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せんすい島とすうちゃん

「ねぇねぇ?……は大きくなったらなんになりたい?」
「大きくなったら?うーん」
悩んでると
「僕はねー大きくなったらお店をやるんだ!」
「お店?」
「うん!」
「いいな…もう夢があるなんて…私はまだ決められない…あっちかこっちか…」
「そっか、もし…あっちかこっちか決まったら僕にも教えてくれる?」
「…うん分かった。」
「絶対だよ?…勝手に居なくならないでね…?」
「…うん、ちゃんと、ちゃんと言うから」

目を醒ますと目の前にキノコ
「あ!すうちゃんおはよう!」
「起きたー!」
「おはようー!」
「……。おはよう…」
朝からキノコのテンションに、げんなりしながら、ふと何か夢を見てた様な気がしたんだけど…目の前のキノコのせいで忘れてしまった。
とても大事だった様な…胸がモヤモヤする…でもどうしても思い出せない…
仕方ないと起き上がり服を着替えようと足元を見ると畳まれた服の上に赤い本が置いてある…
なんだろうと手に取って本をめくっても真っ白で何も書いてない…。
「もしかして…これ日記?」
なんでこんな物が?私に日記を書く習慣なんてないし?それにこれ表紙に丸いくぼみがある…なんだろう?
「すうちゃん、にっきって何?」
「なんだろう!にっきだって!」
「ハッ!これは…もしかして…」
キノコの神妙な声に
「え!何か心当たりがあるの!」
ビックリして振り返ると
「…ゴクリ、これも…もしかして食べ物なんじゃあ…」
「これも食べ物…」
「美味しくなさそう!」
思わず持っていた日記を落としそうになった日記を持ち直して
「うわ!なんだビックリして損した…日記は食べ物じゃあないから」
「食べ物じゃあ無い!」
「何だー良かったー!」
「うん!僕達の勝ちだねー!」
食べ物じゃ無いと分かるやいなやキノコ達がもの珍しそうに
「何だろうね?これ」
「分かんないけど僕達の方が美味しそうだよね!」
「うん!うん!勝った!」
騒いでるキノコに私はため息をつきながら
「はぁ…日記っていうのはね、その日にあった事を記す物だよ」
「その日にあった事?」
「成る程、あ!すうちゃん僕達美味しいキノコなんだけど…日記に書く?」
「そうそう!美味しいよ!一回口に入れてみようよ!」
「隠してたけど仕方無い…すうちゃんなら日記に書いて良いよ!」
「……。なんで?」
まだ起きて半日も経って無いのに…もう日記を書けと?
しかも私にキノコを食べさそうとしてるのが見え見えで呆れて物が言えない…
はぁ…日記をテーブルの上に置いて
「…なんか疲れた…顔洗ってくるね」
「うん分かった!」
「いってらしゃいー!」
「早く帰ってきてね!」
「顔洗ってくるだけだから!」
私は顔を洗って台所に行って冷蔵庫から牛乳の飴を取り出しコップの中にいれてキノコの棚から赤い実が入ったカゴをテーブルに置いて
「よし!いただきます!」
手を合わせて赤い実に一口齧りついた。
「モグモグ!あ、これはドーナツだ!」
「すうちゃん美味しい?」
「うん!」
キノコ達とお喋りしながら朝御飯を食べていると外から
「うわ!何でここら辺白いんだ?」
「雪?違うよね?」
「…これは聞いた方が早いだろう!すう!学校行こうぜ!」
カメちゃんとうーちゃんの声だ
「え!もうそんな時間?」
辺りを見たけどこの家時計が無いんだった。
「時計無いの不便だな…」
私は急いで残っていたドーナツを口に入れて牛乳で流し込んだ。
そしてテーブルの上に置いてあったランドセルを急いで背負い家を出た。
あっ!とまたドアを開けて
「昨日みたいな事は絶対にしないでよ!分かった?」
私が言うとキノコ達は
「うんうん!大丈夫大丈夫ー!」
「しないよー」
「たぶん!」
…本当に大丈夫だろうか?と考えがよぎったが、うーちゃんとカメちゃんも来てるし…
「はぁ、行ってくるね」
ドアを閉めて
「カメちゃんうーちゃん、おはよう」
返すとうーちゃんが
「なんだ?どうした?なんか元気無いな?体調悪いのか?」
心配されてしまった。カメちゃんもオロオロと
「え!大丈夫?今日お休みする?私ちょっとお母さん呼んで来る!」
走っていきそうなカメちゃんを慌て止めながら
「カメちゃん!私は元気だから!2人共落ち着いて!」
私は仕方無くカメちゃんとうーちゃんに昨日あった事を説明すると2人は笑いながら
「アハハ!なんだそりゃ!だからここら辺が白いのか!って事はこれ塩なのか!うわ!にが!しょっぱい!」
うーちゃんはしゃがみこんで塩を摘まんで食べた。
「成る程これが海の塩かぁ…うまくないなーがっかりだー」
なにを期待してたんだろうか…
「あ!本当だ海の水はしょっぱいって聞いてたけど苦味もあるんだね、なんでなんだろう不思議」
2人とも海の塩をじっと見てるけど
「2人も海に行った事無いの?」
聞くとうーちゃんが
「無いな。聞いた話ぐらいだな、スゲーでかくて水がしょっぱいってぐらいしか知らねー」
スゲーでかいって凄いアバウトな情報だなとカメちゃんを見ると
「私もまだ海を見た事はないけどお母さんは昔行った事があるって…」
「へぇーウマ美さん海見た事あるんだーいいなー俺も海見てみてー」
「すうちゃんは海見た事ある?」
「私も無いの…でも海の水は昨日嫌って程見たよ…」
「それは…あまり羨ましくないな」
「私も…そう思ったよ」
するとカメちゃんが手をポンと叩き
「あ!でも今度の遠足確か海に行くってクマ先生が言ってたような?」
「え!そうなのか!やったぜ!初めての海!」
「もし本当に海だったら…すうちゃん一緒のグループになってくれる?」
「うん!私もカメちゃんとうーちゃんと一緒だと嬉しい!」
「え!俺も一緒なのか?」
「うーちゃんは他の子達と一緒のグループがいい?」
「…仕方無ねーから一緒のグループになってやっても良いけど!ま、でも本当遠足楽しみだよなー!」
「うん!楽しみ、ね?カメちゃん」
「ふふふ、うん」
「あーでも遠足と言えばお菓子だよね」
カメちゃんとお菓子の話で盛り上がっていると
「…ところで学校に早く行かないと遅刻になるぞ?」
うーちゃんの言葉に私はカメちゃんと顔を見合せ
「遅刻はまずいね」
「うん、でもそんなに遅くないと思うけど?」
「そうなの?キノコのお家、時計が無いから時間が分かんないんだよね」
「それは困るね、でもだったら大変じゃないの?」
「そこまでかな?何故かキノコ達が朝起きる時間とか起こしてくれるから時計が無くてもやっていけるんだよね」
「キノコさん達何でも出来るだんね」
カメちゃんとしゃべっていると、いきなりうーちゃんに手を握られ私は慌てカメちゃんを見るとカメちゃんの手もうーちゃんに握られてる…そしてカメちゃんの顔を見ると目が死んでる…私と目が合うとカメちゃんが力なく笑いながら首を振った。
これは…諦めようと目が言ってる…私は嫌だと首を振ったけど…次の瞬間物凄い力で引っ張られた。
「それじゃ!全速力で行くか!」
「イヤー!」
「!」
それが最後の言葉だった。