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せんすい島とすうちゃん

授業が終わるなり皆が私の回りに集まって来て口々に
「凄いよ!すうちゃん!」
「なぁなぁ!俺の相談にも乗ってくれよ!」
「えー!ずるい私も!」
皆の反応にビックリして困った。
私からしたら、たわいのない一言だったのに…チュー君からも
「相談に乗ってくれてありがとう!すうちゃんのお陰で好きな事が誰かの手助けになるなんて!ほんとうにありがとう」
そう言ってもらえた。
なんだろう…心がポカポカする…初めての感覚だ。
いつも誰かに何かをしてもらうばかりだったけど…私も誰かの為にしてあげられる事が出来た…嬉しい…でもこんなに大騒ぎになって少し戸惑っていると
「皆ちょっと落ち着いて!すうちゃんがビックリしてるでしょ?」
カメちゃんが言うと、うーちゃんも
「皆が一斉に相談したらすうが大変だろ?少し落ち着けよ!」
そう言うと皆もハッとして
「そうだよな…ごめん」
「私の相談は今度でも大丈夫」
「うん僕も…」
そう言うと皆それぞれ散って行った。
ホッと胸を撫で下ろしてるとカメちゃんが心配そうに私の顔を覗き込み
「大丈夫?すうちゃん?」
首を傾げて聞いてきた。
私は苦笑いをしながら頷くと
「ちょっとびっくりしたげど大丈夫だよ」
「よかった。皆悪気は無いんだけど…」
「だよなー!流石の俺もビックリだったわ!」
「うんでも…チュー君の相談に乗る事が出来てよかった」
「チュー君喜んでたもんね、それにしても…すうちゃんが居た学校とこっちの学校では色々違ってるみたいだね」
「そうだよな、こっちには図書館に管理?するような奴は居ないもんなー」
「え?だったらどうやって読みたい本を探すの?」
「勘だ!」
「嘘だからねすうちゃん…図書館で本を探すには頑張って自分で探すかもしくは校長先生に聞くとかかな」
「え、校長先生は図書館の本の事わかるの?」
「そりゃ知ってるに決まってるだろう!校長先生の学校だぞ?」
あれ?校長先生ってそういう事してるんだっけ?私の通ってた校長先生って何してたっけ?朝礼の時に挨拶してるぐらいしか記憶にないけど…こっちでは違うのかな?と悩んでると、カメちゃんがニッコリと
「校長先生はなんでも知ってるのよ」
「そうそう!俺が前無くした教科書も見つけてくれたし!凄いんだぜ校長先生は」
「いや…そもそも教科書を無くすって…どうしたの?」
「まぁ色々あって教科書を持って帰らないといけなくて…でも教科書って重いだろ?だから2階から下に落として下で回収しょうとしたら見つかんなくて困ってたら校長先生が俺の教科書持ってきてくれてさー」
「…うーちゃん?」
一瞬誰の声だろうと思ったぐらいのカメちゃんの低い声が聞こえた。恐る恐るカメちゃんを見ると見事までに怒ってる…うーちゃんもヤバイと思ったのか必死に
「いやいや!もうそんな事やってないぞ!あの後クマ先生に凄く怒られし母さん達にも怒られて俺は反省した!もうあんな事はこりごりだ」
余程皆から怒られたんだろう…うーちゃんはブルブルと体を震わせていた。するとカメちゃんがハァとため息をつき
「もうそんな事しちゃ駄目だからね!うーちゃん!」
「もう絶対にやらねーよ!ほんと母さん達が怖かったし…俺しばらくおやつ抜きだったんだぞ!」
自業自得のような気がしないでもないけど…
「あれ、校長先生には怒られなかったの?」
「校長先生は怒らねーよ逆に心配はされたけど…大事な教科書が落ちてましたよって」
「そう言えば校長先生が怒ったの見たことないような…」
「そんな優しい校長先生だったんなら、うーちゃん、ちゃんと謝ったの?」
「は?なんで俺が校長先生に謝るんだよ?」
「うーちゃん…校長先生はうーちゃんが教科書を無くして大変な思いをしてるんじゃないかって心配してくれたんだよ?どう思う?」
じっとうーちゃんを見ると
「!…俺…きちんとお礼もごめんなさいも言ってない!言ってくる!」
そう言うなり走ってしまった。呆気に取られているとカメちゃんが
「本当にうーちゃんは…でもすうちゃんお陰で気付けてよかった。」
「え?私?大した事はしてないよ…ただ…優しいからって…その人に甘えてしまうのは良くないかなって私がそうだし」
「すうちゃんは大丈夫だよ!」
「…ありがとうカメちゃん」
「これでうーちゃんも少しは分かったみたいだしこれで良かった。それにしても…すうちゃんは凄いね、あれだけ私が何を言っても聞いてくれないうーちゃんが校長先生に謝りに行くんだもん」
「いや?たまたまだよ」
「たまたまでも凄いよ!あのうーちゃんだよ!全然話を聞かないうーちゃんがだよ!」
カメちゃんの言葉に重みを感じる…普段うーちゃんは何をやらかしてるんだろうと心配になった。
「…そうだ!」
カメちゃんがハッとした顔で
「ねぇ?すうちゃんにお願いがあるの」
「お願い?何?私でいいなら…」
「本当!ありがとう!あのね今後も相談に乗って欲しいの」
「え?相談?私で良いの?…でも私なんかで良いのかな?私じゃなくてもっと大人の人とか先生とかのほうが…」
そう言うとカメちゃんが首を振り
「自分の悩みは自分で出来るだけ本人や回りの人で解決しないといけないの…本当に分からない場合は大人の人にきいても良いけど…基本は自分で解決しないと駄目なの」
ああ、だからチュー君はクラスの皆に相談してたのか…成る程
「私で良いのかな?」
そう言うとカメちゃんが嬉しそうに
「大丈夫!すうちゃんだから出来ると思うの」
「私だから?」
「そう、でも嫌だったら断ってもいいよ」
カメちゃんの真っ直ぐな目を見て信じてもらえていると感じた。
「うん、私やってみたい!」
「!よかった!」
「って事は…すうのテーマは皆の相談係になんのか?」
いつの間にかうーちゃん居て
「うわ!びっくりしたー!帰ってたんなら声掛けてよびっくりするでしょ!」
「今戻ってきたんだよ」
「だったら帰ってきたぐらい言ってよ…あれ?でもだったら何で私達の話の内容知ってるの?」
「俺実は耳が良いんだよ!凄いだろ」
と長い耳を引っ張った。そういえばうーちゃんはウサギだった。…やっぱり耳が良いんだ…と思ってると
「それで?すうはそれに決めるのか?」
そう言われブンブンと首を振り
「え、そんなつもりは!」
慌てて言うとカメちゃんがパンと両手で叩き
「そうか!そうだよ!うーちゃんじゃないけどテーマにしてもいいと思うよ!」
カメちゃんは乗り気だ私は慌てて
「ちょっとまって!」
「テーマ皆の相談係嫌?」
「皆の相談係?そうじゃ無くて…なんか急に話が大きくなってて…」
「別にそんなに、かしこまらなくても大丈夫だぞ?」
「でも…成績になるって言ってたじゃん?」
「なるはなるけど、其処まで重要でも無いぞ?実際テーマ持ってないやつだっているし…それにテーマはなんだっていいし、飽きたら違うテーマにしてもいい」
あれ?結構なんでも良いみたいなんだろうか
「ちなみにカメちゃんのテーマって何?」
「私?実は私将来先生になりたいの、だから私のテーマは私が知ってる事を皆に伝えるにしてるの」
カメちゃんらしくて納得してると、うーちゃんが
「は!俺も今決めた!」
カメちゃんが呆れた顔で
「…一応聞くけど…何にしたのうーちゃん?」
「ふふふ!聞いて驚くなよ!俺のテーマは!ボールを上手く扱えるようになる!」
「え?カメちゃん…あれは…テーマになるの?」
「……。聞かないで」
カメちゃんが頭を抱えてる、逆にうーちゃんは胸を張り
「なる!」
自信満々に答えられて、カメちゃんと顔を見合わせてため息を着いた。
「あ、でもそれだとうーちゃん遊ぶ時間とか無くない?」
「それは大丈夫だ!俺なら出来ると信じてる!」
だったら…いつボールの練習するんだろう?
…まぁでもうーちゃんなら出来そうだと納得してるとカメちゃんが思い出した顔で
「あ!そうだ、すうちゃん…話は変わるんだけど…今日良かったら私の家に遊びに来ない?」
私は首を傾げて
「カメちゃん家に?」
「うん、お母さんが前くれたキノコのお礼がしたいから家に来て欲しいの」
「そんな!お礼だなんて!あんなの大したものじゃないし…」
「プンプン!大したものです!」
「うわ!」
帽子のキノコが怒ってポンポンと跳び跳ねる慌てて帽子を押さえているとカメちゃんが前のめりで
「そうだよ!大したものだよ!すうちゃん!あのキノコすっごく美味しくてお母さんどうしてもすうちゃんに会ってお礼がしたいって!」
喜んでくれたんだ…流石にそこまで言われたら断るのも変だし…それにカメちゃんのお母さんに会ってみたい
「うん!カメちゃん家に遊びに行きたい」
カメちゃんが嬉しそうに
「本当?よかったー嬉しい!」
喜ぶカメちゃんを見てると不意に私をジーと見てるうーちゃんと目が合った。何だろうと
「?どうかしたの、うーちゃん?」
聞くとうーちゃんは頭の後ろで手を組み
「別にー…」
と自分の席に座ってしまった。私がカメちゃんに
「どうしたんだろう?」
聞くとカメちゃんが
「さぁ?お腹空いたのかも?」
ああ、と時計を見ると確かにそろそろお昼に近い。
私はうーちゃんに話しかけようとするとドアからクマ先生がヌッと入ってきて
「ハイハイ皆さん席に着いて下さい授業を始めますよ」
私は慌てて自分の席に座った。

終了のチャイムがなり
「おや、もうこんな時間ですか、それでは今日の授業はこれ迄です。今日の授業が分かりにくかった人は職員室に居るので聞きに来てくださいね?それでは皆さんまた明日」
そう言いってクマ先生は手を振り教室を出て行ってしまった。とたんクラス中が
「ねぇ!今日は何して遊ぶ?」
「早く帰ろうぜ!」
「図書館行こうよ」
と皆思い思いの事をしてる
「クマ先生ー!待って!」
と教科書を持ってクマ先生の後を追う子と色々だ。
やっぱりこういうのは、どっちでも一緒なんだなと思っていると
「すうちゃん帰ろう!」
振り向くと手提げを持ったカメちゃんが居た私は慌ててランドセルに筆記用具やらノートをつめてると
「そんな急がなくても良いよ、私が急がしちゃったみたいだね、ごめん」
「ううん、大丈夫!私もカメちゃんのお母さんに会うの楽しみ」
「ふふふ!うん!」
すると教室に残っていた子が困った顔で
「カメちゃんちょっと良いかな?」
話しかけて来た。カメちゃんが首を傾げ
「なあに?どうしたの?」
「うんあのね、さっき授業で一個だけ分からなくて…聞いても良い?」
カメちゃんが私を見て
「すうちゃん、ちょっと待っててくれる?」
私は頷き
「私は大丈夫!まだ少しかかるから」
言うとカメちゃんは
「ごめんね」
と、その子の席に行った。私は急いで荷物をランドセルにしまってると
「あれ?カメは?」
うーちゃんがキョロキョロとカメちゃんを探してる
「カメちゃんは授業で分からない所が合った子の所に行ったよ?」
私の説明にうーちゃんは、またかと顔して
「カメも本当にお人好しだよなー」
と呆れ顔だ、私はふと
「そうだ、うーちゃんに聞きたい事があるんだけど…」
「…うん?何だ?勉強の事ならオレわからねーぞ?」
「大丈夫!うーちゃんだけには聞かないから!」
「…なんか…そう言われると…ムカつくんだが…あれ?俺…なんだかすうと一緒に走りたい気分になってきたような?」
うーちゃんの目が笑ってない…私は慌てて
「そ、そんな事より!聞きたい事があるって言ってるでしょ!」
必死に話を元に戻そうとすると
「オレに聞きたい事?って何だよ?」
不思議そうに首を傾げたうーちゃんに内心ホッとし
「うんあのね、カメちゃんのお母さんの事なんだけど…」
そう言うとうーちゃんは、またジーと私の顔を探るように見て
「カメの母さん…が、どしたんだ?…」
うーちゃんの様子が少しおかしいような気がしたけど私は
「私…大丈夫かなって思って…」
「…なにが?…」
私は下を向き
「ほら…私って…怪しいじゃん」
「怪しい?」
「だってそうでしょ?いきなり表れて…変なキノコ連れてるし…私だったら絶対近付かないよ」
それなのにカメちゃんは最初から優しくしてくれた。
「うーちゃんだって最初は私の事怪しんだのに」
そう言うとうーちゃんは気まずい顔で
「ヴ、あれは…悪かった…よ。すまん」
頭を下げて謝ってくれた。私は
「それはもういいんよ。うーちゃんの行動は真っ当な反応なんだから、でもカメちゃんは最初から私の事心配してくれた…それが嬉しかったから」
「…それで?」
「あの私…カメちゃんのお母さんに嫌われたくない…変な子だと思われたくないの…」
「はぁ?なんじゃそりゃ!」
呆れた顔で言われた
「!なんじゃそりゃじゃない!私真剣なの!うーちゃんカメちゃんのお母さんってどんな人!私みたいなのは嫌いじゃない?ねぇ!うーちゃん」
うーちゃんの服を掴み聞いてると後ろから
「ふふふ!大丈夫よすうちゃん」
カメちゃんが笑いばがら居た。
「お~、カメもう良いのか?」
私に揺さぶれながらうーちゃんが聞くとカメちゃんが頷き
「うん、もう大丈夫、でもうーちゃんそんなに揺さぶれて大丈夫なの?」
私は、ハッとうーちゃんを離すとうーちゃんが
「うえっぷ!もう大丈夫だ」
私は顔を真っ赤にしてうーちゃんを睨むと
「カメ、すうがウマ美さんの事が聞きたいらしいぞ?」
ウマ美さん?それがカメちゃんのお母さんの名前なだろうか?とカメちゃんを見るとカメちゃんは苦笑いをしながら
「すうちゃんが心配するような事は無いから安心して、心配なのはうちのお母さんの方かな?お母さんおっちょこちょいでせっかちな所があって…」
うーちゃんがうんうんと頷き
「あー確かにウマ美さんおっちょこちょいでせっかちだよなー、前お土産どうぞって袋だけ渡されたからなーあれはびっくりしたなー」
袋だけ?それは…おっちょこちょいでせっかちだ…成る程とカメちゃんを見ると顔を真っ赤にして
「あの時は本当にごめんね?本当にお母さんたら…」
「別に、後でカメが届けてくれたしオレ的には上手いお菓子が食えたし」
「ああー!そっか!そうだよね!すうちゃん!もしうちのお母さんが変な事しても絶対に気にしないで?」
カメちゃんの必死な顔に緊張していたのが落ち着いてホッとした。
「大丈夫だよ。でもよかった。私ね…カメちゃんのお母さんに変な子だと思われたく無かったの…だってカメちゃんとうーちゃんは私がこっちに来て出来た大事な友達…それだから私…」
そこまで言うとうーちゃんが
「うを!やめろ!なんか恥ずかしい!なんかむず痒い!なんだこれ!」
「うわ!うーちゃんそれは失礼じゃない!」
うーちゃんは自分の体をかきむしってるのを冷めた目で見てるとカメちゃんも嬉しそうに
「すうちゃんにそう言って貰えて凄く嬉しい…でもそんなに気を使わなくていいよ?ただ私がお母さんにすうちゃんを紹介したいの!私の大事なお友達だから」
「…うん…私もカメちゃんのお母さんにきちんと挨拶したい…友達だから…」
後ろで
「うおーかゆい!」
と叫んでる声がするけど無視して
「でも、私カメちゃんに色々してもらってるのに…」
「…友達って何ないとダメなのか?」
ようやくかゆみがおさまったのかうーちゃんが私に聞いてきた。するとカメちゃんが
「私すうちゃんに助けられてるよ?」
「嘘!私何もして無い…」
「してるよ?さっき私将来学校の先生になりたいって言ってたでしょ?」
「あ、うん」
「私ずっと悩んでたの…誰がに教えるって大変で…だけど、どうしたらいいのかわからなくて…」
「そうなの?」
あんなに分かりやすいのに?とカメちゃんを見るとカメちゃんはうーちゃんを見て
「どう伝えたら理解してもらえるのか…いくら教えても「わかんねー」で…だんだん私のやり方がダメなんだろうか?とか悩んでたんだけど…違ったのすうちゃんと勉強した時に気がついたの、相手もちゃんとやる気が無いと理解して貰えない…私一人で頑張ってもダメ、一緒に学ぼうとする人が一緒じゃなきゃダメなんだって」
カメちゃんの言葉にうーちゃんを見ると口笛を吹き横を見てた。
私は確信した犯人はこいつだ。
うーちゃんは咳払いをして
「あー、ゴホン!カメ…ウマ美さんをあんまり待たせると遅いって迎えに来るぞ?」
うーちゃんの言葉にカメちゃんがハッとして
「それはまずい…すうちゃん!私のお家こっち!」
慌てて私の手を握った。私もうんと頷きうーちゃんを振り向くと
「ホラ!早く行こうぜ!」
反対の手をうーちゃんが握り3人で走り出した。