国際機関初めの一歩、仕事内容にこだわる?それともとにかく入ってみる?

こんにちは、理事の畠山です。何かJPOについて書き忘れている点は無いですか?と聞かれました。そこで、「国連JPOへ向けた虎の巻」を見返してみたのですが、自分で言うのもなんですが、高校生から大学院生、若手の社会人にまで参考になる内容になっているので、特に書き忘れている点はないなと思いました。また、イトウネシアさんの「JPO合格者が語る!JPO2020受験談」を読んでも、最近のJPO受験談が書かれていて、私の古い知識が完璧な形で補われていて…、あ、書き忘れていた事に気が付きました。

それは、JPOもそうだし、JPOへのステップとしてUNVやコンサルタントとして国際機関で仕事をする時に特に当てはまるのですが、仕事(TOR)の内容は自分のやりたい事や専門性とマッチしたものを追求すべきか、それとも国際機関に入れるなら多少カスっている程度でも良いのか?というものです。

もちろん、私ぐらいの国際機関での経験が10年あって、博士号も取得見込みだというレベルのキャリアになってくると、持っている経験や専門性から大外れしたポストに応募しても、面接にすら呼ばれません(この点、後述します)。しかし、実はJPOぐらいだと思いのほか経験や専門性と完全にはマッチしていない仕事がオファーされたりします。実際に、JPOの受験相談に乗った人が合格後に、オファーされたポストがこれなんですが、どうでしょうか…?と悩みをシェアしてくれたことは何度もあります。

(TwitterのDMでも、メールでも、遠慮なく相談してもらって全然大丈夫ですが、件の「虎の巻」だけ読んでおいてもらえると、話がスムーズにいって、お互いの時間の節約になるのでありがたいです)

また、JPOよりもジュニアなコンサル仕事やUNVだと、そもそも経験が無いので、予想外の仕事でもポストに通ったりします。実は私も、世界銀行にコンサルタントとして入った時は、国際教育協力色が結構薄くて相当に予想外な仕事でした。

ではこのJPOやUNV、ジュニアコンサルとして国際機関で仕事をする場合、仕事内容には拘った方が良いのか?それとも、やりたい事や専門性に多少なりともかすっていれば何はともあれ受けてしまって良いのでしょうか?実はこれ、意外とケースバイケースなんです。そこで今回は、この点についてお話してみようと思います。

1. 予想外の仕事で国際機関に足を踏み入れた畠山のその後

なぜジュニアレベルで仕事内容にこだわるべきか、そうでもないのかがケースバイケースになるのか解説する前に、私の体験をお話したいと思います。なぜなら、私の通ってきた道が、拘るべき・そうでもない、の両方を偶然にもカバーしてしまったからです。

私は、修士課程の2年目の時に、世界銀行のDevelopment Economics Groupという部署のデータ課で短期コンサルタントとして仕事を始めました。教育データも取り扱っていますし、実際に教育データのクオリティチェックもユネスコと一緒になってやっていたので教育の仕事と言えば仕事ですが、扱うデータは教育以外にもヘルス・労働・人口・ジェンダー・貧困・社会保障と、人間開発に関するものは全て扱ったので、教育の仕事の比重はかなり小さいものでした。私は当時の国際教育協力ではまだ珍しい、学部が非教員養成系の教育学部出身だったぐらいなので、もっと教育に寄った仕事がしたいなーと思いながら仕事をしていました。

ではなぜそのような仕事を受けたのか?というのは本題から外れるので簡潔にまとめますが、①学部時代に、「世銀に行ってからユニセフに行くと良いよ、というわけで神戸大学に行くと良いんじゃない?」、と助言を受けて指導教官を選んだ事を指導教官も知っている、②世銀に行くよりネパールで大学の先生になりたくなった、③心配した指導教官が見聞を広めさせるためにDCに送り出そうとしてくれた、④当時ネパールで調査中&食中毒で40度の高熱でマジで死にかかっていて、よく分からない間に話が進んだ、といった感じです。

神戸大の博士課程を退学しているので、この事から当時の指導教官を恨んでいるのではと勘繰る人もいるかもしれませんが、私が退学した理由は指導教官では無く別の先生ですし、当時の指導教官には今でも気にかけてもらっていて、感謝こそあれ恨みなど一切ないので、ご注意ください。

話を戻すと、私の最初の仕事は人間開発のデータで、教育の比重が極めて低い物だったというのがポイントで、ここからすると、仕事内容にこだわらず、やりたい事とかすってさえいればとにかく国際機関に入ってしまった方が良い感じがしますね。なのですが、これはYes and Noです。

まず、Yesの理由ですが、「人間開発」と「データ」というキーワードがどちらも幅広いのと、当時私はまだ23歳だったので、なんとでも仕事の幅を広げられたからです。

私の日本でのお仕事というと、「女子教育が世界を救う」や「Slownews」での連載のように、女子教育やジェンダーの仕事が目立っているのかなと思います。これは、25歳の時に短期コンサルからJunior Professional Associateになった時に、上司に言われてそれまでの仕事に加えてPoverty Reduction and Economic Managementという部署のジェンダー課での仕事を掛け持ちするようになり、その後27歳の時にJPOで赴任したユニセフ・ジンバブエ事務所でもジェンダー・フォーカルパーソンになった事に由来しています。そして、そもそも論として、教育の仕事の比重が低かったのが、JPO赴任を契機に教育が100%という所に戻ってこれました。これは、「人間開発」と「データ」の間口が広かったからこそ成し得たことです。

次にNoの方です。では現在、36歳で博士課程の最終学年になったいい歳したおっちゃんの就活がどんな具合かというと、面接に呼ばれるポストは明確に次の3つの職種に限られています、今の所。

①途上国政府の教育統計のキャパビル

②因果推論やMixed-methodsを用いた研究やインパクト評価

③教育と障害

せっかくバツ二の子無しになったので、non-family duty stationの緊急支援に色々応募していますが、こちらは箸にも棒にも掛からない状況です。つまり、23歳の時にデータの仕事を選んだ結果、36歳の今になっても統計のキャパビル系の仕事で評価が高く、「緊急支援」・「女子教育(私の経歴ぐらいだと、日本で記事や本を書くには十分であっても、女子教育関連で博士号を持ち・そこで経験を積んだ人と、国際機関の仕事では競る事すらできていない、まあ納得はいってないですが)」といった方向に足を延ばすことが出来なくなっています。

結局、私の経験からすると、経験が雪だるま式に積み重なっていくので、そこから大きく外れた仕事がしづらくなるので最初の仕事の内容はある程度拘った方が良いとも言えますし、中に入ってしまえばにょろっと近接領域に足を延ばしたり、博士号取得で大きく転換出来たりもするので、そんなに拘らなくても良いとも言えます。これを私の経験から離れて、もう少し抽象化してまとめてみましょう。

(その前に一つ注意点として触れたい点があります。それは、環境の変化です。①昔はそもそも国連職員の学歴が低かった、②なぜならそれは今よりもポストが豊富な一方、応募者が少なかったから、③今は国際スタッフのポストがローカルにどんどん転換されて(これ自体はとても良い事)、国際教育協力の予算が右肩上がりなんて状況でもなくなった上に、MDGsやSDGsで国際協力自体の認知度は上がり世界的に国際協力を仕事として考える人が増えた、という現状があります。このため、私より一世代上の国連職員を見ると資質に疑問符がつく人を結構見かけますが、私よりも若い世代では、こういう状況を反映してか、学習意欲が高くバケモノの様に優秀な人が多いです。環境って簡単に変わるので、その点は割り引いて話を追ってもらえるとありがたいです)

2. 国際機関での最初の仕事の内容にこだわった方が良いケース

というわけで、まず仕事の内容にこだわった方が良いケースから考えてみようと思います。

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