地獄の門が待っている 新宿ルミネは自我博覧会 隣の地獄は青い とっさに代々木が出るとはね ウサギ小屋の味がする 手垢のついたセロハンテープ 義務教育で俺を殴ればいいさ(引用) 天井に覆われた商店街(アーケード)人類はきっと火星でも生きて行ける 午前2時に赤信号で止まる そうやって生きてきたはずなのに 真実を写せ貯金残高 正しさを一手に引き受けてなお有り余る 虹色の自尊心を掲げないと生きて行けないのか 復讐と殺意 こんばんは! 生き恥ですが 媚態を
光あれ、と神は言った。そのおかげで世界に光が満ちた。特にそんなこと一言も言ってないが闇も満ちた。闇が不人気だからセット売りなんだそうだ。 降って湧いた天啓に邪魔されて、箱崎圭太は手に持っているたらこパスタが1500ワットで何分なのか忘れた。箱崎はゴミ箱に手を突っ込んで、シールの表記を確かめた。 500w3分30秒、1500w1分10秒、で繋がる命、とまた降ってきた天啓に邪魔されながら箱崎は電子レンジの扉に手をかけた。1分のボタンを押す。光あれ。ピ、ヴン、と電子レンジが唸
沼津港深海水族館に人魚がやって来た! 冷凍個体が展示されているのは世界でもここだけ。深海の神秘を、その目で体感しよう。というのは、かつてはシーラカンスに付けられた宣伝文句だった。世紀の大発見のような謳い文句の割にはマグロのセリを思わせるがっかり展示でおなじみのシーラカンスはそのまま、特別展示として人魚がガラス張りの冷凍庫に招き入れられた。灰色でぶよぶよとした魚をだましだまし並べていた水族館は、上半身がぶよぶよとした人魚をありがたがって飾った。 ニホンニンギョのプレートには
かわい~い!(顔が) かわいい(顔と行動が) かわいい~(顔と仕草が) かわいい!?(かわいい……) 大学で出会ったかわいい女、なぜか私を好いてくれていてラッキーだなぁ……と思いながら暮らしている。 大学入学と同時にコロナで大学が休校になり、まるっきり登校できない時期が1年と少し続いた。 なので2年の春すぎに入学式が行われたのだが、地方出身で友人はおろか一人も知り合いがいなかった私はふてくされながら振替入学式に向かうことになる。 そこで見つけた黒髪ウルフカ
生活のすべてから逃げて「君たちはどう生きるか」を観てきた。一緒に見ようといっていた友人ごめんね。 当然のようにネタバレを含みます。 解説でも考察でもなく感想です。 金ローまで待たなかった まずジブリ関連の作品を映画館で見ることが初めてで、なんなら今回も「金ローでやるまでいいか」と胡坐をかいていた。 このツイート(ポスト)を見た瞬間に見に行こ! と立ち上がった。(私が勝手にファンをしている御方のツイート。何から何までセンス抜群で、最高のイラストを描かれる方。)
名前は祝福で呪いででも何一つ捨てなかったあなたが眩しい 繰り糸を引き千切り銃口を向ける強さにやられて眩暈がする 共鳴で割れたガラス 滴るのは悲鳴のような産声と歌 お前の歌が響いているからこんな地獄でも息をしている 昼下がり真夜中明け方朝夕に 「そんな感じで今日もふぁいとだ!」 「気づけばそこに遥かな轍」あなたの言葉で世界は足りる 酸素だけでは呼吸ができない僕ら 愛憎渦巻くインターネット賛歌 愛と平和と歌と夢と あなたはたぶん全てで出来てる 積極的エゴサーチで全
みんなたち、おはよ! 今日の配信はありません。最近休み気味でごめ みんなたちおっはよぉ 今日の配信はお休みさせてもらいま おはよぉみんな! といっても私は寝てないので夜の気分です。今日の配信は無 おはようございます! 今日配信はありませ おはよ! 今日ははいしんないです。あんま体調が万全じゃなさそう。てことで今から寝ます。お休みぃ 足元で唸るパソコンに素足を付けながら、美香はツイートボタンをクリックした。少したってから通知欄にアイコンがあらわれる。冷えた爪先を温
小学生低学年ぐらいまで、「全ての物体はどこからか糸が伸びている」ように”感じていた”。だから物の位置を直されると「糸が絡まる」と”感じて”すぐ元の位置に戻していた。食器が載るお盆の上は糸がぐちゃぐちゃに絡まり合っていて、その都度食器の位置を入れ替え、手で見えない糸をほどいていた。 不思議がられたり気味悪がられたり、人の気を悪くしてしまったりしたが、当時の私は抽象的な感覚を上手く説明できずに曖昧に笑っていた。なにより頭では「そんなわけない」とわかっていたため、人に説明しても
傘を差さずにスーパーへ行った。濡れた髪から雫が滴り落ちて、他のお客さんはぎょっとして私を見ていた。 傘になった気分だった。さっきまで外で差していた傘をビニールへ入れ忘れて、スーパーのつるつるした床に水たまりを作ってしまい、お客さんから非常識ねビニールが入口にあったでしょうという顔をされる。そういう傘になって、持ち主は一体どうしてビニールに私を入れなかったんだと思う。 カップ麺と冷凍食品数点を買って、傘がないのでそのまま外へ出た。すれ違う人たちはみんな傘を差していて、私の
だからユニットバスは嫌だったんだ。みのりは冷たいリノリウムの床が蛍光灯を反射する眩しさで目を細めた。中学校のときプールの授業で一番いやだったのは、更衣室のぬめる床に素足を付けなければいけない事だった。水はけの悪いつるつるとした床にこびりついた垢と洗剤と何かが、溝にまたってねばついている。生臭い。引っ越すときに家賃をケチったせいで、15歳の夏を思い出す羽目になっている。あのときと同じようにみのりは、つま先で浴室に立っている。今週の風呂掃除はあいちゃんだって決まってたはずでしょ
「むさしの学生小説コンクールの入賞作品をまとめた作品集が刊行されました」 入賞したので載りました。 どんな人間が書いた小説が載っているのか、少しだけ紹介するつもりでこの記事を書こうと思います。 コンクールの公式noteを見て、応募要項と共に「困難な状況の中で自由を奪われている若者が書いた原稿を募集します。」と書いてあるのが目に留まり、じゃあ応募しなきゃな、と思ったのが始まりでした。 このコンクールが発表されたのが大学二年の中頃で、ようやっと私たちは大学に通えるように
都会の空は四角い。高層ビルに切り取られた四角い空はどこまでも青く、高い。首が痛くなるほど高いビル群を見上げて、やっと空が見える。ぽっかりと空いた四角い穴から覗く空は間違いなく秋で、なのにそよいで来る風は人いきれで湿っていた。空を見上げると、ここは都会の中から不自然に切り取られた場所なのだと感じる。人波を押し合いへし合い何とか移動して、ひとまず開けた場所に出る。イベントが開催されるときの都立公園には、
溝に溜まった埃が空調の風で飛んでいく。 乾いた冷風がエアコンから絶えず吐き出され、部屋中に満ちている。白熱電球はわざとらしいくらい鮮やかな壁紙を照らしている。机の上に置いてある牛乳が満ちたグラスは、いつからそこにあるのかわからない。においと艶を失ったハンバーガーが目に入って、最後に食べ物を口にしたのはいつだっけ、と思った。ワンルームに築き上げた私の城は、清潔なまま崩壊を迎えていた。ベッドから起き上がれず、ピクリとも指先が動かない。怠惰が背中にのしかかっている。目と脳みそだ
そりゃお前の二重まぶたには何塗ったってかわいくなるだろうよ、という言葉を味噌汁でぐっと飲みこんで、正面に座る女に相槌を打った。彼女は、まぶたで偏光する粉に一万かけたことを笑いながら話していた。彼女の顔は、間違いなく可愛かった。 可愛い女が嫌いだ。かわいくて美しくて細い女は、みな一様に”それ以外”の人間を下に見ている。自分のことを可愛いだなんて、可愛くてみんなより上だなんて一ミリも思っていませんよという顔をしてほくそ笑んでいる。 そういう女が私のような女に声をかけてくる
このテキストが彼のパソコンから見つかったのは、彼の学生証が大学の事務局に届けられて一か月がたった頃でした。 雨の日の授業は良い。”気圧が低いから”という理由で声のデカイ女たちが軒並みサボるから。講義室の空気がいつもより軽い。授業が始まるまでの時間をトイレで潰さなくて済むし、講義室で息を殺して授業を聞かなくて済む。声のデカイ女は軒並み後ろの席へ陣取るので、会話も丸聞こえで聞きたくない会話までよく聞こえる。 ふと窓の外を見る。雨粒が打ち付けている窓ガラスに、自分の姿が映