胸いっぱいの満足感と少しの違和感

ポアロシリーズ2作目「ゴルフ場殺人事件」。
こういう順番があるものは順序よく進めたいこだわりがあるので、初心に立ち返り2作目を読んでみた。

うーん。どうしてこのタイトルなんだろう。
全体的にとてもテンポが良く、読むのに全く苦労しなかった。語り手であるヘイスティングズに感情移入できるので嬉しくなったり悲しくなったり腹立たしかったり、読んでる間中感情が忙しい。
仕掛けもよくできていて、今となっては珍しいトリックではないのかもしれないけど二転三転する展開に初読では本当に驚かされる。
あぁ、あの人が犯人だったのね…え、違うの!?というくだりを何度したことか。つまりは面白かった!!

そして最初の疑問に立ち返る。
どうしてこの作品名になるんだろう?


たしかにゴルフ場は出てくるものの、メインのストーリーとは大した繋がりは見られないし物語のキーになるわけでもない。
むしろもっと大事なワードがいくらでもあるのにわざわざゴルフ場とつける理由がいまいちピンとこない。どうにも必然性が感じられない。

アガサの作品名(和訳されたもの)はとてもユニークで読む前からワクワクさせられるものが多いのも魅力の一つだと思っている。一つ前に書いた「ナイルに死す」や、「そして誰もいなくなった」などが良い例として挙げられる。

そういった作品の中に並ぶと「ゴルフ場殺人事件」はおさまりが良すぎてよくも悪くも目立たない。お行儀が良すぎる感じがする。だから正直な所あまり読む気になれず飛ばしてしまっていた。


ただ、繰り返しになってしまうけど内容は本当に面白かった。
ジロー刑事との心理的な駆け引き、シンデレラとヘイスティングズとのラブストーリー…等々、連続ドラマにしてもいいようなボリューム感がある。

それでいてナイルに死すではまだ誰も死んでいないページ数でもう答えが半分でかかっているんだからいかにぎゅっと盛り込まれているかよくわかる。ナイルに死すが映画向きなら、ゴルフ場殺人事件はドラマ向きだなぁと。どちらにも良さがあり、自然と違う作品も読みたくなった。


2作目ということもあり、ポアロとヘイスティングズの関係性もスタイルズ荘の頃よりも人間味が出てきていてなんだか微笑ましい。このコンビのやりとりを見ているとニコニコしてしまう。
私もパパ・ポアロに導いてもらいたい…なんてふと考えてしまうほど、ポアロのこともヘイスティングズのことも大好きになる作品だった。またすぐにでも彼らに会いたい。



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