吃音症状10の分類
吃音は、中核症状(伸発、連発、難発)のみが注目されがちですが、他にも様々な症状があります。これらについて、文献等より得られた内容をまとめます。社交不安障害と抑うつは、さらに生活に支障が生じる厄介者なので、さらに深堀りします。
吃音とは
定義と特徴:
吃音は、発声や発語に関連する器官に解剖学的または機能的な問題がないにもかかわらず、発話が非流暢になる障害です。
自覚的には言いたい言葉を意識しているが、その発話には吃音中核症状が伴いやすい。
有症率と診断:
有症率は人口の約1%と比較的多いですが、多くの場合、医療機関を受診していないと推測されます。
通常、耳鼻咽喉科医が発話器官に問題がないことを確認し、言語聴覚士が吃音検査で症状を評価し、診断します。
社会的・心理的影響:
吃音は2次的に多様な症状や問題を引き起こしやすく、中核症状が目立たなくても、精神面や社会生活(学業、就労など)に重大な影響を及ぼすことがあります。そのため、社会面や心理面の評価と対応がしばしば必要になります。
吃音症状の10分類
吃音中核症状:
具体例: 繰り返し、語頭の音の引き伸ばし、難発。
特徴: 100文節あたり合計3以上あれば吃音症とされる。特定の単語や場面に限られることもある。単音節単語の繰り返しやサ行の子音のみ伸びることが多い。
間投詞(挿入):
具体例: 「えっと」「あの」「なんだっけ」など。
特徴: 正常範囲の非流暢性とされる。
準備・工夫:
具体例: 延期、息を吸う、つばを飲む、構音の準備、声の調子を変える、言い直すなど。
特徴: 吃音に特異的ではないが、しばしば見られる。言いにくいと思う語や音の前で使用される。
回避:
具体例:
音の回避: 「ありがとう」を「りがとう」と言う。
単語の回避: 苦手な音で始まる単語を省略、言い換える。
発話や機会の回避: 発言しない、発表の日に欠席する。
特徴: 苦手な音を省略、歪める、別の音で言う。語中で正しい音が出るなら構音障害は否定的。
変動:
具体例:
状況依存性: 特定の単語や音、状況、相手、場面、聴衆の人数による変動。
波: 数日から数カ月の単位で症状が変動。
特徴: 電話、面接、発表が困難。独り言、歌、斉読ではほぼ流暢。
随伴運動:
具体例: 口唇に力を入れる、渋面、瞬目、頭や手足を動かす、体幹を曲げるなど。
特徴: 発語の直前か同時に生じる。意識的な工夫ではなく、自動化されて無意識のこともある。
秘匿:
具体例: 吃音が恥ずかしく隠す行動。
特徴: 発話が少ない職業を選択、昇進を断るなどで、自己実現を妨げる。
予期:
具体例: 言う直前に「吃りそう」と感じる。
特徴: 不安を生じやすく(予期不安)、工夫や回避を誘発する。
情緒的反応:
具体例: 羞恥、不安、恐怖、パニック、自責、無力感、怒り、落ち込み、いらいら、悔しさ等。
特徴: 吃音症状、工夫・回避に伴う感情反応。
精神障害:
具体例: 社交不安障害、抑うつ。
特徴: 吃音に関連する精神障害。社交不安障害や抑うつ症状が吃音と関連していることがある。
社交不安障害(Social Anxiety Disorder)とは
社交不安障害とは人前で注目が集まるような状況で、強い不安や恐怖、緊張を感じ、何か失敗して自分が恥をかくのではないかという心配や強い不安を感じる病気です。
自分でも、恐怖を感じるのは変だなとわかってはいるけれど、不安な気持ちを抑えることが難しくなります。徐々に恐怖を我慢しながら生活し、外出や人と会うこと、恐怖に感じることを避けるようになり、重症化すれば日常生活に支障をきたすようになることもあります。
抑うつとは
抑うつとは、「気分が落ち込んで何にもする気になれない」、「憂鬱な気分」などの心の状態が強くなり、様々な精神症状や身体症状がみられることを言います。
意欲の低下、思考力・集中力の低下、自尊心の喪失、食欲の低下、睡眠リズムの異常、倦怠感・疲労、頭痛、関節痛、胃痛、めまい、便秘、息苦しさなどの症状があります。
参考
1) 森浩一 吃音(どもり)の評価と対応 日本耳鼻咽喉科学会会報 2020 年 123 巻 9 号 p. 1153-1160
2) おりたメンタルクリニック 社交不安障害(SAD)の治療
3) 健康長寿ネット 抑うつ
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