RTA in Japan Summer 2021にメジャー走者とブラステ解説で参加した話

タイトルの通り、RTA in Japan Summer 2021(以下RiJ)に、走者・解説として参加させていただきました。

個人的に、今回初めて参加した走者の方々の中には、プレー後に「RiJに参加したくてRTAを始めた」と語っていた人が多くいたのが印象的でした。今回のRiJは過去最高の視聴者数を記録したこともあり、今後はその流れがより加速する可能性もあるでしょう。

正直なところ、自分がプレーした「メジャーWii パーフェクトクローザー」はかなりキワモノ的なゲームだとは思います。そんなゲームで出場した人間が何を考えて、どう取り組んできたのかを、自分なりにまとめようと考えました。

結論から言えば「行動力」の一文に集約されるわけですが、その具体的な内容を文章として形にすることによって、少しでも後続の方のお役に立てればいいな、と思っております。

・そもそも、なんでメジャーのRTA始めたの?

自分は2019年冬のRiJを見てRTAの世界に興味を持ち、「何かRTAをやってみたい」と考え始めました。そうなれば、当然何のゲームを選ぶかが重要になってきます。

ただ、自分はゲームの腕に関してはそこまで自信がありません。では、ゲーマーとしての自分の優位点はどこにあるのか。そう考えた時に、「世間的に評価の低いゲームであっても、楽しんでプレーすることができる」という性質が、もしかすると明確な強みになるのではないかと思いました。

そこで、RTAをやってみたいタイトルとして真っ先に思い浮かんだのが、「メジャーWii パーフェクトクローザー」だったわけです。

元々このゲームは2010年に1000円程度で購入し、ストーリーの全難易度をクリアする程度にはプレーしていたのですが、当時から「このゲーム、言うほどつまらなくはないんじゃないか?」という感覚はありました。

それに加えて、このゲームのポジティブな要素を探してみたところ、存外に多くの良点が見えてきました。

・非常に知名度が高い
・第一印象から手を出す人が少なそう(プレーの希少価値・需要が高い)
・ホームランの打ち方さえつかめば、ゲーム自体の難易度は低い
・なんだかんだでちゃんとやり込みに応えてくれる
・色々な意味でやっていて楽しい(最重要)

もうこのゲームしかないな、と思いましたね。魅力的すぎる。

それもあって、最終的にはRiJに出ること以上に、「このゲームはみんなが思っているよりは面白い」ことを伝えたい気持ちが強くなっていきました。それを実現するために、昨年末からRTAの練習を行うのみならず、RTAイベントへの申し込みも積極的に行っていくようにしていきました。

・イベントへの参加遍歴

自分が初めて採用していただけたイベントは、昨年12月に開催された「第9回RTA BootCamp」でした。


当時はまだTwitchでの配信も行っていなかった時期であり、どこの馬の骨ともわからない自分が出られるとは思ってもみなかったのですが、「イベント参加が初めての人や新しいRTAを始めたばかりの人でも、訓練場として気軽に参加できる」というRTA BootCampのコンセプトに助けられた部分は大きいと考えています。

初体験となるイベントの舞台はやはり緊張度が段違いでしたが、開始から約25分間にわたって集中する必要性がほぼ生じないメジャーWiiというゲームの特性もあり、プレーもトークも想定よりも落ち着いてこなすことができた、という手応えもありました。そのおかげで、その後は物怖じせずにイベントへ応募できるようになっていきました。

また、明確なソースは見つけられませんでしたが、RTA BootCampでは「このイベントがきっかけでRiJに出場できました!という人が出てきたらいいですね」的なお話があったと記憶しています。

自分は異なるゲームで3回にわたって採用していただいたこともあり、RTA BootCampに育てていただいた、という思いは強いです。実際に、この初参加をきっかけにRiJを含めた様々なイベントに参加できた、という事実を通じて、少しでも運営の皆様への恩返しとなっていたらいいな、と思います。


また、今年2月に開催された「第2回不思議のダンジョンRTAフェス」に参加できたのも、自分にとっては大きな出来事でした。


自分は元々ローグライクというジャンルそのものが好きだったのですが、2019年のRiJの流れから第1回不思議のダンジョンRTAフェスも視聴し、「ローグライクにもRTA(TA)があるんだ、すごいな」と思い、次回は自分も出たいな…と考えて、不思議の幻想郷TODRのRTAに着手した経緯があります。

ふし幻TODRはRTA in Japan Online 2019でも採用されていたこともあり、「自分なんかが申し込んでいいのかな…」という不安もありましたが、体験版で遊べる区間に限定することで安定性を高めるとともに、このゲームに触ってくれる人を増やしたい!と考え、新規のカテゴリーで応募しました。

ちなみに、当時の自分は知らなかったのですが、体験版そのものがだいぶ前に公開停止しており、結果的には自分が作ったカテゴリーそのものが、ただ中途半端なだけのレギュレーションになってしまいました。かなしい。

そんな行き当たりばったりかつイベント経験も浅い人間を、年に1度の大イベントで採用してくださっただけでなく、リハーサル時にも優しい声や感想をかけてくださった運営の皆様には、心から感謝の気持ちでいっぱいです。

本番では早朝6時頃という時間帯にもかかわらず、3000人以上の視聴者の方が見に来てくださったこともあり、極度の緊張からかなりの早口になってしまいました。ですが、その状況で大事故を起こすことなくどうにか走りきれたという経験は、自分にとって非常に大きな自信となりました。

実際、その後のイベントには「あの時に比べれば大丈夫」という感覚で取り組むことができるようになり、良い意味であまり緊張せずにプレーできるようになったと感じています。ローグライクの世界では知らない者がいないレベルのトッププレイヤーばかりの中で自分もプレーできた、という点も個人的には嬉しかったですし、励みにもなりました。

また、主催のポンズさんのイベントに対する考え方そのものについても感銘を受ける部分が多く、RTAについての考え方を深めるという意味でも、非常に意義深い体験となりました。RTA BootCampと同様に、今の自分を形成してくれた恩義の深いイベントだと思っています。


もう一つ、「RTA WEEK」内の「漫画RTAフェスティバル」に出場させていただいたのも、素晴らしい経験となりました。


「採用決定前に原作に関する知識があるかどうかの確認をします」という記載があったので、自分の知識量で大丈夫かな…と不安はありましたが、原作についての話をしている最中で「これは大丈夫そうですね」と言っていただいたことがすごく嬉しかったですし、自分としても「この企画を成功させたいな」と強く感じました。

自分の場合、走者・解説のどちらであっても、台本は最初と最後の部分だけ作成し、プレー中で触れたいポイントやエピソードを頭の中で整理したうえで、状況に応じてアドリブで臨機応変に喋っていくスタンスを取っています。しかし、このイベントでは原作漫画について語ろう!というコンセプトもあり、最初から最後まで通して台本を作って読み上げる形を取りました。

また、ゲームではなく原作が主役ということに加え、マイナーリーグ編はチームメイトの印象が薄いということもあって、画面そのものを賑やかにして登場人物の名前を印象付けようとしました。今見ると画面めっちゃうるせえ。

ゲームの進行が早くなる中盤以降は喋りきれずにカットした部分もありましたが、それも含めて普段とは異なる進行方法でイベントに参加したということ自体が貴重な経験となり、自分としても思うがままに熱量をぶつけられて大満足でした。

こうした一つ一つのイベントが経験となり、イベントで走ることに対して「緊張する」というよりも「楽しみ」と感じられるようになったことが、今にして思えば一番ポジティブな要素だったかもしれないですね。

・RiJ出場決定までの流れ

きっかけは、この1つのツイートでした。

当時はバグありのカテゴリーで世界記録を持っていたこともあって、これは自分もぜひ参加したい!と思い、ソードフィッシュさんにDMでご連絡したところ、ほぼ面識のない立場だったにもかかわらず、快諾していただきました。

その段階では「もう一人参加者がいる」という話しか聞いていなかったので、「まだ自分の知らないメジャーの猛者が…?」と思っていたのですが、実際にDiscordで顔を合わせたところ、もう一人の走者は元々知り合いのセルランブルーさんでした。世界は狭い。

セルランブルーさんはSpeedrun.comにおけるパーフェクトクローザーの項目でモデレーターを務めている方で、自分がSRCに記録を登録する方法がわからない頃から、「代理で登録を行っておきます!」と言って、その都度記録を更新してくださっていた恩人です。

ちなみに、自分は簡素なHNを名乗っていることもあり、自分の活動初期にメジャーWiiのページに走者として記載されていたのは、同じ「SAS」という名前の別の人(RTAをやっている形跡はなし)でした。

自分がSRCに登録した際に「何かおかしいな」と感じ、別人である旨をセルランブルーさんに伝えたところ、登録者の差し替えを行っていただいただけでなく、記録申請の方法も含めて懇切丁寧にお教えいただきました。つくづく、感謝してもしきれないですね…


今回のRiJにはメジャーに加えてジーコサッカーとアンシャントロマンで申し込んでいたのですが、正直なところ、採用される可能性が最も高いのはこの並走だと考えていました。

ただ、RiJ出場は言うまでもなく狭き門。あからさまなイロモノ枠ということもあって期待しすぎるわけにもいかなかっただけに、採用を知った時は本当に信じられない心持ちでした。

採用された時の自分の反応を確認してみても、嬉しいという感情以上に、まともに実感が湧いてきていないのがわかります。もっと喜べ。


そして、先ほど「RiJを見てRTAの世界に興味を持った」と述べましたが、より具体的に書くと、街森借金返済王決定戦でソードフィッシュさんと松二さんが見せた大接戦(と、はるともさんの怪文書)を見て、「この世界、めっちゃ面白そうだなあ」と感じたのが直接的な要因でした。

いわばRTAの世界に踏み込むきっかけをくれたソードフィッシュさんと、かねてから恩のあったセルランブルーさん。このお二方とRiJの大舞台で並走できると思うと、本当に感慨深いものがありました。

・解説としての参加決定までの流れ

また、今年の夏前ごろからは、走者としてイベントに出場するだけでなく、Japanese Restreamの解説にも積極的に応募するようになりました。

元々喋り好きな性分なのに加え、Japanese RestreamではRTA未経験でも解説に応募できること、解説がいないよりは、いるほうが視聴者としても有益であるということが重なり、解説に応募するためのハードルはかなり低いと言えます。

自分の場合は解説前にそのRTAに関する下調べを行ったり、余裕があればRTAそのものを実際に走ってから解説に臨んではいますが、視聴者の方に自分が好きなゲームについての理解を深めてもらえて、かつ配信の役にも立てるという点で、やみつきになるような魅力があると感じています。

中でも、SGDQ2021で解説したマリオストーリー(時のオカリナ)は、とりわけ多くの反響をいただきました。色々な意味でぶっ飛んだカテゴリーに対する視聴者の理解の一助となれたかな、という思いもあり、個人的にも思い出深い出来事となりました。

それに加えて、Japanese Restreamでは面クリア型の悪魔城シリーズの解説をする機会も多くいただきました。ほとんどの回でご一緒したNakaさんの豊富な知識にも助けられ、自分としても毎回楽しみながら解説ができました。

そして、SGDQで悪魔城ゾーンの解説を担当した数日後。 Bloodstained: Curse of the Moon 2(以下CotM2)の走者の1人である墨酢さんから、悪魔城の解説に関するお褒めの言葉をもらうとともに、解説の依頼をいただきました。

墨酢さんの配信を普段から見ていたこともあり、CotM2が悪魔城シリーズの中でも自分が最も好きな「悪魔城伝説」を多分にリスペクトした作品であることは知っていました。「この作品、自分が絶対好きなやつだ」という確信は、実際にプレーする前からあったわけです。

何より、RiJの舞台で解説を務めるチャンスはそうあるものではありません。返事を迷う要素は一切ありませんでしたね。

・本番を迎えるまで

その後はメジャーの練習を定期的に行いつつ、解説の準備も進めていきました。メジャーは慣れさえすればそこまで難易度の高いゲームではないので、通常プレー等を通じて、CotM2に関する理解を深める余裕があったのは幸運でした。

CotM2は3人による並走で、走者ごとに使用するキャラが異なるため、3キャラごとに各走者の世界記録動画を確認しながら、難しい点や見栄えのするポイントについての勉強を重ねていきました。

その際、走者の皆様が各キャラの長所・短所やプレー中の見どころ、通るルートの差異といったデータをお教えくださったことによって、ポイントを把握するまでの時間が大幅に短縮できました。お忙しい中、スプレッドシートへの書き込みのような時間を要する作業を、嫌な顔一つせず行ってくださった走者の方々には、心から感謝の気持ちしかありませんね…


また、本番のちょうど1週間前に開催されるレイドRTAマラソンにスキップなしのレギュレーションで採用していただけた幸運もあり、そちらでも最終戦の見どころを紹介すれば、RiJの注目ポイントが伝わりやすいのでは?と考えました。本番では、間違いなく細かい解説を入れる余裕はないですし。


3日目のトップバッターということで責任は重大でしたが、自分のチャンネルを使うこともあってほぼ緊張はありませんでした。RiJではできないであろう、メジャーというゲームそのものに関する細かい解説も含めて、事前の想定通りに進めることができて安心した部分はあります。

本番1週間前にイベントを経験できたという点も精神的な面で大きかったですし、何よりメジャーというゲームの面白い部分を伝える、という自分の目的に即したイベントでもあったので非常にありがたかったです。倍率の高い中、イロモノ枠のこのゲームを採用していただけたスタッフの皆様には、ただただ感謝しかないですね…

・リハーサル

本番に先立ち、メジャーとCotM2でそれぞれ2回ずつリハーサルを行いました。

メジャーに関しては良くも悪くも気楽に考えていたのですが、最初のリハーサルでは、普段は滅多にホームランを打たれないギブソンJrに自分だけでも5回中3回ゲームオーバーにされたことに始まり、3人全員がフリーズとゲームオーバーなしで走り切れた回は1度もありませんでした


ただ、「大丈夫かなこれ…」と思っていたタイミングでソードフィッシュさんが発してくれた言葉が、自分が抱いていた不安を大きく和らげてくれました。

「このゲームは出した時点で勝ち。どう転んでも面白いから、あまり緊張しなくていいですよ」

そう。フリーズしなければ「無事終わってよかったね」となりますし、フリーズやゲームオーバーになったらそれはそれでおいしくはある。即ち、どんな結果になってもノーリスクハイリターンなわけです。

そこに気づかせてもらえた瞬間から、「Rijという大舞台に出る」ことに対してナーバスになる気持ちが一気に薄れていきました。「ミスしてもいいんだ」という心境で挑めるというのは、それだけ大きいということかもしれません。


CotM2に関しては、チャートが全く違う3キャラの状況を把握しながら解説するという行為は、予想通り非常に忙しかったです。しかし、思いのほか各キャラの動きに対応できたというか、「やれる」という手応えのようなものも感じていました。

自分は集中すればするほど早口になってしまいがちで、そこは普段からできる限り意識して抑えようとはしています(できてないけど)。ただ、息継ぎの心配もなく矢継ぎ早に喋れることは、忙しい解説が必要になるゲームではむしろ利点にもなり得ます。

そういった意味では、「このレースの解説は自分に向いている」という確信もありました。このあたりは、漫画RTAフェスティバルや、SGDQの天壌のテンペストの解説のように、多すぎる情報量を捌き切るために意図して早口のまま最後まで突っ走った回でも「聞き取れた」という反応をいただいていた、という経験にも基づいています。

何より、墨酢さんに「この忙しい解説を完璧にこなすのは人間には無理なので、完璧にやろうとしすぎずに、悪魔城の時みたいに楽しくやってください」と言われたのが大きかったですね。

解説の時にはそのゲームに対する愛情を持って、説明を通して理解を深めてもらうことで「このゲームって面白いんですよ!」という点を伝えることを、最大の目的として取り組んでいます。そういった意味でも、必要以上に普段のスタイルを崩す必要はないかな、と考えていました。

・本番(メジャー)

本番前日に神社に行ってお祈りすることは、前々から決めていました。単純に話の種にもなりますし、本番に向けてやれることは全部やっておきたい、という気持ちもあったからです。

で、本番前になんの気なしで投稿したツイートが予想外にバズってびびりました。

パーフェクトクローザーというタイトル、ひいてはRiJというイベント全体に対する注目度の高さを感じましたね。やるしかない。

ちなみに、このツイートにはWii3台体制のことしか書かれていませんが、実際は内部が焼けてディスクの取り出しが不能になる事態に備え、さらにドライバーセット一式を用意したうえで、スマホの画面にはWii解体の手順を表示させていました。相棒の黒Wiiくんのことを信じてはいましたが、備えあれば憂いなし、というやつです。

本番前の準備の一環として2回ほど最終調整を行ったところ、2回目でいつものように元気にフリーズを引いたので「こりゃ本番もやべえな…」となってました。甲子園の魔物、年末の魔物、本番の魔物が一堂に会するような魔境ですからね、このゲーム。

他の方に目を向けると、何故かソードフィッシュさんだけOBSがエラーを吐いていたようで、その間にロボボプラネットがいかにもラストっぽい雰囲気を醸し出していたのでこれはやばいのではと思っていたのですが、そこから出てきたラスボスが存外に硬かったので無事間に合いました。ほしゆめくんありがとう。


本番前から色々ありすぎるくらいありましたが、いざ本番に入ってからは、プレー、トーク共に十分に満足できるパフォーマンスが出せたかなと思います。

本番前の仕上がりとしてはセルランブルーさんが一番でしたし、前日のリハーサルではソードフィッシュさんが2戦2勝とこちらも仕上げていらっしゃったので、正直「自分は勝てないだろうな…」と思っていました。それだけに、4分台前半でほぼミスなく1位、という結果は望外そのものでした。


より細かい話をすると、ジャックが打ったセンターオーバーセンターゴロが本当にありがたかったですね。その次の打者(本来控え投手のシーバー)でホームランが打てたからこそ、ではありますが。

ジャックが打った球はホームランにできるコースであり、ミスショットという意味では良くありません。ですが、普通のヒットで走者が二人残ってしまい、次のシーバーもヒットで満塁になると、フリーズの危険性が一気に高まってしまいます。満塁から単打で1点入ってなおも満塁という状況でのフリーズは、非常に再現性が高いんですよね…

あそこで二塁走者が残っていようがいまいが、ホームランを打てば勝ち越せる状況でした。さらに、アウトカウントが1つ増えれば、撤収作業も1人ぶん短縮できます。ソードフィッシュさんが「デメリットばかりではない」と仰られたのは、そういった複数の理由が絡んでのことでもあります。

一つだけ心残りな点を挙げるとすれば、自分がクリアする前にソードフィッシュさんが起こしていた以下の現象を紹介できなかったことですね。

・二塁走者が三塁に盗塁
・打者が外野フライを打ち上げる
・三塁に到達したランナーが戻るどころか三塁からタッチアップ
・当然のようにホームイン
・何の問題もなく1点が入る

通常の野球であれば、盗塁の有無にかかわらず、フライを捕球した際には帰塁義務が生じます。しかし、このゲームの場合は、捕球する前に先の塁に到達すれば盗塁成功として扱われるため、ランナーは当たり前のように三塁走者面をしてホームに帰ってくるわけですね。

この現象は個人的にメジャーのトンデモルールの中でも屈指に好きなもので、かつ起こる可能性が非常に低いものだったので、奇跡的に本番で生まれたのにスポットライトを当てられなかったことが実に残念です。センターオーバーセンターゴロだけでも紹介できてよかった、というのはありますが…

とはいえ、5分を切れれば十分早いといえるレギュレーションで4分台前半を出せましたし、何より3人全員がフリーズすることなく終えられたのが本当によかったです。

相手に追加点を取られてさえいなければ、バント→バント→ホームランで理想的に3点取ることで塁上を掃除できるため、完璧にやればフリーズが起こる可能性はほぼありません。打ちやすい球が来るかどうかの運次第という側面は強いですが、実力が関わってくる部分でもあるだけに、本番でフリーズを引いた場合は、後々まで悔いが残ってしまう可能性もあるわけです。

先述した通り、フリーズしたらそれはそれでエンタメ性は高まったかもしれません。ただ、ともに切磋琢磨してきたいち走者としては、全員EST内に収まる形で終えられて、本当によかったなあと思っています。

・本番(CotM2)

メジャーを満足のいく形で終えられたことによる充足感はすごかったですが、自分の仕事はまだ終わっていません。むしろ、ゲームとしては決して難しくないメジャーに比べて、3人並走の解説のほうがより難易度が高いとも言えました。

走者の皆さんも本番直前に自己ベストを更新するなど全力で仕上げてきており、自分としてもその熱意に精一杯応えたい。しばらく休息を取ってからは3キャラぶんの自己ベスト動画をあらためて見直し、それぞれの見どころについての最終確認を行いました。

ついでに、ロバートが落ちたと思ったらボーナスエリアに入っていた、というシーンのために、SEKIRO(未プレイ)のロバートの父の叫びの声質についても再確認を行っていました。結局できなかったのが良かったのか悪かったのか…


そして、本番前に最後の打ち合わせを行った際に、「走者の皆さんに見どころの自己申告をしてもらう」という案が固まりました。

当然ながら、見ているだけの自分よりも、実際にプレーを繰り返している走者さんの方が、難所や見どころについての理解が深いわけです。リハーサルの時には自分が話している最中に割り込むことへの遠慮があったようですが、走者の方が見てほしい!と感じる見どころよりも、優先すべきことなどありません

実際に自己申告制を取ったことにより、自分の把握が追いついていない箇所の見どころも可能な限り紹介することができたので、間違いなく導入して正解でしたね。

また、リハーサル時は各キャラの特徴についてもゲームスタート後に自分が紹介する形を取っていましたが、スタートするごとに各キャラの紹介を挟みつつ、他のキャラの見どころも伝えていくのは非常にシビアでした。

そこで、走者の皆さまから「ゲーム開始前に各キャラクターの紹介をしてからスタートしたほうがいいのでは?」という提案をいただきました。

本来であれば、ゲーム開始前にあまり長い時間を取ってしまうのは好ましくないのですが、自分としてもリハーサル時に一番負担を感じていた部分ではありましたので、「各キャラの長所・特殊武器を実際に動かして紹介し、短所や細かい点は出走後に紹介」という形へと変更しました。

台本は最初と最後の部分に加えて協賛企業様の紹介文のみ書き起こし、あとは頭に入れた見どころや、差し込めそうなネタや小話を念頭に入れながら、アドリブで解説していく…という普段通りのスタイルを取りました。普段以上に台本読んでる余裕とかなさそうでしたし。

協賛企業様に関してのみ文章を用意したのは、入れられそうな箇所(他のキャラの見どころとかち合わず、画面にも絡めて紹介できる)を走者の皆さんと事前に打ち合わせしていたこともあり、これらの部分だけは、文章を読み上げている最中に他のことを喋る必要がなくなると踏んだためです。

ただ、本来はロバートの2面冒頭で入れる予定だった無敵時間さんの紹介がドミニクのスタートと重なり、本来差し込みを想定していなかった6面までずれ込んだ結果、ロバートの見どころと重なって無敵時間キャンセルが発生してしまいました。ごめんなさい。

それ以外の箇所に関しては、自己申告制によって見どころをスルーすることがほぼなくなったこともあり、大いに満足の行く解説ができたかなと思います。普段は自分の早口に対してネガティブな感覚を持ちがちなのですが、今回ほど自分の特性に対してありがたみを感じたことはなかったです。

自分一人では絶対に無理でしたし、本番前・本番中の双方における走者の皆さまのサポートあってのことなので、何から何まで感謝しかないですね…

ちなみに、最後のPSカードマンのくだりで自分がツッコミを入れるのは事前の打ち合わせ通りでした。余計な茶々を入れることなく、墨酢さんに全部任せて他の3人が見守る構図が一番素材の味を引き出せると感じたので、全員の想定通りに進んで良かったと思います。

ただ、「墨酢さん前見えてます?」という最後のツッコミは本来バネさんが行う予定だったのですが、本番後ということもあり失念されていたようなので、自分が急遽行いました。ちょうど画面が切り替わる直前かつ、ギリギリ視聴者に聞こえるタイミングで差し込めば、後に余計な間を生まずに最も良いオチになると思ったので、こちらも狙い通りになってよかったですね。

・RiJを終えて、今後について

あらためて振り返ってみても、夢のような時間だったな…と思います。6万人以上の視聴者の方々の前でパーフェクトクローザーをプレーできたのも、世界記録保持者3人の並走を解説するという非常に貴重な挑戦をさせていただいたのも、得難い経験という次元ではないですからね。

自分はどちらも出会いに恵まれ、お誘い頂いて参加した立場ですし、当然ながらすごい走者でも解説でもなんでもないですが、そんな自分でも物怖じせずに、行動力を持ってあれこれやっていったらRiJに出られたよ、ということが伝えられればと思い、この記事をしたためました。


最後にどうでもいい自分語りを挟んでしまい恐縮なのですが、自分は三半規管が非常に弱く、現行機種の3Dゲームを遊ぶことがほぼできません

昔のゲームを繰り返しプレーすること自体が、ゲーマーのメインストリームから外れている部分はあるかもしれませんが、自分のような人間にとっては、一つ一つのゲームの寿命を大きく伸ばすことができるという点でも、RTAという遊び方は天啓でした。

そういう意味でも、RTAという文化に対する個人的な感謝の念は非常に強いので、今後も自分なりに頑張っていきたいです。

短期的な目標は、メジャーのバグなしカテゴリーで世界記録を達成することです。それに加えて、個人的に思い入れが強く、ぜひまた参加したいと思っている「不思議のダンジョンRTAフェス」に向けた準備も、そろそろ始めていきたいと考えています。

昨年と同様であれば、応募の締め切りは来年1月中旬。ローグライクというジャンルの特性上、自信を持って提出できる状態まで仕上げるための余裕としては、そう長くはありません。

具体的には、それぞれ一般的なローグライクのセオリーとは異なる立ち回りを要求され、かつ元作品の知名度や人気も高い、「わくぷよダンジョン決定盤」「不思議の幻想郷-ロータスラビリンスR-」の練習を、それぞれ始めていきたいと考えています。

もちろん、冬のRiJに向けても色々準備していきたいところですし、東方剛欲異聞が既報通り8月末にリリースされたら、本格的に取り組んでいきたいと思っています。……リリースされたら、なんですけどね。マジでお願いします。ずっと待ってるんです。お願いします。


そんなこんなで、今後もユニークなゲーム・やりたいゲームをやりながら解説にも参加していくスタンスのまま頑張っていきたいなと思います。またイベントで皆様のお目にかかることがありましたら、その時はぜひ、よろしくお願い致します。

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