物語は二度始まる
ポアロシリーズ15作品目「ナイルに死す」。
一つ目の殺人が起きてからは、突然自分の中でエンジンが掛かったかのように一気に読んでしまった。
全体像を知ってから第一部を読み返すと改めて作りの精巧さと面白さに二度楽しめる。
あーこれも伏線!?あ、ここはダブルミーニング!?って声に出したくなるくらいの驚き。最初に読んでいたときの第一部とは全く違った印象を受ける。
長編の中でもなかなかに長い部類に入ると思うので、正直物語が動くまでは何がそんなに書かれてるんだろう、エジプトのこともそんなに知らないしなぁくらいの気持ちもあった。ミステリーなんだから読者が感情移入する前に死んじゃうんでしょ、って。
全然死なない。しかも人が沢山出てきて場面がどんどん変わって迷子になる(笑)
面白いって聞いてたけど、これどこから面白くなるんだろう…と一度目はそのあたりで投げ出してしまった。
時間ができたことで再挑戦したら見事にどハマり。いや、本当にうまい。
ただ、この作品の面白さはネタバレ抜きに語りにくいところだけが難点。誰が死んだかを言うだけでも面白さは半減してしまう気がする。
それにしてもヘイスティングズとのコンビも好きだけどポアロとレイス大佐のコンビも良い。レイス大佐は「心得ている人」なんだろうというのがよくわかる。謎解き企画ですっかり守銭奴にされてしまったが本来の彼はかっこいいキャラなんだなぁ…と。
探偵の仕事というものは、えてして間違った出発点を拭いとって、再出発することにあるからね(p.448)
そうだよね、そう。最初から正しい道のみを進むのが優秀な探偵いうわけではない。レイス大佐のおかげで大事な気づきを得られた。
10月に映画化されると聞いてワクワクしている。そして誰も〜もそうだけど、映像が頭に浮かびやすい作品…特に登場人物に色がしっかりついてる作品は映像化してもその面白さが色褪せないので楽しみ。