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日下秀之奨学金給付者紹介 ~そのままでいい~

日下秀之奨学金の採用者の方の応募書類と僕のお返事を公開していきます。写真はTeamlab:Borderlessで僕たちが産み落としたトカゲと蛙です。(僕が一番大好きなアート施設です。異世界に迷い込みたい時は是非)。

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こうめい君

あなたへ
初めまして、日下秀之です。

小中学校にほぼ行ってない僕には、10歳の時に習う漢字が分かりませんでした(笑)。難しい漢字はお母さんと一緒に読んでくださいな!

見た瞬間でした

あなたからの応募書類を見た瞬間、あまりの眩しさに目がくらみました。笑

好きなことに対するワクワク、楽しさ、熱意、そんなキラキラした眩しさ。写真を切り貼りしたり、お絵描きしてるときも楽しんで書いてくれたんじゃないかな。そんなことが伝わってきました。

人生で初めて似顔絵をもらいました。本当にありがとう。とっても嬉しいです。世のお父さんお母さん、お爺ちゃんお婆ちゃんの気持ちが少しわかった気がします。

この先あなたはどんな風に輝いてくんだろう? 1年間、できればその先も、あなたの成長を見てみたい!と感じました。是非、日下秀之奨学金の奨学生になって欲しいです。よろしくお願いします。

ドラムの本、スティック、ライブのチケット・・・多分、絶妙にちょうどいい金額だと思います。笑

自分の「大好き」を大切に、人生にワクワクするためにお金を使ってくれたらとっても嬉しいです!

僕の10歳のころ

少し僕の話をさせてくださいな。

僕は小1の6月25日から中3までの9年間不登校という筋金入りの不登校児でした。10歳のころは、伏見相談指導学級(以下フシミ)という札幌市立のフリースクールに通い始めた頃です。(※フリースクール:色々な事情で学校に行っていない人のために開かれた場所)

母に連れられ初めてフシミへ行った日、面談や勉強の時間があるでもなく、奥の広間で見たのは先生と生徒達が一緒になってトランプで遊んでいる光景でした。

僕(え?それでいいの?)

先生「ひーくん(僕のことです)は本が好きなんだね。書籍コーナーで好きなだけ小説や漫画を読んでもいいんだよ」

僕(???)

当時は学校に行きたくなかったり、けど学校にいけない自分が嫌いだったり、新しい環境に行くのが怖かったり、色々な感情でカチコチになっていた自分にとって、フシミで先生に「好きなようにしていいんだよ」と言われたことは鮮烈な体験でした(学校に行かなくなった理由は今では良く覚えていないのですが・・・笑)。

その後小学校卒業までフシミに通いましたが、覚えているのは同じくフシミに通う友達と、先生達とバドミントンをしたり、カードゲームをしたり、調理実習でご飯を作って皆で食べたり、遠足に行ったり・・・。

授業も一応ありましたが、正直ほぼ覚えていません。学校の授業に追いつこうというものではなく、身近な例を題材に、「学ぶことにはこんな楽しさがあるよ」というのを伝えてくれる内容だったはず。

幼稚園の頃から教室に行くのを嫌がり本を読んでいたくらい、人と関わることが苦手でした。が、フシミでは本を読むより友達と遊ぶことの方が圧倒的に多かった記憶があります。

むしろ仲のいい友達が来ていない時にしょうがなく漫画を読むくらいでした。友達と遊ぶということを思いきり楽しめたのは、フシミが人生で初めての経験でした。お世話になった先生達が僕より先に定年で卒業するとき、初めて人前で涙を流したのもフシミでの出来事でした。家以外で初めての「素の自分」でいられる場所でした。

今、自分が楽しく生きていられるのは、間違いなく、一切否定されることなく、素の自分でいられて、好きなことをしてもいいと思わせてくれる場をフシミで作ってもらえたからです。

そのままでいいんだよ

学校には行きたくなかったのに、フシミにはすんなり通えました。徒歩で行ける学校にいかず、電車でしかいけないフシミに通学していました。

フシミの先生達は、ただただ自分という存在を受け入れてくれて、「大丈夫、そのままでいいんだよ」というメッセージを送り続けてくれていたように思います。

「なんで学校に行きたくないの?」なんて一度も聞かれませんでした。学校に行ってもいいし、フシミに来てもいい。ただ、フシミに来るときは僕が居やすい雰囲気を作って待っててくれている。そんな素敵で偉大な先生方でした。

フシミの先生達が10歳の僕に送ってくれたように、僕は10歳のあなたに「大丈夫、そのままでいいんだよ」と伝えたい。

ドラムをたたく事と遊ぶ事が好きです。
あまり勉強は好きじゃないけれど、ドラムと、ぼちぼち勉強をやります

好きなことがあるのは凄く凄く素敵で、尊いことです。人は、好きなことをやってるとき、普段の何十倍の力を出せたりします。あなたが楽しくドラムを叩いている時、他の人から見ると、それは凄い努力だったりします。これからも思いっきり楽しんで!

今はあまり好きじゃない勉強は、ぼちぼちやっとく。ナイスな考えだと思います。好きなことを突き進んだら、色々なことが繋がって、好きじゃないと思っていたことが「あれ?面白いじゃん」となったりします。例えば「なんでドラムは鳴るんだろう?」は理科と算数、「何でドラムができたんだろう?」は社会(歴史)とかね。

小中9年間学校に行かなくても、大人になってお給料をもらえているので、勉強は割と後からでも大丈夫です。お兄さんが保証します。笑

長くなりましたが、「好きなこと」にまっすぐなあなたを、僕は応援したいです。1年間、よろしくお願いします!

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P.S. お母さんから「どうすれば勉強を好きになりますか」とご質問いただいたのですが・・・義務教育をほぼカットした男には学校の勉強が好きになる方法はわかりませんでした(笑)。むしろ逆方向のメッセージになりました。すみません。

僕の場合は予備校に通い出し、とてつもなく解りやすい解説で入試問題を理解する経験をさせてもらえたことが「わかるって楽しい!勉強楽しい!」となったきっかけでした(そこから急速に学力が上がりました)。好きを突き進めば、いつか必要になったら学びを楽しむタイミングは来る気がします。僕からすると、ドラムを楽しんでる方が勉強よりよっぽど凄いと思ったり・・・すみません。笑

P.P.S 伏見相談指導学級の先生達へ 
樋口先生、瀬戸先生、山口先生、山崎先生、畑山先生、三沢先生はじめ、 最後の1年お世話になりました先生方。
当時は本当にお世話になりました。しっかりした御礼も言えないまま、20年近く経ってしまいました。今の自分があるのは、間違いなく先生達が自分という一人の人間を見て接してくださったおかげです。あの場所が、自分にとっては第二の家でした。本当に、本当にありがとうございました。

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