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気を抜くと世の中に好きなものが溢れすぎて困る。 手のひらから溢れ落ちそうなあれこれを記…

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気を抜くと世の中に好きなものが溢れすぎて困る。 手のひらから溢れ落ちそうなあれこれを記録しています。 主には映画、読書(ミステリーより)、音楽、心理学(臨床)など 月1くらいのペースでゆるく更新予定

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隠したかったものに気づけるか?『ABC殺人事件』

ポアロシリーズ11作目『ABC殺人事件』 木を隠すなら森の中に,人を隠すなら人混みに。 そして殺人を隠すなら連続殺人事件の中に。 名前はもちろん知っていたけれど,読んだかどうかは記憶になくて一応初めてのつもりで読むことにした今作品。ポアロとヘイスティングズのファンとしては,この二人が一緒にいるだけでニコニコできるので,それだけでも読む価値があった。いいよね,モナミ。 私は普段あまり推理をせずに読むことにしているが,今回はCの展開で独特な違和感を覚えた。それがきっかけで犯

    • 私なりのミステリーの楽しみ方 『雲をつかむ死』

      ポアロシリーズ10作目『雲をつかむ死』 飛行機の中で行われた事件ということもあり、どうしても飛行機の中で読み始めたかった。離陸し、ワクワクしながら読み進めるも前半はポアロが全面に出るわけでもなくどちらかと言えば影が薄めな印象を受けた。 前作の『三幕の殺人』ほどではないが,せっかく現場に居合わせたというのに肝心なことは何も見ていないというなんとも格好のつかない始まりなのだ。 ただ、10作以上読んでいると違和感に少しずつ気づけるようになるもので、今回私はとあるポアロの言動から

      • 機械に弱くてもApple信者と名乗りたい

        はじめに Appleってすごい! 何を今更と思われるかもしれないが,この度MacBook Airを手にしたことで,私はすっかりAppleの沼に浸かってしまった。 それはもうずぶずぶである。 ただし,私は機械系にめっぽう弱い上に,説明書などの類を一切読まない。というか,読めない。なぜかあの手の文章は文字の羅列にしか見えず,動画だとしてもお経のように聞こえてしまう。 だから多分,本来もっと便利に使えているであろう機能の三分の一も使えているか怪しいが,そんな私でもすごい!!と感

        • あのポアロが脇役で黙っていられるはずない『三幕の殺人』※ネタバレあり

          ポアロシリーズ9作目『三幕の殺人』 この作品もなかなか異色な構成で、私の大好きなヘイスティングズはおろか、ポアロすら後半までほとんど出てこない。ストーリーの大半は、メインとなる登場人物らが素人探偵団的な動きをしているのを読ませられているという印象だ。 ※以下、犯人が分かるネタバレ箇所があります。未読の方はご注意ください。 今回はクリスティー作品にしては珍しく?ラストにぞくっとさせられる。スッキリするものよりも多少後味の悪いものの方が個人的には好みなので、この終わり方は好

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          ミステリーと必然性

          ポアロシリーズ8作目『オリエント急行の殺人』。 7作目を読んだ後すぐに読み始めたので、年末までには読み終わっていたが感想をずっと寝かせてしまっていた。なんでも溜めてしまうよくない癖がでている。細かいところはすでに忘れてしまっているので思い出しながら書いてみようと思う。 ※ネタバレはしていませんので、未読の方も安心して読んでいただければと思います。 ポアロシリーズの中でもダントツで有名なだけあってとにかく読みやすかった。それとまだポアロをよく知らないころにこの作品の映像を

          ミステリーと必然性

          最後まで手のひらの上で転がっていた

          ポアロシリーズ7作目『エッジウェア卿の死』 私にしてはえらくハイペースで読み進められていて、自分でも驚いている。 前作の邪悪の家と同じくポアロとヘイスティングズのコンビがメインとなるストーリーなので、馴染みやすかったというのが一番の理由かもしれない。スタイルズ荘、ゴルフ場殺人事件の頃はまだ探り探りだったが、このあたりで2人のキャラが定まってきたような印象を受ける。その分、お互いへの軽口も増えて小競り合う様子も楽しい。 本編に入る前に、気になったことを一つ。私はポアロシリー

          最後まで手のひらの上で転がっていた

          やっぱりこの2人でなきゃと思わせる一冊

          ポアロシリーズ6作目『邪悪の家』。 この作品もタイトルは知らなかった。ただ、家(館)というタイトルからは何となくミステリーの定番である館ものを想像させるなという印象。 ところが蓋をあけてみると、館の要素はそれほど感じられず、タイトルになるほどの存在感はない。それでも今回は読後の満足感が強かった。これはひとえに、私の大好きなあのコンビが復活していることにあるだろう。 ※ネタバレは極力控えているので核心に触れるような内容はありません。 未読の方も気にせず読んでいただければと思

          やっぱりこの2人でなきゃと思わせる一冊

          目眩がするほどの衝撃【春にして君を離れ】

          今回はポアロシリーズから離れてこちらを読んだ。 クリスティー作品の中でもミステリーではなく、ロマンス小説に分類されるものらしい。前情報を入れずに読んだ方がいいという話を聞いたのでその通りにしてみた。読む前のイメージとしては、タイトルとロマンス小説という響きから勝手に恋愛が主のストーリーだと思っていたのでそのギャップと衝撃にひっくり返りそうになった。 確かにこれはミステリーではない、しかしロマンス小説なのかどうかも怪しいと思う。後々この作品はクリスティー名義ではないとわかって

          目眩がするほどの衝撃【春にして君を離れ】

          対極は優劣ではない

          このnoteの内容と少し前に私が考えていたことが偶然にもリンクしていたので、まとめてみたくなった。 私の場合、考察というよりはただの具体例の提示である。以下に出てくる内容に関して個人的な意見を述べるつもりは全くなく、〈思考〉と〈感情〉の話の例として用いることを前置きしておく。 先日とある障害者の方が発信した内容がTwitter内で物議を醸していた。その方の発信した内容については詳しく触れないが、『身障者が旅行をするには依然として合理的配慮が不十分である』といったことが大まか

          対極は優劣ではない

          舞台の魅力と並存する素朴さ

          前回から随分間があいてしまった。 ポアロシリーズ5作目 『青列車の秘密』 クリスティーの列車ものだとオリエント急行殺人事件が有名すぎるからなのか、この作品はタイトルすら初めて聞くものだった。 内容としても比較的シンプルな作りで、特に目立ったしかけや見せ場もない。普段犯人のことは考えずに読むが、今回は早い段階でもしかしたらこの人かもなぁと目星をつけていた人がそのまま犯人だった。なにせクリスティーが用意した伏線の一つがめちゃめちゃわかりやすかったので、何でも疑う癖のあるミス

          舞台の魅力と並存する素朴さ

          王道だからこその安定感

          無性にベタなストーリーを見たくなって 劇団ひとりの2作目、『青天の霹靂』を観た。 陰日向に咲くの時ボロ泣きした記憶があったので今回も泣かされるんだろうと構えていたら案の定。 ベタな展開でも嫌味がないのはシンプルに役者さんの演技がうまいからなんだろうなと思う。わかっていても泣けるし、笑える。登場人物が少ないのでとても狭い世界の中のやりとりなのもいい。 なによりマジシャンという設定がいいスパイスになっている気がした。 トリックスターの中に同居する平凡さ、でも本当の意味での

          王道だからこその安定感

          お暇が必要な夜

          私の部屋には、(過去の)私が(いつかの)私のために用意したあれやこれやが沢山ある。 いつか必要になることがあった時のために。 幼い頃『帰ってきたドラえもん』という映画で、未来に帰るドラえもんがのび太くんのために一つだけ必要なものが出てくる道具を残しておく場面があった。映画ではその道具のおかげでドラえもんは帰ってくることができるのだけれども。私にはドラえもんはいない。そして誰も私のドラえもんにもなってくれない。だから私は私のためにドラえもんになることにした。 いつかの私のた

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          最高のエンターテイナー

          「だって出会った それは消せない」 ラブミーテンダー by東京カランコロン  東京カランコロンは大学生の頃に友人に連れて行ってもらったライブをきっかけに大好きになったバンドです。 ポップで可愛くてキラキラした面と、鋭くて尖っててギラギラした面と両方を併せ持つ不思議な音楽を作る人たち。カランコロンの音楽はこんぺいとうのようにカラフルで決して真似のできない唯一無二という言葉が似合う。 本当は6月に解散予定だったけどコロナ禍で解散ライブが延期になり、無観客生配信という形でのラ

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          育たなかった習慣

          小さい頃は家庭の教育方針で、大人になった今は自分の意思でほとんど漫画を読まずに生きている。勧められたら読むこともあるがよっぽどじゃない限り自分からすすんで読むことはない。 普段それで困ることはあまりない。 ただ話題作についていけないことは多々ある。幼い頃には無理して話を合わせようとしたこともあったが今はその話題には入らないことでどうにか回避し続けている。 ちなみに幼い頃の私は何をして過ごしていたかというと外で友だちと日が暮れるまで遊ぶか、音楽を聴きながら過ごすかのどちらか

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          愛と毒とミステリー

           ここ最近海外ミステリーばかり読んでいたので味変しようと、久しぶりに湊かなえを手に取った。6編の短編集なので読みやすくあっという間に読んでしまった。 タイトルにもあるように今回は「母」と「娘」が大きなテーマ。そこに「優しさ」「正しさ」なども乗ってくるのでなかなかの重量感。読むのに苦労はしないが爽快感を求めている人には少々胸焼けするかもしれない。 頭の中でまとまっていないので言葉にしづらい部分もあるが、今感じていることを言語化してみようと思う。  少し前に『毒親』や『アダル

          愛と毒とミステリー

          ミステリとは離れたところに面白さあり

           ポアロシリーズ4作目「ビッグ4」。読む前に調べたレビューによるとどれもあまり高評価ではなく荒唐無稽だという意見を多く目にしていたので,あまり期待せず読むことにした。ひとつ前の「アクロイド殺し」ではヘイスティングスに会うことができなかったので,今回はヘイスティングスに会えるかどうかだけを楽しみにして読み始めたと言ってもいいかもしれない。毎度のことながらミステリーの読み手として模範的ではないなとつくづく思う。 ただ,結果的にそんな動機で読んでいる私にはぴったりの作品だったので

          ミステリとは離れたところに面白さあり