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濁流、嵐の三納代~J3第16節 対AC長野パルセイロ戦レビュー~

 8月29日、住んでいるさいたま市は曇り空が広がり、自転車で外に出ても汗もあまりかかないような過ごしやすい日曜日でした。
 一方ユニスタのある宮崎県新富町は真夏日で快晴。絶好のサッカー日和でしたね。現地観戦の皆さん、熱中症、感染症に気を付けての観戦お疲れさまでした。

 この記事では2021年8月29日に行われたJ3第16節、テゲバジャーロ宮崎対AC長野パルセイロのレビューを行います。
 試合前に書いたプレビューについては上記の記事をご覧ください。

0.忙しい人はここだけ読んでください

 ・今節、負けはしたけど、意外とうまく後半戦もやれるんじゃないか?
 ・橋本が進化してる
 ・長野、つんよい。

 それでは、以下より本題です。

1.静と動~スターティングメンバー

○テゲバジャーロ宮崎

スライド1

 宮崎は約1か月半前の沼津戦から目立ったフォーメーション変更はなし。
 右膝内側側副靱帯損傷のケガから復帰した千布が右のボランチに。IHをしていた徳永が右サイドに戻り、渡邊龍がベンチスタート。
 また、ゴールキーパーは体調不良でお休みしていた植田が戻ってきました。前節粘り強いキーピングでゴールマウスを死守していた石井は、再びベンチに。今年の序列はずっと植田が上になっていますね。
 また、後半戦のスタートもトップに橋本がいました。戦いの中で成長していくタイプで、実戦を重ねるごとに安定感が増してきてます。前線にいないと不安になるくらいです。
 TMで2ゴールの三島はまさかのベンチ外。中断期間では、後半戦に備えた新しい作戦を立てるよりも、メンバーが流出せず、陣容が変わらない利点を生かす形で、前半戦J3相手にハマっていたパスサッカーの底上げを図った形でしょうか。

 ○AC長野パルセイロ

スライド2

 大事なことをプレビュー記事で書き忘れていました。長野は天皇杯以降、坪川と共に2列目を組んできた仕事人、藤山智史がブラウブリッツ秋田に移籍。直前のYS横浜戦までスタメンで出ていただけあり、この藤山の代役を立てるのがオリンピックブレイク中の喫緊の課題でした。
 今節はそのお試しだったのかもしれません。藤山のいた右CHにはアジリティ抱負の小柄なMF、山口和樹を起用。
 また、直前の大宮とのTMでゴールを決めた宮阪が満を持してスタメンに復帰。宮阪と同様途中交代でピッチに立つことの多かった、快足SB吉村もスタメンにを連ねます。
 STには前節スタメンだった榊でも、次にスタメン出場の多かった上米良でもなく、FC琉球から加入の新戦力、人見を起用。中心選手の流出を踏まえ、中断期間に試してきた「新しいパルセイロ」の試金石として、テゲバ戦を選んできました。

2.ほんの少しの糸のほつれ~前半戦

 終盤からパスをつなぎ、守備のギャップを狙いながら内外の出し入れを中心に鋭く前進してゆくサッカーを開始から見せる宮崎。青山徳永のホットラインは今日も生き生きとしていましたね。
 対する長野は宮崎にボールを持たせながらインテンシティ高く追い回し、ショートカウンターを狙ってチャンスを狙う攻勢。この辺りは第2節で戦った時とさして変わりはありませんでした。

 しかし前半16分、長野側のセンターサークル付近でボールを奪われ、中央から左サイドの森川へ展開。森川は一度内側にいた山口へボールを預けると、再び中央に切り込んでボールを受けなおします。
 宮崎は細かいパス回しからの崩しを警戒し、橋本と梅田を除く8人で中央を固める2列のブロックを作りました。1列目と2列目とではかなり距離ができ、その間にはぽっかりとスペースができていました。
 そのスペースに陣取り、フリーで受けた宮阪は、中央に残った森川、オーバーラップして右サイドを駆け上がる吉村へのパスを警戒し、ボランチのチェックが遅れた隙をついてミドルシュートを放ちます。
 これがそのまま素晴らしいコースへ決まり、ゴールイン。まさにこれが頭から宮阪を使う意味だと言わしめんばかりのスーパーゴールで長野が先制します。

 先制以降、ショートカウンター、あるいは得意のセットプレーを狙う形は変わらないものの、多少前へのプレスを減らし、パスコースを潰す形の守備に切り替えてきたパルセイロ。とにかく起点となるパスからことごとく潰され、とにかくテゲバとしてはやりにくい展開になってきました。
 プレビューで指摘していた左サイドを起点とした攻撃とは異なり、積極的にオーバーラップを仕掛けるRSB吉村に、司令塔宮阪はボールを渡します。29分にも吉村のクロスから三田の決定機。宮阪、吉村の存在によって、長野は攻撃の幅が広がっていました。
 宮崎はビハインドの中でなんとか千布のロングパスから梅田、橋本の裏抜けを狙おうとしますが、難なく対応されてしまいます。一つ、橋本の上手いヒールの落としから梅田がシュートを打つというシーンは作れたのですが、なかなか縦にポンと出すボールが通らない苦しい展開。
 長野は自陣側ではマンツーマンに近い形でディフェンス。宮崎は何とか頼れる男、藤岡を生かし、切り込ませる展開にしたいところですが、ぴったりと寄せられて間合いを作れず、なかなかうまくいかない。
 40分、中盤でボールを奪い、藤岡の上手いスルーパスに抜け出した橋本がペナルティエリア内からシュートを放つも、ブロックにあってしまいます。ここまでかっちり付かれてしまうとなかなかどうしようもない。長野のディフェンスを褒めるほかありませんでした。
 じりじりとチャンスの芽を摘まれていた宮崎ですが、45分、自陣フリーキックからの細かいパス交換から右サイド中盤でボールを受けた青山が思い切ったサイドチェンジ。左に張っていた大熊から少ないタッチでクロスが入り、ヘッドでマイナスに折り返した梅田から、飛び込んだのは藤岡
 しかしこれはわずかに枠の右に外れます。結果として、このシュートが宮崎の攻撃機会の中で一番可能性があったものとなってしまいました。
このあたりで迷わず真ん中に飛び込める藤岡はやはり流石だと思います。これが決まっていれば…と思ってしまう、たらればも言いたくなるような勢いづけるような素晴らしいシュートでした。

 このまま恙なく前半は終了。
 正味な話、点は取れそうな気は多少していたのですが、実際は真綿で首を締められているような、そんな徐々に苦しめられている前半でした。

3.中断期間で準備してきたもの~後半戦

 なるほど、そう来たか。
 前線から詰めてパスコースを積極的に潰してくる長野に対して、後半戦でテゲバは戦い方を変えてきます。
 シーズン前半戦では愚直に最終盤からのビルドアップを徹底していましたが、この試合の後半からは植田が最終ラインを上げてロングキックで前線へ放り込む形をとっていました。一つ戦術の変化が見られている部分です。

プレゼンテーション1

 それは偏に藤岡が1枚上がって3トップの形をとったことにより、裏抜けによる攻撃の可能性を増やす意図があったと思いますが、橋本が1列、2列下がってパスを受け、攻撃に奥行きをつける役割をしています。
 狙いとしては下がってきた橋本が後ろ向きにボールを受け、ワンタッチで千布、前田に戻して、橋本に引き出されたディフェンスの裏を狙って梅田、藤岡が走りこむ、と言った攻撃を組み立てようとしていたと思います。橋本の体格の良さを生かしたいわゆる偽9番に近い形の組み立て。
 橋本は時に最終列まで下りてくるレベルの激しいプレスバックを行い、チームの守備にも貢献していました。すごい責任感ですし、プレーすることに対して自信も確たるものになってきたのかなと思います。間違いなく橋本は、宮崎でレギュラーを確立しています。

 それに加えて守備面でもう一つ。最終盤が3バックと4バックを流動的に変化させています。クロッサーとして定評のある大熊を積極的にオーバーラップさせ、そこに3バックの時は代、4バックの時は前田がポジションをカバーする。EUROでイタリア代表が見せたようなフォーメーションチェンジを繰り返して、攻撃に変化を与えます。

・橋本の偽9番としての使い方

・3バックと4バックを流動的に変える最終ライン

 この2つがシーズンの後半戦を戦うにあたって用意し、まず見せてきた手の内かな、と思うところです。

後半21分で偽9番は一旦区切り。藤岡、橋本を下ろして渡邉、水永。26分には徳永、梅田に替えて三村、サミュエル。この辺りは前半戦の時に採用していた後半の攻撃オプションと変わらないかな、と思います。
 渡辺、三村にサイドから中へ切り込ませる、水永の高さを生かす、サミュエルに前から追い回させてショートカウンターを狙う、と言った形です。事実第2節、サミュエルの周りをよく見たランニングが大熊のクロス→梅田のヘディングシュートにつながっているわけですし、福島戦でゴールを決めた鋭い動きのできる三村、ヘディングの強い水永と、このオプションは個人的には結構後半に出てくると対応に苦慮しがちなのではと思っています。

 対する長野ですが、後半の頭に藤山の代役として出場していた山口を下げ、住吉をIN。同じポジションで今度は住吉の動きを確認します。
 また、13分に人見を下げて上米良をIN。人見と山口のテストは終わった、と言うことでしょうか。上米良がトップに立ち、今度は三田を下げて川田をIN。DF登録ですが三田のいたポジションで出場し、前線の運動量を下げないようにという意図かと思われます。

ただ一つ違うのは、上米良投入後、宮阪が1列上がってきて積極的に攻撃参加していたところです。両サイドに広がってパスの受け手になったり、上米良を右に置いて左側のトップに立ったりと。ボランチでのプレーが印象深いプレーヤーですが、あれだけ体格がいい選手ですから、前線で体をぶつけてゴリゴリ行く感じで来られると困りますね。

 その宮阪もDF山本とのディフェンシブな交代で退きます。ただ、この1点を守り切る意思表示のある交代かと思っていましたが、決してそうではありませんでした。

 後半42分、長野のキーパー田中からの右サイドへのパントキックに反応したのは左サイドにいた森川。前に人数をかけて攻撃していたテゲバの最終ラインの集中が切れた一瞬、裏を取ってコーナーフラッグ付近までボールを運びます。
 タッチラインを割ったと判断し、足を止めたチェッカーの千布とカバーの大熊を置き去りにし、エンドラインぎりぎりで森川はマイナスへ折り返し。ボールを受けた上米良はPAへ切り込み、テゲバGK植田を釣りだし、最後はボールウォッチャーになっていたテゲバのDF陣をあざ笑うかのように、駆け上がってきていた水谷がシュート、そのままゴールイン。

この失点は正直長野の粘り勝ちと言って差し支えないと思います。あれだけ前のめりでハードワークを強いられながらも、ことごとく強固なブロックに跳ね返され続けたことで、いよいよテゲバイレブンは窒息寸前となっていました。これだけやっているのになかなか結び付かない。前半のうちに巻き付けていた真綿はいつしか糸となり、糸は束となり、確実に息の根を止めに来ていました。

 その糸束を断ち切ることができず、結局0-2のまま悔しい敗戦となってしまいました。

4.まとめ

非常に苦しい試合だったと思います。見ていて辛かったです。

 後半こそチャンスは創出できたものの、やはりシュートまで至らなければ点が入りません。前目から有効的なパスを一つでも潰しにいく作戦をとり、思うような動きをさせずにテゲバを疲弊させた長野が、一枚上手だったということでしょう。

 ただもっと必要だと思っていた攻撃面での戦術の幅が、中断期間を経て広がっていたのは良い点だと思います。やはり内藤さん、倉石さんは戦術家ですね。試行錯誤を繰り返して、是非ともものにしてほしいところです。

5.余談

 あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー悔しーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 はい。ここで忘れます。次。次。この悔しさは八戸で晴らしましょう。

 今節の観客は589人。いやー、緊急事態宣言厳しすぎる。やっぱりコロナには早く撲滅してもらうしかない。もう今シーズンはどうしようもないとして、せめて来シーズンにはそういう気兼ねがないように観戦できるようになってればいいんだけどなあ。

 今の感じで行くと岩手もアウェー席は用意されるとは思えなくて、下手したらJヴィレッジの福島戦もご用意なさそうで。

 ただ用意されないなら用意されないでじっと我慢して、テゲバのことをもっと知ってもらうための努力をするばかりです。以上。

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