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虹の鷗は流転を是とす~J3第18節 対YSCC横浜戦プレビュー~

 寒くなったり熱くなったり、暑さ寒さも彼岸までということわざを身に染みて味わっているところです。僕としてはずっと夏の終わりくらいの気温が続いてほしいんですが。

 アウェー席事情、希望的観測ですが10月はいろいろ解除されて、用意されるようにならないかなあと思っています。鳥取、行きたい、行きたい…。お願いします、何とかちょっと収まっておくれ…。

 今日もこんな情勢の中、サッカーを開催してくれる世界に感謝を。

 というわけで9月12日のJ3リーグ第18節、テゲバジャーロ宮崎はYSCC横浜とのホームゲームを戦うことになります。この記事は、対戦相手のYSCC横浜のプレビュー記事となります。

1.YS横浜との前回対戦

 前回のYS横浜との試合を振り返りましょう。当日は現地でした。ひいきチームの現地観戦での勝利ほど気持ちの良いものはないのです。

 はっきり言って完勝と言って過言ではない内容でした。
 前半19分にオシャレな中央でのワンタッチパスから、渡邊龍がキレのよいカットインを見せ、ペナルティアーク付近、ゴール正面からそのままゴール右上にスーペルゴラッソ。
 後半11分にもゴール前に梅田からフリーでボールを受けた藤岡がしっかりと決め切って追加点。得点はこの2点に留まりましたが、攻勢を緩めることなく、相手に滅多な決定機を作らせることもなく、クリーンシートでゲームを終え、見事勝利を飾りました。

 この試合はがんの治療から復帰した内薗の復帰戦でもありました。徳永に代わって右サイドに入った内薗は、見事に自分の役割を果たし、勝利に貢献しています。

2.YS横浜のフォーメーション的特徴

 前節対FC岐阜戦は3-4-2-1を採用。シーズン開幕当初は4バックシステムで戦っていましたが、開幕7戦で3分4敗と勝てず、苦しいスタートとなりました。そこで第9節岐阜戦では3バックを採用。上位にいる岐阜を相手になんとアウェーでシーズン初勝利を挙げると、続く鳥取戦では連勝でホーム初勝利を飾ります。

 そこからしばらく3バックを続けていましたが、前々節長野戦では4-2-3-1と4バックに戻してきました。結果は2-2の引き分け。4連勝中だった長野相手に堂々たる試合を見せ、前半戦を締めくくりました。

 フットボール批評という雑誌があるのですが、最新号issue33にYSCC横浜の監督、シュタルフ悠紀さんのインタビューが掲載されています。
 前々節長野戦では4-3-3のフォーメーションを敷く長野に対して、YS横浜は4バックを選択。理由についてこう語っていました。

「長野さんは最近ずっと[4-3-3]で、あまりシステムを変えていなかった。たまに[4-4-2]にしたり、[4-2-3-1]っぽくなったりしますけど、ベース状態でサイドに2枚いて、そこに流動的にシャドーの選手やアンカーの選手がサイドに寄って来る。ときにはトップに偽9番タイプを置いて、その選手もサイドに来る。
 もし僕たちが守備時に3バックにしたら、サイドに1人しかおらず、数的不利になってしまう。こちらもベースで2人配置したかったので、守備のときに4バックを選択しました。」

(フットボール批評 issue33より引用)

 恐らくですが4-4-2が基本フォーメーションのテゲバ戦においても4バックを選択してくると思われます。というわけで、3バックを採用した前節ではなく、前々節の長野戦のフォーメーションを用意しました。

YS横浜プレビュー1

 4-2-3-1。3バックだと4バック相手のサイド攻撃に数的不利な状態で対応しなければならない、というデメリットを受け入れなければいけません。その対策として4バックを敷き、守備時の人数不利を解消を試みます。

 この数的不利の話ですが、シュタルフ氏の攻撃哲学「ロック」と言うものが関わってきます。

 シュタルフ氏のいう「ロック」とは、「あえてマークされることで優位性を作ろうとする試み」のこと。
 例えば今J3で流行している3-3-2-2だと、両ウィングが守備時にWBの位置に落ちることで5バックを形成します。この時、YS横浜は3トップが最終ラインに張ることになるため、この5バックは前線の3人をチェックすることになります。この状態がロック。
 すると残りのFPは、相手が5人に対して横浜が7人。5バックが3人を見ている間にできた人数2人のチェックを受けていない選手の差で優位性を作られ、ボールをなかなか奪われないようになる、と言ったもの。

 そして攻撃時には下記のフォーメーションに切り替え、前線に厚みを持たせます。

YS横浜プレビュー2

 4バックの左にいた宮内が一気に前線に上がり、フィジカル豊富なンドカがIHへ。守備時にサイドにいるンドカが中央に行くことで、SBを引き付けたところに宮内がぐんと上がったり、もともとトップ下の神田をマークしている相手DFと2対1で対面することでかく乱させ、ミスマッチを起こさせます。

 この可変的なフォーメーションの変化を可能にしているのが、選手に与える「役割」という部分です。

3.選手に与えられる役割

 YS横浜では、ポジションを番号で管理しています。
 それだけ言うと分かりづらいのですが、要するに「役割」を与える際にイメージを共有しやすくするためにポジションに番号を振っています。例えば7番ならウィングのポジション、8番ならインサイドハーフ、等と言ったように。

 先程のンドカの例で行くと、守備の時は「左7」、攻撃の時は「左8」、といったような指示を試合前に送っておきます。
 ポジションを名称ではなく、番号で表現することにより、場所や役割を具体的に想像しやすくなり、言語化がしやすくなる。言語化することに、よりよい連携を可能とする、と言ったことが狙いのようです。

 詳しくは是非、皆さんもフットボール批評 issue33をお読みいただけると幸いです。全部をここで語ってしまっても仕方ない。全体的にフォーメーションについての特集となっており、非常に興味深い記事がシュタルフ監督のインタビュー以外にも山ほどありました。
(今回引用したインタビュー中には、シャトル、ワイパー、シーソー等、シュタルフイズムの解説に必要とはいえ、なんのこっちゃと思うワードが満載ですが、その説明を含めてシュタルフ監督の戦略を余すことなく赤裸々に記しています。ほんとにこんなこと書いちゃっていいのかよ、ってくらいに。非常に面白かったです。)

 詰まる所何が言いたいかと言えば、YS横浜は常に戦術を対戦相手に合わせてマイナーチェンジしていくことのできる、非常にいやらしいチームであるということです。

 その戦術がハマると長野相手にも複数得点ができるし、ハマらないとどうしてもうまく行かないこともある。シュタルフ監督も日々策略を巡らせています。次のテゲバ戦も容易に事が運ぶとは思えません。

4.対長野戦に見るキープレイヤー


 2-2で引き分けとなった対長野戦。攻撃面で1G1Aと非常に大きく貢献した選手をピックアップしましょう。

 神田夢実選手です。

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引用:ゲキサカ選手名鑑 https://web.gekisaka.jp/player/?25164-12392-jp

 戦術家シュタルフ監督の信頼を勝ち得て、今シーズンは12試合に出場。うち10試合でOHとして先発し、攻撃の核として出場を重ねています。

 札幌ユースに所属していた際は年代別代表にも選ばれるFWでした。ミドルレンジのシュートにスター性を感じさせる紛れもない「天才」。しかし出場機会に恵まれず、札幌、愛媛FCと二度の戦力外通告を経て今シーズンYS横浜に加入しました。

 個人的にはこの愛媛FC時代のミドルシュートが鮮明に記憶に残っています。出ると何か空気が変わる、ドリブル、パスはもとより、とりわけゴールに向かうまでの形にワクワクさせられる選手です。

 長野戦での得点ですが、右サイドから波状的に攻撃を仕掛ける中、DFのマークをしっかり振り切って押し込んでのゴール。この執着心が実際に結実しているわけですから、並大抵の気持ちでは止めることはできません。

 前節岐阜戦でも右IHとしてフル出場。ポストを叩く惜しいシュートを放っています。テゲバ戦でも出場が見込まれますので、是非覚えておいてください。

5.テゲバはどうする

 YS横浜は、積極的にディフェンスとの間に人数的なギャップを生み出し、攻撃機会へとつなごうとしています。ただ現状のテゲバのゾーン的なディフェンスを考えると、マンマークを求めてくるこの形に対して、結構相性がいいのでは?と希望的観測を持ってしまう部分もあります。

 ただしかし前回対戦では快勝したものの、5月とは状況が違います。フォーメーション、システム、メンバーを変えて宮崎戦に臨んで来ることは必至です。宮崎も戦い方を考えなければいけません。
 そうすると、相手の誘いに乗らず、前節八戸戦でしていたような千布を中心とした速いパス回しで、攻撃から守備へとフォーメーションを変えているギャップを狙った裏抜けやスペースへの走り込みを見込んでみてはどうでしょう。
 実際に横浜の失点パターンとしては、クロスから、ショートパスからの崩され方が全体の半分近くを占めており、やはりフォーメーションが変わる折のギャップを狙いに行くのが常道でしょう。
 そういう意味ですと、やはりキーになるのは前線へのパスを供給する千布、前田の両IH。この2人もレギュラーの座を確固たるものにしようとしています。この試合でも果たして役割を果たすことはできるでしょうか。

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画像引用元:https://www.tegevajaro.com/news/results/49907.html

(マジで千布、復帰してからずっといいんですよね…)

6.余談

 YS横浜は僕にとってちょっとした縁があるチームです。
 まずコルリが一人で太鼓を叩いている姿にあまりに自分が情けない気持ちになり、「俺もやるか!!」と、次の日にスネアドラムを購入したきっかけになったのが、5月のアウェーYS横浜戦でした。

 また、実際にYS横浜の応援団でスネアドラムを叩いている知り合いがいます。楽器を購入する際は本当に彼に色々と相談させてもらいました。
 彼は本当にYSの為なら全国どこへでも飛んでいくような人なので、かなり宮崎戦のことも楽しみにしていましたんですが、コロナのせいでアウェー席は用意されず…。
 どうか来年こそは、彼と一緒に宮崎で杯を交わしたいものです。

 また、僕が愛してやまないラーメン二郎亀戸店の店主さんもYS横浜を応援しています。やってやろうぜNow。

 YSCC横浜というクラブについては結構面白い取り組みを色々していて、プレビュー記事で書ききるには少し足りないんですよね。オフシーズンのレポートとして、各クラブの歴史を調べてnoteにしたためようかな。

 亀戸二郎のこと、思い出したらお腹すいてきちゃいました。現在午前4時、試合開始までもう12時間を切っています。

 なんでこんなぎりぎりになっちゃったかなあ。来週の岩手戦のプレビューは、木曜日までになんとか仕上げます。

 それでは今節も張り切ってテゲバの勝利のために応援しましょう!


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