米国博士課程2年目のモヤモヤのその後

アメリカはピッツバーグからこんにちは。9月に入り博士課程の3年目がスタートしました。1,2年次にはコースワークと研究の両輪で苦しめの生活でしたが、3年目は1年間で最低2コマ履修すればよく、比較的、研究を進められそうな時期に入りました。前回の記事では思い切って博士課程2年目のモヤモヤを吐露しましたが、そのモヤモヤにどう決着をつけたのか、そのメンタル面での変化とその後自分が取った具体的な行動を書いておきたいと思います。

メンタリティ:分野の縮小を嘆いていても仕方ない
ある程度腹をくくる決意をしました。比較教育学分野の衰退をずっと嘆いていても埒が明かないので、比較教育学における研究は持ちつつも、他の分野でも専門性を築いていこうと割り切るようにしました。研究者たるもの一つの確固とした分野とその中での軸を持つべしだと考えられる先生からは、私の選択は研究の軸がブレブレで再考すべし、と言われてしまうかもしれません。しかしこれまで実務・研究で培ってきた比較教育学の軸を持ちつつも別の研究の軸を持っていくことが、中期的に研究者として生き残っていけるだけではなく、長期的に比較教育学の研究も豊かにしていけると考えました。

アクション1:全方位的に奨学金を探した
フルファンドの奨学金が2年間で切れることが分かっていたので、2年次の冬学期に可能性のある奨学金を手当たり次第探しました。年間40000ドルを越える学費+円安パンチ+国際比較教育不遇の状況では、お金の問題はトッププライオリティだったのでハードなコースワークの中でも必死になって探しました。Pittの先生、友人、職員に手当たり次第聞いたいった結果、支援内容が充実している奨学金を2つリストアップしました。Student Governmentのメンバーになって学費を支援してもらうという手もありましたが、これは研究に支障が出そうなので断念。結果、2つの奨学金のうち1つから内定をいただきました。ただ、この奨学金は学費の半分程度の支援かつ併給不可という内容でした。3年次はどうなるのだろうかとテスト期間に憂鬱を持ち込みそうになっていたところ、当時受講していた授業の先生が、ファンドの目途が立ったから支援してあげると言ってくれました。最前列に座り積極的に授業参加していたのが、功を奏しました。アメリカではプロアクティブに動いていれば誰かが助けてくれると良く聞きますが、今回は本当に全方位的に奨学金を探してよかったです。自分からアプローチしていなかったら、チャンスは生まれませんでした。資金が潤沢な学部や大学と比べてしまうと、苦労は多いですが、あきらめずに挑戦して本当によかったです。奨学金応募の際に研究計画を見直せるなど、副次的な効果も感じられるので、チャンスがあればチャレンジし続ける大事さを改めて実感しています。

アクション2:新分野での共同研究の開始
ファンドを用意してくれた先生の下で、彼女のプロジェクトのお手伝いをするのかと思っていたのですが、全く別でした。彼女は教育分野における因果媒介/調整分析(Causal mediation/moderation analysis)の新進気鋭の研究者なのですが、私がこの手法を使って、1st authorの論文を書くために一緒に共同研究を進めようと言ってくださいました。因果関係の直接効果と間接効果の分解にはとても興味があったので、またとない機会となりました。また教育的な素晴らしい先生に巡り合えて幸せでした。夏休み期間は研究手法の勉強とアメリカ国内のSchool engagementとgrowth mindsetの分野の先行研究を進めました。新しい分野への挑戦ですが、3年目はこの研究が形になっていくのが楽しみです。

アクション3(構想段階):2次データ加工「and」1次データ収集
2次データ加工or1次データ収集を「and」で考えようという点も実行に移したいと思っています。上述のファンドをいただく研究プロジェクトは既に2次データがあるので、上手く加工していこうと思っているのですが、別の研究プロジェクトではメリットデメリットを精査した上で、ピッツバーグ市の公立学校, Amazon mechanical turk, or Pittの実験経済学のラボ実験のどれかで1次データを取れるか構想を練っていきたいと思っています。今学期はお隣のカーネギーメロン大で行動経済学の授業を取っているので、ピッツバーグお得意のラボ実験についても理解を深めたいです。


まとめ
博士課程2年目のモヤモヤを書いたときには、博士課程終了に暗雲が立ち込めている感があったのですが、なんとか立ち上がって3年次を迎えられました。今振り返るとモヤモヤ状態は大変でしたが、モヤモヤがあったがゆえに色々と割り切れ、かつ方向性が見いだせたのかなと思います。残りの博士課程の中でも、もやることがあると思いますが、その時々に自分と向き合い、家族と相談し、適度な休息を取って研究を進めていきたいです。ちょうどこの記事を書いているときに博士課程を取った友人からいただいた「初心を忘れずに頑張れ」という言葉が目に入りました。博士課程進学時の研究計画に固執すべしではなく、博士課程進学時に持っていた研究や教育現場への熱意を忘れるなと解釈しました。博士課程進学時に持っていた志は捨てることなく毎日を過ごしていこうと思います。

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