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高校の恩師(2) 自分らしさとは

W代先生の講話の一部から。


「中等教育現場の日常より思うこと」

(1)多様性について
多様性を受け入れる前提は、自立した「個」を持っていることだろうか。

(2)自立とは
自己決定・自己責任は自立を育てるものではない。
自分で決定することが自立ではない。
例えば、物理の勉強をしていて何かの法則が出てくるとする。
「先生、僕はこの法則を学ぶ意味がわからないんです、だからやりません」
これはどうだろう。それは自立というのか。

自分が興味があるもの、目的を明確にできるものしかやらない、誰にも迷惑をかけないからいいでしょう、それは違う。

学習とは、「わからないことを理解する」ことではない。「『自分が知らないということも知らなかった』ことと出会い、知る」こと。

(3)適正と個性
「自分らしさ」とは何か。
みんな自分らしさが大事、自分探しをしている。

誰にでもできる仕事をしているのは本当の自分ではない、自分はもっとクリエイティブな仕事ができるし高く評価されて然るべきだと言って、辞める若者たちがいる。みんなができることを自分はやらない、そんな人が本当にクリエイティブなのだろうか。

自己評価と他者評価の間にズレが生じるのは普通のこと。
誰でもできる仕事を「はい、やります」と言って一生懸命にやり、結果的に「ああ、あなたは他の人とは違う仕事をしますね」と高い評価を受けることで、自分らしさができる。
自分らしさは自分が決めるのではなく、他者からの評価が決めること。

(4)キャリアと適正
文部科学省はキャリア教育の必要性を訴えており、若者に定職につき働くことを求めている。生徒に将来を考えさせる際、最初に自分の適性を考えさせることが重要とされている。

しかし、適性は仕事を通して発見されるべきであり、適性検査では見つけられない。

適性は与えられた状況の中で発見されるもの。周囲からの期待に応えることで潜在能力が開花し、自分の能力を選択的に開発していく。自分の適性を探すのではなく、与えられた条件の中で最高のパフォーマンスを発揮できるよう努力する。

(5)キャリア教育の基本を考える
専門分野とリベラルアーツ。

専門家とは、自分の専門分野の優位性を他分野に伝えられる人のこと。専門分野が生かされるのは、他の専門分野との対話を通してであり、専門分野内だけでは閉じてしまう。異なる専門分野間の対話が重要。

教育現場でも、教師は生徒に、教師自身の感覚を通して、教師自身の言葉で教科を教えることが求められる。


(ここからは個人メモ)

最近、大学生や新卒社員くらいの若者と話していて、やたらと自己理解のための診断やツールをやっている人が多いと感じる。大学の中でキャリア指導として行なっているようだ。

「自分はこれに向いていると思う」
「自分はこれに向いていないからやめた方がいいと思う」

若干違和感を感じていたところに今日の先生の話を聞き、なるほどと思う。
効率よく物事を進めたい若者、でもそれは社会が作り出していて、効率よく若者に働いてほしい国の施策が生み出した面もあるということ。

専門家は、専門分野だけを学ぶだけでは生まれない。
専門性を磨くには、他の分野と交わり、他の分野の人に、自分の専門分野を伝え、理解してもらうということ。

自分を知ること、自分らしさを磨くということは、他者と関わり、他者からの評価をもらうということ。

「知らないものとの遭遇」「実行(体験)」「対話」。


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