カメラテストに通過した日


 カメラテスト進出者発表の日の気持ちをちゃんと形にしないと前に進めなかったから書いたけど、たぶんとても読みづらいし、あと長いです。先に謝っておきます。ごめんなさい。

7/22(水)

 今日は朝からバイトだった。私の勤務はいつも18時までで、ミスiDの結果も18時に発表だった。

 今日は仕事の量が多い日で、残業をすることになった。仕事場では「ただいま18時となりました」というアナウンスがいつも通りに流れて、私は素知らぬ顔で手を動かし続けていたけれど、頭の中ではずっとミスiDのことをぐるぐる考えていた。「もう公開されたのかな…」18時半まで仕事を頑張ってから、私はタイムカードをきった。

 更衣室でミスiDのTwitterアカウントを開くと、19時公開に変更になっていた。私は息をついて、とにかく家へと歩いた。
 家に帰る途中で19時になった。心が変になりながら、いつも通りの道を歩いた。

 家に着くと、私は玄関に腰を下ろして、またミスiDのTwitterアカウントを開いた。もう結果が公開されていた。ページを開いて、サ行を押した。私は、頭文字が「そ」だから、ゆっくりゆっくり下へスクロールした。「曽木さこ」という私の名前があった。

 自分の名前を確認した後に、私の好きな人たちの名前を探した。いる人も、いた。いない人も、いた。当たり前なのかもしれないけれど、いない人の方が多かった。

 確認が終わると私はリビングに行った。お母さんが私に笑顔を向けておかえりと言ってくれた。私は、「ああ笑わなきゃ」って思ってからお母さんに笑顔を返した。そこで自分が笑えていなかったことに気づいた。

 Twitterを開くと、ぽつぽつとみんながつぶやいていた。通った人、通らなかった人。私は、好きな人たちのツイートをチェックしにいった。通過しましたと報告する人、通過できなかったと報告してこれからのことをお知らせする人、通過した人の応援をしていくと決めた人、復活戦を頑張ると決めた人、ツイートはせずに過ごす人、アカウントを消してしまった人、いろんな人がいた。

 私は言葉を送りたかった。みんな一人一人が素敵なこと知っているから、頑張っているところを見ていたから、言葉を送りたかった。通った人にはおめでとうを伝えたいし、通らなかった人には、きっと今、心に、通らなかったという事実が冷たく横たわっているはずだから、気休めでも何でもいいから、少しでも温まるような言葉を送りたかった。
 でも、できなかった。私はその子が行きたくても行けなかった道へ行こうとしている人だから。もちろん、私の結果とその子の結果が全然関係のないことは分かっている。でも、その子にとって、通れないという結果が出た今日という日には、私がどんな言葉を選んでも、通った人からの言葉は、きっと少しのとげをもって届いてしまう。それなら私は何も言わない、いいねを押すことも今日はしない。今日、私からはあの子に触れない。そう決めた。考えすぎかもしれなくても、間違ってるかもしれなくてもそう決めた。

 私は自分の結果を報告しなきゃと思ったけれど、みんながそれぞれの思いを吐露するタイムラインに自分が通過したという報告をどういう言葉ですればいいのか分からなくなって、何にも言葉が出てこなくて、「後日改めて報告します」とだけつぶやいてTwitterを閉じた。


 それからお布団にくるまって、自分の気持ちと向き合った。

 あの子にもあの子にも寄り添いに行きたい、言葉を送りたい、なのにできない。通った私の言葉は今夜あの子たちにはどうやっても優しく届かない。優しくなりたくて頑張ってるのに。今日の私はあの子たちに寄り添うことが叶わない。

 優しくなりたくてミスiDを受けているのに、今、好きな人たちに寄り添いに行かれないのなら、私はどうしてここにいるの?

 私のこの気持ちは、同情という二文字で片付けられてしまうものなのかな。

 私のこの涙は誰も温められない。私が、通らなかった人たちのことを想ったってどうしようもないし、私が泣く必要なんてない、自分が通ったこと普通に嬉しいって言っていいし、おめでとうって言われたらありがとうって言えばいい、とにかくこの先を頑張っていくしかないんだ。全部、頭ではちゃんと分かっているけれど、今この時に好きな人たちに寄り添ってあげることが自分にはできないのだという事実がどうしようもなく私の真ん中にあって、苦しかった。

 寄り添いたいという気持ちが自分の中だけで行き場を失くしてさまよっている。それが耐えられなくて泣いている。
 今日だけはどうしようもないこの涙を許してほしい。こんな涙で濡れてしまったお布団は明日になったら洗濯をしてきっとお日様が乾かしてくれるから。

 そんなことをぐるぐる考えて、ずっとうじうじしていた。


 それから、しばらくしてまたTwitterを開くと私の「後日報告します」と言ったツイートにその好きな人たちがいいねをくれたり、他のツイートに通過おめでとうとリプをくれたりしていた。きっとその人たちの頭の隅に私がいて、サイトで私の名前を探してみてくれたのかなって思って、それが素直に嬉しかった。通ったくせにこんなにうじうじしてしまっている私のこと、見ていてくれてるんだって嬉しかった。
 みんなが私にくれたいいねやリプがなんだかどうしようもない私の涙ごと包んでくれているような気が勝手にして、みんなのことが眩しくみえた。絶対、通らなかったショックがあったはずなのに、それでもこの人たちは明日を生きていこうとしているし、私のことも見てくれている。それなのに、私がこんなにうじうじしているわけにはいかない。だから私はちゃんと前を向いて頑張ろうと思えた。

 今日という日にその子たちに寄り添うことは叶わなかったけど、私は色んな人に寄り添っていく力を身に着けるためにミスiDを受けているのだから、今よりもっともっと力をつけた先で今度こそ寄り添えることを勝手に願って頑張っていく。

 ミスiDなんて関係なく一人一人のことが好きだから。こんな知り合ったばかりの今では、この好きって気持ちは信じてもらえないかもだから、それを裏付けるくらいの十分の時間を経てからきっと伝えたい。だから、みんなずっと見つめていられるところにできたらいてほしいと思っている。私のわがままだけれど。もっともっとみんなのことを知れた先で、今より厚みの増したメッセージを送らせてほしい。

 私はこれからカメラテストに向けて自分のことだけをとても頑張る。通れなかった人の分も私が頑張るなんてことは不可能だから。あの子の分は、あの子があの子だけのやり方であの子自身が頑張る為だけの分だから、その分を私がやるなんてことはできない。だから、私はただ私の分だけを頑張るのだ。

 その人の分も頑張ることはできないけれど、その人からもらった言葉を抱きしめていくことは、許されるかな。これは私のお守りだから。私にくれたものだから、持っていくくらいはいいかな。

 見つめてくれたみんながくれた言葉、抱きしめて持っていくから、私はきっとすごく頑張れる。絶対頑張りきらなきゃいけないのだ。

 まずはこんなぐだぐだな文章をもう一生書かなくてすむように勉強しないといけないけど。おわり。寝よう。

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