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喜樹老街

台南中心部からバスで1時間ほどの郊外にある、300年程の歴史がある小さな集落。
目の前には台湾海峡があり、一時は漁業が盛んだった場所だと思われる。

過疎化が進み廃れていく街を盛り上げようと、台湾では人気の食材であるサバヒーの形をした虱目魚包(サバヒーバッグ)を売り出したりして活気を取り戻した事もあったようだが、私が訪れた時には店も閉まっており、ただただ静かな時間が流れているだけだった。
時期的なものなのか、それともバッグの人気も一時的なもので終わってしまったのか、まだ確認できていない。

似たような街の活性化の一環なのか、この小さな老街のいたるところに壁や塀に描かれたアートを見かけた。
特に多かったのが猫をモチーフにしたもの。漁村だけあって猫が多い場所なのだろう。

この場所を残したいという「意図の名残り」のようなものは、そこここにあるものの、新化老街のような観光地の雰囲気は全くない。

今も誰かが生活している民家と廃屋とが並ぶ、迷路のような小さな路地は「喧騒」という言葉とはかけ離れている。

風雨に晒された無人の家の屋根に飾られた色鮮やかなタイル。
この家のかつての住人は比較的裕福だったのかもしれない。

どんな暮らしをしていたのか、なぜこの場所を去ったのか、この家はこのまま静かに朽ち果てるのを待つのか、それともいずれ誰かが壊してしまうのか…数々の思いが巡る。


別の崩れかけた廃屋の扉には色褪せた春聯が残っていた。

春聯は中華圏における風習の一つ。赤い紙に縁起の良い言葉や言祝ぎの文を書いて、春節の時期に玄関や門、扉などに貼る。

かつての住人が1年間の平安と幸せを祈った記憶。
ここに住んでいた人たちは、春風のような穏やかな幸せの中で暮らせたのだろうか。

撮影日:2019.12.18

【喜樹老街】
台南市南區
台南駅前 南バス停から1線 「茄定行き」に乗車 「喜樹」で下車(40分程)



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