動物園に行った日
しばらく前に、お母さんと動物園に行った。
入り口の象さん。
パンダの募金箱。
10数年ぶりに行ったけど、あまり変わっていなかった動物園。
あまり変わりのない親子2人。
なんだか色んなことが変わったはずなのに、なにも変わっていないみたいな時間が流れていた。
日々、刻々と形を変えてく世界の中で、変わらないままでいること。
別に立派なことじゃないけれど、その時だけはこの時間を抱き締めていたい気持ちだった。
その日の動物園は比較的空いていて、誰もいない道でお母さんは私の知らない歌を歌って歩いていた。
コアラ館の中へ入ったら人がたくさん居て、皆が立派なカメラを構えていた。
私たちはその中でスマホを手に「全然上手く撮れないね」と言いながら、本当に上手く撮れていない写真を撮っていた。
コアラ館から外に出ると、私のスマホにバイト先から突然電話がかかってきた。
私は「自分が何かやらかしたんじゃないか」とドキドキしながら電話に出ると、
「来月から契約社員になりませんか?」と所長に聞かれて、
「あ、はい」と返事をした。
そうして、コアラ館の脇で突然契約が決まり、私は契約社員になった。
職場でお昼休みになる度に、せっせとお母さんにLINEを送っているような私でも、会社員になれてしまった。
お給料は上がるけど、お休みは減ってしまう。
お母さんと遊べる日が少ない。
不意に現れたこれからの不安事に私が頭を持っていかれそうになっていると、お母さんが「ライオンバスに乗りたい」と言った。
ライオンとこんなに至近距離まで近付いたら、考え事など、ぴょんと遠くに飛ばされてしまって、私はとっても楽しんでいた。
ライオンバスを降りると、もういい時間だったので「帰ろうか」と私が言うと
「昆虫館は?」とお母さんが言って、「でももう時間だね」としょんぼりしている。
また絶対来ようねと約束をして、私達はお家に帰った。
忙しくなったって、私は絶対にお母さんと遊ぶんだぞう〜!
最後に、最近職場の敷地内で空を見上げながら思ったこと。
私は、空を見上げると心を見つめている感覚になる時がある。
その日の空はいつもと変わらず、
それでも一層美しく思えて、
私はその時、自分の心が透き通っているのが分かった。
「私、はだかんぼうの心でいたい」
ふと誰にも聞こえない声で呟いた。
この空の美しさが分からなくなったら嫌だから。
心に何も着せずにむき出しのまま、触れたものの冷たさも温かさも直に感じて、
ちゃんと傷付いていたい。
それを守りきれたらいいな。
私はそんなことを思いながら日々を重ねています。
あなたはどうかな。
ここまで読んでくれてありがとう。
ほんとに、ありがとう。
それでは、またね。
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