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ライチが好き、という話

初めてライチを食べたのは、まだ小学校に入る前だったと思う。

年に1度のピアノの発表会の後、1年間頑張って練習したご褒美として、木更津の今はなき「王蘭飯店」に寄るのが我が家の恒例行事だった。
そこでデザートとして食べた杏仁豆腐に入っていたライチが、私の人生初ライチとなったわけだ。

クリスタルガラスの大きなボウルに真っ白な杏仁豆腐と一緒に浮かんでいたのは、もちろん生ではなく缶詰のライチだったけれど、
「こんなに美味しい果物があるのか!」
と衝撃を覚えた私は、好きな食べ物を聞かれると
「ライチ!」
と答える変な子どもになってしまった。

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ライチどころか杏仁豆腐すらも珍しい時代だった。
それを考えると、木更津という小さな街の片隅にありながら、あの「王蘭飯店」はかなり時代の先端を行っていたんじゃないのかと思う。そうえいばカエルの唐揚げもメニューにあったし。
店員さんも品よく、子ども用の椅子に座っている私の事も子ども扱いせずにまるで「王女様」のようにサーブしてくれるので、あの店に行くのは私にとって最高のご褒美だった。
もちろん、出てくる料理は全て美味しかった。カエルの唐揚げさえも。

数年前久々に木更津を訪れて、王蘭飯店が既に閉店してしまっている事を知った。名店がまたひとつ消えてしまったことと同時に、私の思い出もなくなってしまったようで寂しかった。

閑話休題。

昨年6月に台南を訪れた際に、道端でライチを売っている屋台をみつけた。

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早速ひと山買ってうきうきとホテルに戻り、人生初めての生ライチを食べた。
旬の生ライチは爽やかに甘く香り高く、これほど瑞々しいものなのかと衝撃を受けた。ライチから衝撃を与えられたのは、人生で2度目だ。参りました。

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ただ、昨年はライチが不作だったそうで、更に私の台湾行きがもう旬が終わろうとしていた時期だったことと重なり、道端屋台のライチは値段がかなり高く、もう一度買う余裕はなかった。(とは言っても395元=約1,400円。日本で買うよりは全然安いのだけど)
もう少し安く買えないかと、滞在中に何ヶ所かの市場で探してみたけれど、不作の影響なのか、もうライチを見つけることはできなかった。

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今年はライチが豊作だと聞いた。そういう年に限って台湾に行けないなんて、どういうこと?
通販で取り寄せる手もあるけれど、値段を見て躊躇する。
途中でいろいろなコストがかかり、最終的に値が上がってしまうのは理解していても、地元台湾での価格を知ってしまうと貧乏性の私としてはもう手を出す気になれない。来年のライチの時期に台湾に行くしかない。

どうか来年もライチが豊作でありますように。
そして来年の今頃は、日本と台湾を自由に行き来できるようになっていますように。




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