璧にやられてしまった、と思ったんですが、オフサイドで命拾い。

 上形にボールが渡った時には頭が真っ白になったのですが、シュートが決まった時には「オフサイドだよね!?」となり、実際にその通りだったので胸をなでおろしたものです。よく耐えてライン下げなかったと思います。このあたりは流石の代。頼れ過ぎる。

 その後、何度か八戸に攻撃機会を与えたものの、しっかりボールに寄せて有効なシュートにさせずゲームクローズ。1-0で宮崎の勝利となりました。ヤッター!

4.まとめ

ナイスゲーム!それ以外の言葉がないです!

 スコアだけ見れば1-0ですが、シンプルに相手GKの蔦のパフォーマンスが非常に良かった結果、こうなっているだけだと思います。あれだけいいシュートを打ちながら反応されていてはどうしようもないです。
 別の崩し方を考えるべきだったかもしれませんが、中を絞って3列目と4列目がタイトに守備をするシステムでは、ミドルシュートが有効なのは間違いないので。それこそ極端な話ですが、前節の宮阪みたいに。

 奥田の復帰によってチーム守備面も上向き、今節はクリーンシートを達成しました。一層DF陣の競争も活発化してくることでしょう。必ずまた大熊が必要になってくるときも来ます。とにかく次の試合、誰が登録メンバーに名を連ねるのかわくわくする試合となりました。YS横浜戦、非常に楽しみです。

5.余談

 ところで今節、サミュエルがベンチ外だったんですよね。奥田の復帰に伴い、誰をメンバーから外すのかかなり悩んだと思います。
 正味今回の場合は梅田が控えに収まっていて、攻撃的なカードとして水永、三村、梅田と切りに行くことができます。サミュエルに与えられているタスクとは、一番前でボールをとにかく追い掛け回すことにあるので、FWとは言えタスクは守備的なもので、水永、三村とは少し独立した部分にありました。
 守備的な交代のカードを3枚(今回は井原、綿引、大熊)用意している中で、残り3枚のカードを選ぶ中で、三村、水永、梅田、サミュエルという選択肢の中からサミュエルを落としたということは、サミュエルの役割を今回は捨て、攻撃の手段を厚くして行こうという狙いだったかもしれません。

 ゴールキックの時に遅延行為を指摘されたGK石井が「ごめんごめんごめんレフェリーごめん!!」と叫ぶところがマイクに拾われていてだいぶほっこりしました。コロナはかなり嫌ですが、選手の声が聞こえてくるのは、結構好きです。

 緊急事態宣言による規制、10月以降緩和されていくようですね。たぶん鳥取と福島にはいけるぞ、これなら。岩手はまた来年。
 鳥取で何食べようかなあ。どうやらカレーが有名みたいなので是非食べてみたいところ。いろんな事情で宿を岡山に取っているので、ちょっとゆっくり観光はできなさそうですが。
 福島は桃を持って帰って、隣の部屋の友達にあげようと思います。

 今回めちゃくちゃ書くの遅くなっちゃいました…本当は火曜日に公開したかったのに。今木曜日の深夜、金曜日になってしまった頃合いなんですが、仕事から戻ったらすぐにYS横浜戦のプレビュー執筆にとりかかります。

 ヒイ~~~~~~~~体が20個欲しいよォ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

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