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ヤマアラシのジレンマ

わたしが人と関わる事が恐ろしくなってしまったのはちょうど小6から中学へ上がる頃

わたしは真面目な長女だったので毎日出された宿題なんかも、わからないことをわからないままで置いておけず、必ず父か母に見てもらい教えてもらっていた
そんな時、中学に入ると勉強が難しくなるからもう教えられなくなると言われたのだ

それは困った。
わからないところがわからないままになってしまう…
困る困る…

そんな時、友だちが中学から塾に行くために入塾テストを受けたというのを聞いた
なるほどそういう手があったか

わたしは早速両親に塾へ行きたい事を申し出た
これが全てを終わらせた


母は子供の願うこと全てを叶えてあげたかったし、それが親の勤めだと考えていた
父はそんな金銭的な余裕はないと腹を立てた

わたしは小学校まで習っていた水泳とそろばんをやめて塾に行くのだからそんなに変わらないと考えていたし、勉強のために塾へ行くのは悪いことではないと考えていたけどそうでもなかったのかもしれない

結局、わたしは塾に行かせてもらうことができたのだが
以降父と母が言葉を交わす事は無くなってしまった

わたしが願ったから
両親が不仲になり戻らぬ溝を作ってしまった

この出来事はわたしの心に強い衝撃を与えた
もう、ベランダで仲良く遠くの景色を見る父と母の並ぶ姿を見る事も
仕事へ行く父を見送る行ってらっしゃいのキスも
父の冗談に笑う母も
全部全部なくなってしまった、全部

わたしの投げた小石だと思っていた願いは
水面に波を作って、大きな津波になって帰ってきてしまった
全てを攫っていってしまった…

その日からわたしは今日まで
ずっと自分を責めたし、家族に懺悔しながら生きてきた

特に妹たちには申し訳が立たなかった
1番下の妹はようやく小学校にあがる年だった
なのにこんなに冷たい家に、わたしが作り替えてしまったのだから

もともと引っ込み思案で大人しくい性格だったわたしは、これを機にさらに自分の中へ引きこもることになった
わたしが触れるもの関わるもの、全てを粉々にするんじゃないかと気が気じゃなかった
もう誰かをこれ以上傷つけるのは、人殺しをするくらい
わたしには恐ろしいことだった
ひとりぼっちの方がどんなに心穏やかでいられただろう


大人になっても鬱と診断された後、薬を飲み続けてても一向に良くならないわたしは
カウンセリングを受けてみた

カウンセリングは鬱の根本原因を見つけて、それと向き合い緩和していく
自分の心の動きに気がついて、どうしてそう思うに至ったかを丁寧に考えていく
そんな作業だったように思う
担当してくれたカウンセラーは若い先生だったが
やはりそこは話を聞くプロであると思わされた

わたしが鬱になったのは30代手前のバリバリ仕事が楽しい時期だったけど
カウンセラーと話をしているうちに
鬱の根本原因、鬱になるような思考回路に陥ったのが上記に書いた出来事がきっかけだろうと言うことに考えが至った

メンタルヘルスに不調をきたす人の思考回路、ものの考え方の癖は子どものころに出会った出来事が大きく関係しているようで
わたしの場合、何かを願った(塾へ行きたい)ことで罰(両親の不仲)がもたらされた
だからわたしはずっとわたしを許さなかったし、少しでもわたしが関わったことで起きる悪いことは全部わたしのせいだと考えるようになっていた

カウンセラーと話しているうちに、わたしの中で体中トゲだらけの女の子が顔を覆って泣いているのが見えた
あぁ、これはあの時のわたしだ
わたしが絶対に許さなかったわたしが、嫌なことがあるたびに全部の罪を背負い体から棘が生えて
何にも触れれず、ひとりぼっちで泣いていた
暗くて冷たくて寒そうだった

誰にも近づくことができなくて、寒くて寂しそうに震えていた
わたしは勝手に、自分をヤマアラシにしていたのだ
かわいそうに、ごめんね
わたしは彼女を優しく抱きしめるつもりでそう言った

これは比喩ではなくて、カウンセラーとのやり取りで、実際そう言う子が見えると言う事を伝え
じゃあその子に今なんて声をかけますか?というカウンセラーの質問から出てきた答えである

そうして小さいわたしに謝って抱きしめたとき
少し気持ちが軽くなっていることに気がついた
自分でひとりぼっちになったのに
やっぱり人の子、寂しかったんだね


こんは事を改めて書いてみたのは
昨日SNSで知っている作家さまに会ってお話をしてきたから
作家さまとはお互いをフォローし合っていて、全く知らない仲じゃないしこれからもぜひ仲良くしていただきたいと思っている
そしてそう思えば思うほど、わたしは顔面を熱くして体中に汗をかき、しどろもどろにどもりながらお話をすることになった
コミュ障のお手本みたいな姿である

そして帰宅をすればどっと疲れて動けなくなった
でも、楽しかった
お会いできてお話できて本当に良かった

わたしはまだまだ絶賛ヤマアラシ中だし
父と母を不仲にした事実は変わらないし
他人と話すのはめちゃくちゃ疲れる
相手を傷つけるのがこわくて何を話してどう関わればいいのかまだわからない

それでも自分の心の動きに敏感になって
それを冷静に捉えられる
丁寧に扱えるようになりたいってそう思った

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