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せんすい島とすうちゃん

帰り道うーちゃんと2人歩いていると不意にうーちゃんが
「今日はありがとうな」
うーちゃんの顔を見て
「え?何が?どうしたの?」
うーちゃんがいぶかしげな顔で
「気付かなかったのか?」
「え?何に…なんかあった?」
「嘘だろ?まじか…はぁ…」
うーちゃんは私の顔を見てため息をついた。その顔にムッとして
「もう!何なの!ありがとうって言ったり!気付くって!ちゃんとはっきり言ってよ!訳が分かんないじゃないの!」
怒りながら聞くと
「えー嘘だろ?何で気がつかないんだよ!普通は気付くだろう!カメとウマ美さんは本当の親子じゃないって…」
…確かに!ウマ美さんは馬!馬から亀は産まれない!口に手を当ててビックリしてると
「…ハッ!」
「それも今気がついたのかよ…どうなってんだよ…すうの頭は」
そう言われても、こっちの世界は私の居た世界と全然違うし…そもそもキノコやカメやウサギは喋んないし、だからそういうモノだと受け入れていただけなのにこの言われよう!なんと返そうと考えていると
「まぁ…すうがカメとウマ美さんの事を本当の親子と思ってたって事は仕方ないよな…あんなに仲が良いんだから、それなら気付くわけ無いよな?俺が余計な事言ったわごめん」
うーちゃんが頭を下げて謝ってくれたけど…罪悪感が…
「えっと…そのうーちゃん…違うの」
「え?何が違うんだ?」
「私の居た世界じゃ…カメもウサギも教室のお友達も喋らないの…こっちの世界は私の世界とは丸で違うの…だから私こっちの世界の事はこう言うモノだと思ってて…何が違うのか当たり前なのかが良く分からないの…それでカメちゃんがお母さんと紹介されたから、そうなんだと思って…」
「ああ…成る程だからかーおかしいと思ったんだよ…謝って損した。」
「うう、何か申し訳ない色々勘違いがあったみたいで…」
「まぁ、でもそれでいいんじゃね?勘違いでもすうは2人の事本当の親子に見えてんだし」
「だってあんなにカメちゃんが嬉しそうにウマ美さんの事言うんだもん!そうって思うよ!」
「だよなー!そっか!うんうん!」
嬉しそうなうーちゃんを見て
「どうしたの?」
聞くと首を横に振り
「何でもねーよ!ところで今度は俺の家に来いよ!俺のかーさん達を紹介するぞ!」
「うーちゃん家?いいよ!行きたい!カメちゃんも一緒がいいんだけどいい?」
「いいぜー!どうせカメも来るって言うと思うし!」
「やった!楽しみー!」
今度はうーちゃん家かぁ楽しみだと思ってると急に先を歩き出したうーちゃんが
「…俺はすうの事がちょっと羨ましい…」
「何で?」
「色々だよチュウの相談を解決したりしてさースゲーなって」
「あれは小さい頃の話をしただけだよ」
「それでもスゲーよ!今度さぁ…」
そう、あの頃に読んだ絵本は私のお気に入りになり図書館に返す時に大泣きし結局図書館の帰りに本屋さんでその絵本を買ったのよとお母さんが言ってたのを思い出した。
お母さん…
そう言えば…お父さんお母さん元気かな?
私が居なくなってきっと2人共心配してるだろうな…せめて
「どうしたんだ?すう?疲れたのか?」
いつの間にかうーちゃんが私の顔を覗き込み心配そうに聞いてきた。
私は焦りながら
「え!何でもないよ!それより何の話だっけ!」
うーちゃんが首を捻り
「俺家あっちだから、すう家ちゃんと分かるのかって聞いたんだけど大丈夫か?俺家迄送って行こうか?」
余計な心配をさせてしまった様で
「大丈夫だよ!1人でもちゃんと帰れるよ!」
「本当か?」
疑われてる…すると帽子のキノコが
「大丈夫だよ!キノコがついてるから!」
キノコの声に私もうーちゃんもびっくりした。
「うわ!びっくりした!そうだ居たんだっけ!」
「今までキノコの存在忘れてたなー!」
うーちゃんの言う通り普段うるさいぐらい喋るのに何で今の今まで喋らなかったのか不思議に思って
「何で今まで喋らなかったの?」
聞くとキノコは
「うーん?寝てた?」
「すげー!キノコって寝るんだな!」
キノコは寝ないと思うけど…いやでも夜中喋らないのは寝てるのかな?分かんない…
私は気を取り直して
「ほら、キノコもいるし大丈夫だよ!」
「そっかそうだな、すうだけだと心配だけどキノコが居るなら大丈夫だな!俺帰るわ!それじゃまた明日な!」
「うん!また明日ね!うーちゃん!」
「バイバイキノコ!」
うーちゃんは手を振りあっという間に行ってしまった。
一人になり暮れていく夕日を見てポツリと
「お父さんとお母さん元気かな?」
つぶやくと
「寂しい?キノコ食べる?」
キノコの言葉に呆れながら
「何でキノコを食べさせようとするの…まったく早くほら帰ろう?」
「だって、すうちゃん元気なさそうだったから!きっとキノコを食べれば元気一杯!」
そんな訳無いだろうと思ったけどキノコが私の事を心配してくれた事が嬉しかったから
「もう大丈夫!キノコ食べなくても私にはキノコ達が居るもんね!」
「うん、帰ろう!」
キノコとお喋りしながら歩いていると遠くにキノコのお家が見えてきた。
「あれ?」
「うん?どうしたの?すうちゃん?」
目の錯覚だろうか?
キノコのお家がポヨンポヨンと縦に横に揺れてる様な気がする…
いやでも私が知らないだけでいつも揺れてるとか?
そんな馬鹿な…でもキノコのお家は生きてるから動く事もあるのか?
うーんと考えてると
「あれれ?なんでキノコのお家あんなに揺れてるのかな?皆どうしたんだろう?」
と帽子のキノコが不思議そうに言った。
「やっぱり!あれおかしいんだ?」
「うん、どうしたんだろうね不思議だなー」
私は帽子のキノコを見ながら、これも十分不思議だけどなと考えてるとキノコが急に
「すうちゃん!早く帰ろう!早く早く!」
「う、うん!分かったよ!」
言われ私は急いで走った。
そしてキノコのお家のドアを開けて大きな声で
「皆!大丈夫!…うわ!」
開けるやいな大量の水が押し寄せて来た。
びっくりしてドアを閉めると中から
「お帰りー!うわー!」
「帰ってきたー!楽しいー!」
「あ!すうちゃん!ドア閉めてー!」
何で家から水が?
私は恐る恐る窓から家の中を覗くと部屋の中に水が…
「えー!何これ!」
叫んでしまった…
一体何でこんな事に?
お家の中に入りたいんだけど…
ドアを開けると大量の水が押し寄せてくるし…どうしょう!と考えて窓をコンコンと叩くと、窓が開いて
「すうちゃんどうしたの?なんでお家に入ってこないの?」
と言われ
「どうしたの?じゃないよ!こんなんじゃ入れないよ!一体何があったの?」
「大丈夫だよー」
そう言われ取り敢えず窓を乗り越えてお家の中に入ろうとすると水の中からニョキニョキとキノコが生えたのでそれを足場にしてキノコの上に立って
「どっこいしょ、それで?」
と聞くとキノコ達が
「お帰りー!すうちゃん!あのね!聞いて聞いて!実はね!すうちゃんのビーカーたおしちゃったの!」
ビーカー?何の事だっけ?と考えてると帽子だったキノコがいつの間にかベットに戻っていた。
「忘れちゃったの?すうちゃん!あれだよ!あれ!」
声の方を見ると棚を見て思い出した!
そうだ!確か海の水が入ったビーカーを貰ったけど何に使うのか分からないから…取り敢えず棚に置いたはずのビーカーが無い…
じゃあこれは…海の水って事?
いやいや?問題なのは…この量の海水はどこから?
ビーカーからこぼれたにしては水の量が多すぎる
「すうちゃん!すうちゃん!ビーカーを早く見つけて!このままじゃ!お家が大変な事になっちゃう!」
大変な事って何!と思ったけどこれ以上は困る!
あわててビーカーを探そうと水の中に手を入れると
「!うわ!」
何か生き物を触った感触がした。
あわてて手を出して部屋の水面を見ると魚が泳いでる!
「お魚が居る!何で!」
「なんでだろうー?海の水だからー?」
「それより早くビーカーを見つけないとー!」
「だんだん水の量がー!おぼれるー!」
そうキノコ達に言われ私は必死にビーカーを探した。
「!」
手探りで必死に探してると手にビーカーらしきモノが当たった。
「これだ!」
取り出して見るとやっぱりビーカーだ…ホッとしてビーカーを見るとビーカーには海水が入ってる。
私は試しにビーカーを横にして水をこぼして見た。
するとビーカーから海水が流れた…でもビーカーの海水の量が減らない…いくらやってもビーカーの海水は変わらない不思議に思ってると
「すうちゃん!すうちゃん!ソレを元の所に戻して!キノコこのままだと大変!」
そう言われ、そうだったと
「あ!ごめんね!」
棚に戻すと
「ふぅ!良かったよー!」
「危なかったー!」
「でも面白かったねー!」
キノコ達の様子に
「もう!楽しかったじゃないよ!これどうすんの!」
すると、どこからともなく
「大丈夫だよキノコに任して!」
声がしたかと思ったらお家のキノコが
「ゴクゴク!ゴックン!」
大量の海の水を飲み始めた。そして
「プハー!あー!しょっぱい!」
さっきまでの海水が嘘の様に綺麗サッパリ無くなってた。
「うわー!凄い!…って海の水飲んだの?」
聞くと
「うん、飲んだ!少しシワシワー!」
「?」
「でも大丈夫!」
そう言うとキノコのお家が縦に横に動いて外に向かってぴゅー!と塩を吐き出した。
窓から外を見るとお家の回りが塩で真っ白でまるで雪のようだ
「うわー!家の外が真っ白で綺麗!」
感動してると後ろから
「ぴちぴち!」
と元気良く跳ねてるお魚が…何匹も
「うわ!お魚が…あれって…食べれるのかな?」
「うーん分かんない!」
そうだよね…あれって…そもそもお魚なんだろうか?姿形はお魚だけど…あれはまるでガラスで作られてるように見えるんだけど…それに色も赤い色や青い色緑色と日に当たるととても綺麗…
それらが部屋の中で跳ねてる…
うーん?綺麗なんだけど…あれ固いんだろうか?
恐る恐るガラスで出来たお魚を触ると固い!固いのに柔らかい!
何だこれ!
面白い!
そして何だか甘い匂いがする?
これは飴の匂い…?
もしかしてこのお魚は飴で出来てるんじゃ?舐めてみようか…ちょっとだけ!
ピチピチしてる赤いお魚をつかんで試しに舐めて見た。
「!甘い!美味しい!」
飴だこれ…しかもリンゴだ。
こっちの青いお魚はソーダの味がする…
凄い!と感動して
「ねぇ!このお魚飼いたい!んだけど…大きい水槽とか無いかな?」
言うとキノコが
「うん、いいよー!ホイ!」
そう言うとキノコの頭の部分が取れて逆さになり金魚鉢の様になった。
私は棚に置かれて居たビーカーの海水を金魚鉢の中に注ぎ、そしてそっとお魚達を金魚鉢ならぬキノコ鉢に入れるとお魚は嬉しそうに泳ぎだした。
「ところで…何でこんな事になったの?」
聞くとキノコ達が一斉に反対を向いた。
「…。」
私は手を腰に当てて
「何で?こんな事になったの?理由をちゃんと聞かせて!」
キノコ達がもぞもぞと
「…すうちゃん学校に行っちゃって暇だねーって言ってたらいきなり…誰が一番大きいキノコになれるのかって話になって…それから競争になって…」
「それで?」
「そしたらキノコお部屋いっぱい大きくなって…」
「それで棚のビーカーを倒しちゃったの?」
「そうなの!すうちゃんごめんなさい!」
部屋中からキノコのごめんなさいの合唱で
「いいよ。謝ってくれたしこんな綺麗なお魚を見れたしね」
「やったー!」
「よかったーおこられない!」
「じゃあ次の…」
「次は無しだよ!」
キノコ達はしょんぼりと
「…はーい」
「ダメかー!」
「次は優勝したかったー!」
…え、優勝したキノコがいたんだ…どれだろうと思ったけど口には出さなかった。
「はぁ…何だか疲れたぁ」
ベットに倒れゴロンと仰向けになり、ふとさっきまでの寂しさが消えてる事に気が付いた。
そっと手を胸に当てて目をつぶってると
「すうちゃんお腹空いた?」
咄嗟に何か言い返そうと思ったけど
「ぐー」
とお腹が鳴って
「…うん、お腹空いた」
とたん
「キノコ…」
「キノコは食べないよ!」
キノコ達が何か言う前に言うとキノコ達が
「ブウーブー!」
と騒ぎ出した。
「だって、しょっぱそうだもん!」
そう言うとキノコ達が黙った…黙ったって事は…そう言う事なんだろう…でも少し…しょっぱいキノコってどんな味なんだろうって思った事は内緒だ。
よいしょっとベットから起きてテーブルの上にある赤い実を見て思わずため息が出た。
「…はぁ」
食べる度に色々な味だけど…なんだか飽きて来たんだよね…パンばかりじゃ
トントン
ドアがノックされた。
「すうちゃん誰か来たよー」
「うん、はーい!」
とドアを開けると虎のおばさんがニコニコと
「こんばんはすうちゃん、キノコを分けて下さる?」
虎のおばさんはカゴを私に差し出した。私は
「ちょっと待ってて下さい」
とベットのキノコに
「海水に浸かって無いキノコはどれ?」
すると壁のキノコが
「僕達は海水に浸かって無いよー」
私は壁に生えてるキノコを抜くと
「キャー!」
「抜かれたー!」
と騒いでいるキノコをカゴに入れて虎のおばさんに渡すと、おばさんは嬉しそうにもう一つのカゴから鍋を取り出して
「このキノコ本当に美味しいのよね、ありがとうすうちゃん、これ良かったら使ってちょうだい」
はいっと渡された鍋を見て何で鍋?と思ったけど、まぁいいかと
「ありがとうございます。」
お礼を言うと虎のおばさんは
「こちらこそ、こんなに一杯キノコをありがとうね、それじゃまたね」
と手を振って帰って行った。
虎のおばさんを見送って家に入り鍋をテーブルの上に置くとキノコ達が
「すうちゃんそれ何?」
「食べるの?」
「美味しくなさそう!」
「これは食べ物じゃないよ、これは鍋って言って食べ物を調理したり作った食べ物を中に入れておくんだよ」
試しに蓋を開けてみるけど何も入ってない…
「空の鍋貰ってもー!…あーお母さんのシチュー食べたいよー」
ガバッとテーブルに顔を伏せ…もういい加減お腹空いたし赤い実でも食べるかーと顔を上げると鍋からクツクツと音がして湯気が出てる?
それに凄くいい匂いがする!
鼻をクンクンとするとこれは!
シチューの匂いだ!
慌てて鍋の蓋を取ろうと触ると
「あつ!」
まるでさっきまで火にかかっていたのかのような熱さ…
私は長袖を使って蓋を開けるとそこには熱々のシチューが入ってった。
「?さっきまで何も入って無かったのに何で?…でも美味しそう」
お腹が又ぐーと鳴った。
私は急いでお皿とスプーンを用意して鍋を前にしてハッと気が付いた。
「あー!シチューをすくうのが無い!」
ここまで用意いしたのに!
スプーンですくうしかない?すると
「じゃじゃーん!私の番ー」
とテーブルから生えたピンクのキノコがお玉になった。
「うわ!凄い!でも大丈夫なの?」
聞くとキノコが
「大丈夫ー!シチューすくっても平気だよー!それに…すくった後!なんとキノコも食べれる!一石二鳥!」
「よ!天才ー!」
「天才ー!」
「ふふふ!完璧!」
「……」
それを黙って聞きながらお玉を持ってシチューをお皿に一杯入れて赤い実が入ったカゴを置いて手を合わせ
「いただきます。」
一口食べた。
「!これお母さんのシチュー味がする!美味しい!」
久しぶりの温かい食べ物に心も温かかった。「ふぅー、もうお腹一杯!ごちそうさまでした!よし!」
そして台所で後片付けをしてると
「すうちゃんーお風呂の用意出来たよー!」
「はーい!後もちょっとー…これで最後!」
綺麗に洗ったお玉を片付けて
パタパタと台所を後にした。
「あれ?私何で洗われて?あれ?あれ?」
台所から声がしたけど誰も喋らなかった。

「あー!お風呂気持ち良かったー!」
と台所に行き冷蔵庫を開けて白い飴を取り出してコップの中にポチャンと入れると液体になった。
それを飲みほし
「プハー!やっぱりお風呂上がりは牛乳だよね!」
そうなのだ、こっちの牛乳は何故か飴玉の形をしていて、それをコップに入れると液体になる不思議なものだった。
ま、でも牛乳には間違いないし、これはこれで面白いし気に入ってる
内緒の話実は私牛乳がちょっと苦手だったけど…こっちに来て牛乳が大好きになったんだよねこの飴玉のおかげで、触ると固いのにコップににいれると液体になるのが本当に不思議で面白いんだよねー
それにと冷蔵庫を開けるとまだまだ沢山の飴玉が…赤、青、黄色、ピンク、橙、茶色、白は牛乳なんだけどまだ試して無い色があるんだよね
これはどんな味がするんだろう?と黄色の飴玉を取ると
「すうちゃん!もう歯磨きする時間だよ!もう甘いのはダメ!」
キノコの冷蔵庫言われ黄色の飴玉をしぶしぶ冷蔵庫の中に戻して
「わかってるよー」
冷蔵庫のドアを閉めて洗面所で歯磨きをしてベットに潜り込み目をつぶると
「おやすみなさい今日、楽しい明日のためにいい夢を」
キノコが歌ってる…
「おやすみなさい」

「おやすみなさい…すうちゃん」