神谷美恵子『生きがいについて』
のっけから長文の引用で恐縮だが、『生きがいについて』は、非常に印象的な書き出しではじめられている。
この、冒頭2段落目の問いかけこそが、本書をとおして検討される課題である。とはいえ、本書はこの問いに明確な答えを差し出すものではない。そうした知識人らしい「押しつけがましさ」を著者は丁寧に退け、つぎのように述べる。「ただこの生きがいという、つかみどころのないような問題を、いろいろな角度から眺めてみて、少しでも事の真相に近づきたいとねがうのみである」(8)。いろいろな角度、す