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【読書感想文】を詰め合わせて読書欲がかきたてられればいいな

本を一冊読んだ後、本当であれば、少し時間を置いて噛み砕くのが良いような気はしている。しかし、一応自分の中での約束として、読後はまっさきに、とりあえず短く文章で「読書メーター」に感想を残しておくというのを、多分10年近く続けてきた。

いつぞやは年間100冊読んでいたこともあったけれど、近年は本を読む時間が明らかに減ってしまったし、読む速度もやたら遅くなってしまっているので、自分がもっと本を読みたくなるためにも、自分の短文読書感想文をいくつか振り返ってみようというやつ。基本的には小説ばかりです。

『けむたい後輩』柚木麻子
読んでてきっつくてきっつくて。でもちょー面白い。柚木麻子素晴らしい。イタイ人たちを堂々と全力で書ききる感じ、たまりません。ラストの畳み掛けで、すっきりするともちょっと違うけれど、あ〜〜! と、少なくなった残りの歯磨き粉をを一気に絞り出して、きゅぽって音が鳴って、ふと見たら壁に張り付いてしまっていて、容器の中はようやく使いきって空っぽって思うような、感覚? とりあえずですね、人間、気取るのは駄目なのかもしれない。わかっていてもということはありすぎるくらいあるけれど、それですね。

『勝手にふるえてろ』綿矢りさ
綿矢りさの女子っぽさ、染みる。染み渡る、というよりは染み至る感じ。主人公の永遠の一番であるイチと宅飲みまでこじつけられたのに、そこで別の女の社交性が光っているときの、私だって自炊くらい人並みにできるから、頼むからしゃもじを濡らさずにご飯をよそおうとするこの子を好きにならないで、みたいな表現とか、なかなかに。イチにもニにも、何より主人公にも色々とイラッとくるんだけど面白いし遠い感覚ではないからついつい読んでしまう、そんな話だった。もう一作は逆に、こういうのにも挑戦してみました感があって読み飛ばしてしまった。

『TUGUMI』吉本ばなな
口が悪く態度も悪く我儘なとびっきりの美少女・つぐみ。両親の影響で海のある町から東京に引っ越した私は大学の夏休みに、つぐみの家が営む旅館に泊まりに行き、特別な夏休みを過ごす。つぐみの発する一言一言から、等身大な大きさ、弱さ、強さ……全力でぶつかってくる。引用:「食うものが本当になくなった時、あたしは平気でポチを殺して食えるような奴になりたい……(中略)本当に平然として「ポチはうまかった」と言って笑えるような奴になりたい。」旅行のお供にしたら旅行中に読み終わって電車で泣きかけたので勘弁してほしい。

『生きてるだけで、愛。』本谷有希子
一気読み。嫌だ、と思いながら一気読み。読んでいて嫌だって咄嗟に感じるのって、大抵自分に近いと感じるときで、それを自覚してさらに嫌だ、と思う。女の塊みたいな本なので、余計に自己嫌悪した。でも最高だった。鬱で引きこもる寧子の流れるような一人称での語り、一つ一つ挟み込まれる例えや冗談の質、寧子が三年間なんとなく一緒にいたと思っていた津奈木の人間性とその本質、とか、要素がどれも素晴らしくて、ふと読み終えて閉じた表紙の、ピンクに染まった北斎の富嶽三十六景に寄り添う安いハート。ばっかみたい。最高。

『絶望名人カフカの人生論 』カフカ
カフカが好きなので手に取りましたが、正に、カフカのファン本とも言えると思う。日記や手紙に着目し、どこまでも絶望思考なカフカの名言を集めた本。絶望も突き詰めると希望になり得る、というのは少し前向き過ぎるかもしれないけど、絶望が救うことのできるものって多いのだと思う。絶望絶望言ってますけども、カフカ自身は自殺を試みたことはない、とも。それは死にたがりの本意が、今とは別の何処かへ行きたいという隣の芝は青い思考だとしたら、隣に移ったらそれはもう地獄なのだというところまで絶望してしまうカフカだからこそ。楽しいなあ。
特に好きなのは68番。「二人は一人よりも孤独。一人でいると、全人類が彼につかみかかりはするが、その無数の腕がからまって、誰の手も彼に届かない」というやつ。

『夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった』谷川 俊太郎
詩を読むというよりは、語りかけるのを聞いてるという感じ。語りかけているけどどうやっても詩になっている理由として、口に出すことで自分が内に込めていた何かを失っていくことの主張がある。それを隠さず詩に書くという表現。特にわかりやすいのは、「さらけ出そうとするんですが さらけ出した瞬間に別物になってしまいます 太陽にさらされた吸血鬼といったところ 魂の中の言葉は空気にふれた言葉とは 似ても似つかぬもののようです」の部分。言葉は変わってしまうけれど、それでもどうしても、夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった。


以上。
読後すぐに思っていることは、今感想を読んでも、あー、そうだったなと思い出すことが多い。無理矢理短文読後感想文、わりとよかったのかもしれない。

またやるかもしれません。新しい本も読みたくなるし、自分の感想読んであらためて読み返したくもなるし。

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