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2人目育児中、子育て支援センターに泣きながら駆け込んだ話


私には今、生後5か月の娘と2歳半を過ぎた娘がいる。長女は昼間は保育園へ行っており、実質昼間お世話するのは次女だけだ。


「子育て支援センターって子育てに不安なママさんが行くところだよね。SNSで調べられるし、私は行かなくていいかな」


そう思っていたのは次女が生後2か月の時だった。




長女を産んで2年たったものの、子育ての記憶はまだ新しい。夫も子育てには協力的。子育ては大変だけど、それなりにやっていけば大丈夫だろう、と思っていた。


しかし、現実は違っていた。


とにかく必死で2人育児をこなす毎日。


誤算だったのは、夫が役職に就き、帰りが遅くなったこと。
とはいっても遅くても20時には帰ってくる。帰ってきた後も洗濯物を干してくれたり、ご飯も自分でよそったりと自分にできることをしてくれている。



それでも、長女を保育園へ迎えに行ってから、2人を寝かしつけるまでの数時間が本当に本当に大変だった(今も大変です)。
一人で2人のお世話をしなくてはならないからだ。



最初は2人一緒に寝かしつけるため長女をおんぶして次女を抱っこしてたり、お風呂にもフル回転で2人を入れたりととにかく必死だった。


長女は完全に赤ちゃん返りしていて、できることも「ママじゃなきゃいや!」「ママがやって!」というようになった。

2人同時に泣いたらどうすればいいのかわからない。

授乳やオムツ交換など急を要する場合は次女を先に、そうでない場合は長女を優先する、というのが基本方針。

だけど、なかなかそううまくもいかない。うまくいかず、途方に暮れる時もあった。


次女の首がすわってからはおんぶして、膝立ちで揺れながら長女と夕食を食べている(長女は私とでないと食べてくれない)。


それでも、生後2か月の時、次女の夜泣きが終わり、少し長い時間寝てくれるようになってからは、長女と私、次女と夫という組み合わせで寝ている。

(次女は寝室に連れてくと大号泣してしまうため、生後5か月の今も次女は居間で寝ている)



つらくもあったが、夜も通して寝られているし、何とかやれている、と自分では思っていた。






「あれ?」と思い始めたのは5月末。娘が生後4か月になる前の時だった。


体が動かなくなり、昼間も体を横にしていることが増えた。
ただ、その時はちょうど夫と大きな夫婦喧嘩をしていて、それが原因だろう、と思っていた。


そうでないと気付いたのは、6月に入って少したってからあった次女の3,4か月検診の時。


保健師さんと子育てについて話していて、「それは、大変だね。こういう話できる人、ほかにいる?」と聞かれた。


いつも、夫が聞いてくれていたので「大丈夫です」と答えていたのだが、夫の帰りが遅くなってからは家で会話をせずに二人ともつかれて寝落ちして朝を迎えることも多くなっていた。


実母との関係性は悪くもないが良好でもないのでそこまで悩んだ話もできない。



私は、いつからか、子育てについて誰にも話せなくなっていた。


恐ろしいのは、私自身がそのことに全く気付いていなかったということ。


「誰も、いないです。聞いてくれる人」


「今。こういう話してみてどう?」



「……泣きたいです」



私は、日々が精いっぱいで自分の感情を無視していた。
その結果が、体に現れてきていた。



私は、「子育てがつらい」とは言えなかった。


流産を乗り越えて、ようやく念願の2人目を授かった。
ここにいるだけで本当に奇跡の命。


長女も日中は保育園に行っている。
次女は夜泣きをしなくなり、夜も通して6時間寝られる。
夫は帰りが遅いが夜勤はない。平日遅い代わりに土日休みになった。


それでいて、つらいなんて、言えなかった。



自分のつらさや感情を、ようやく自覚した。



自覚してからは、張り詰めていた糸がぷつんと切れたような毎日を送っていた。


夜更かしもせず、朝も遅く、ネガティブな感情ばかり思い浮かぶ。



一番何がつらいかを考えた時、思い浮かんだのは長女のことだった。



もちろん自分の時間を取れないこともつらい。


だけど、長女に対して優しい感情を持てなくなっていることが一番つらかった。


「どうしてできないの」「やれるでしょ」「とっととやって」そういうマイナスな感情ばかり長女に抱いてしまう。絶対に口に出さないように口をつぐむのだが、それで余計にイライラしてしまう。


ある日長女に「ママ、今日はぷんぷんしてない?」と聞かれたときに、私がいかに毎日イライラした顔をしていたのか、自覚した。


「次女が生まれる前までは絶対にこの子を優先しようと決めていたのに、全然できていない」


そのことに気付いた日、私は1日中、たとえではなく本当に1日中泣いていた。


保育園へ向かう車の中でも泣いていた。
「長女が帰ってきてしまう」「また、2人を同時にお世話しなければならないあの時間がやってくる」そういう感情が3割。



あとの7割は「こういう感情を長女に抱いている自分は本当に母親失格だ」という自分を責める感情だった。



その日は幸いにも1日泣いていたのですっきりしたのか、2人のお世話の時間はそれほど苦ではなかった。



しかし、その翌日。

やっぱり涙は止まらなかった。

本当にどうしようもなくなって母に電話してみたけれど、母から返ってきたのは「あんたは子育てとかそういうの苦手だから」という言葉。


もう、どうしようもなくなって、適当にごまかして電話を切った。



夫も頼れない、実母にも話を聞いてもらえない。どうすればいいのかわからない。


私にはうつ病の既往があった。


「この感じはあの時と似ている。誰かに助けを求めないと、つぶれる」「一人でつぶれてるならまだしも、今は二人の子どもがいる。誰かに助けを求めなければマズイ」



その時、思い浮かんだのが「子育て支援センター」にいたスタッフの顔だった。



実は、次女は体重増加が著しく、生後2か月の時、一度だけ支援センターへ行って体重を測定したことがあった。

その時のスタッフから「お母さん、また来てね」と声をかけられた。
ただの社交辞令だったのだろうが、思い浮かんだのは、その人の顔。



私は、「今から行って、話を聞いてくれる人はいますか」と震える手で支援センターに電話をかけた。


「いますよ。ゆっくり来てください」と声をかけられ、支援センターへ号泣しながら向かった。



個室で私の話を聞いてくれた支援センターのスタッフ。



「大変だよね。ママ、本当に頑張っているね」
そういわれただけで、私は救われたような気がした。


長女のことについても話をした。
イライラしてしまうこと、優しくできないこと、そんな自分が許せないこと。


「ママもね、人間なんだからそういう感情抱いて当たり前だよ。大丈夫。子どもが帰ってくる~夏休みでずっと家にいてしんどい~って言うママ、たくさんいるから大丈夫よ!安心して」


「でも、長女ちゃんと夜一緒に寝ているんだね。小さい子の方がママと寝るって家庭が多いのに、パパもがんばってるね。長女ちゃんにとって、そうやって自分を優先してくれた記憶は、絶対残るよ。昼間何かあってイライラしても、その夜の時間だけは大切にすれば大丈夫。自分を大切にしてくれたんだって、きっと、覚えているよ」


「土日も次女ちゃんとパパお留守番させて、長女ちゃんと近くの公園で遊んだりしてるのね。ママも長女ちゃんとの時間を大切にしてるんだね。次女ちゃんが大きくなったら、もっといろんなとこに遊びに行けるよ。もう少しだね。もっともっと次女ちゃんが大きくなったら、長女ちゃんが一緒に遊んでくれるよ」


聞いているうちにどんどん涙があふれてきて、止まらなかった。
でもそれは悲しみの涙じゃなくて安心の涙。


私も、一生懸命やれていたんだ、大丈夫だ。悪いところにばかり目を向けないで、自分を褒めてあげよう。

支援センターのスタッフさんがかけてくれた言葉を私は一生忘れない。


私は、この日から、長女に対して冷静に優しく言葉をかけられるようになった。夜のスキンシップの時間は特に大切にしている。



子育てにはつらいこともあるし大変なことも多い。だけど、絶対助けてくれる人もいる。そのことを忘れちゃいけない。

「駆け込み寺」の存在を把握しておくことは、重要だ。自分には必要ないと思っていてもいつ状況が変化するかわからない。いざという時、自分を守ってくれる。


私はまた、今日から頑張れる。
























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