見出し画像

雨の日にシトシトと。

今日は日曜日。雨。
そんな日は、ネットで買ったデスクチェアーを組み立てよう。
昨日届いた梱包の封を切る。
でもこういうの、苦手なんだよね。組み立てるの。

昔から組み立てるのは苦手だ。
上手く組み立てられない。
だから好きじゃない。
完成されたものでお願いします。
ついそう思ってしまいます。
でも今日は組み立てます。雨だから。
きっかけなんてそんなもん。
些細なもん。

そんな中、会社から電話が鳴る。

「あの、話をしまして、書いてもらいました!」
「おぉ、よかったね。ありがとう。助かったよ。」

たった一人の部下から完了報告が来る。

たまにしか来ないバイト君に書いてもらいたい書類を
土曜日に頼んでいたのだ。

フツー、こんなやり取り、当たり前すぎて、何も感じない出来事なんだけど、これが当たり前じゃないんだよね。数年前なら。

部下ができたのは3年前。
たった一人の初めての部下ができた。
たった一人だったけれど、上司になったわけである。
たった一人だったけど。

もうどうしようもなく忙しくて、死にそうで、もうやめたくて、
いろんなこと全部投げ出したくて、そんな頃にやってきた部下。

「もう無理です。一人では。はっきり言って限界です。」
「誰でもいいので増やしてください。」

そう当時の上司に言って、やってきたのが今の部下なのだ。

でもこの部下がなかなかで、頭はいいのだけれど、
会話がうまくできない。
うまくできないからこっちもうまくできない。

まず会話のテンポが合わない。
こっちがしゃべりだすと同時にしゃべりだす。
こっちが黙ると黙る。
会話にならん。
道を譲りあって、お互いにフェイント入れて、
あっ、すみません。いや、あっ、すみません。ってやっている人みたいになってるじゃないか!
しゃべりだしたらしゃべりだしたで、
「あっ、あっ、あっ、、、あの、あの、あのーーーーー!」
落ち着いて。とりあえず落ち着いて。頼むから。

報告もどうでもいいところの説明が細かすぎるし、
急にアクセル踏んだみたいに話が止まらなくなるし、
その割に肝心のところが薄い。

電話しても、最初は謎の無言である。
「・・・・・・。」
えっ、その間、なんなの?
こっちのテンポが膝カックンをくらったように崩れ落ちる。
会話ってテンポが大事なんだねって、あらためて思う。

ショートメールが10通くらい来る。
それ電話でよくない?

「ワタシとだけ喋れてもしょうがないんだよ。いろんな人と関わっていかなきゃいけないんだよ。自分じゃない人が上司になったどうすんの?」

いちいち自分を経由してじゃないと仕事が完結しない人だった。

そんな部下が今では一人でいろんな人とコミュニケーションをとって、
こうして気を利かせて電話を入れてくれるし、
簡潔に報告してくれるようになったのだ。
感慨深い。

窓に吹き付けられた雨がしたたり落ちるのを見つめながら、
ふとそんなことを思う。

成長したなぁ。
よかったなぁ。
よかったね。

人って成長するんだね。
何もしてないけどね。
成長するんだね。

自分は成長できているだろうか。
前よりかは忍耐強くなっただろうか。
伝えたいことは伝えられえているだろうか。

雨の日に考えることじゃない。
そんなことはどうだっていい。

組み立て終わった、真新しい椅子に座ってみる。
意外と今のキャスターって音がしないんだね。

くるーっと一周してみる。
なんとなく心地いい。

さぁ、そろそろ次に向かおうか。
















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?