見出し画像

愛の化膿

愛された時にきっと思い出す愛された日々。泣きながら目覚める朝に、カサブタにならずに膿になる心の傷。会いたい時に、伝えたい時に、もう君がいない朝と、たまらない通知に唖然とするこの心は化膿して行くばかり。好きって何?と呟く女子大生、暴力性に惹かれる白痴な女。色気にホイホイやられる男学生。貝殻が輝く朝の海。今日も空はただ高い。そしてあの空には自由に飛ぶ鳥達。泳ぐ雲。空気の読めない太陽。人達は歩みを進める。自由な天気、鳥、知らないふりをしているように。

人はみな心に傷を負っている。それなのに街の人は皆まるで平気そうに歩く。僕もきっと平気だと思われている。この化膿した心にバイ菌が侵入しないように今日の夜は絆創膏を貼る。僕は使った絆創膏は捨てるし、また使おうなんて思わない。いつしか投げた石は宇宙へ飛び立つ。捨てた絆創膏はリサイクルされてまた使われてまた捨てられる。孤独なんて選ぶなよ。僕らは絆創膏じゃないんだ。今日生きていく日々に名前があるなら…なんて考えてみたけど、僕なんかに命名権はない。月は輝いて、僕は繁華街に溶け込む。ネオン街は僕の視界の色を決めつける。この街には星が降らない。酒の匂い。溢れる欲望。浮かぶ愚痴。

耳を澄まして聴く川の声。あの男はきっといつか忘れる誰かの声を思い出そうとしている。あの子は取っかえ引っ変え彼氏を変える。心に穴が空いているからきっと精一杯。恋愛なんて必要ないはずだ。僕らが望んだのはこんなじゃないはずなんだ。海や空が流れている。そんな景色と忘れることの無い香りや思い出なんだろう。好きというこの感情は刷り込まれた本能で、感じるのは正常で、僕はそれは少し恐ろしいと思う。結局は誰でも愛せるこの身体に価値を全く感じないのです。君が好きと何人に言う、何人に言われる?それは何回繰り返す?いつも薄ら汚れている人間は、必死に美化する。必死に美化するほどよく見られたいのか、僕はそれを愚かだと思う。そして僕自身愚かであり、塞ぎ込んでいるだけ。今日も逃げている。独りで星を数える。10個でやめた。この街では良く星が降る。

燃える空と、郷愁に浸る思い出達。僕はオレンジ色に手を伸ばして、手のひらが少しヒリヒリして行く感覚を忘れないように願った。夏が終わったら電話して。秋が始まったら会いに行くよ。冬になったら僕らは終わるの。膿は酷くなるばかり。このずるい心を持ったまま、人は誰かに愛していると言うんだ。だから化膿していく。腐っていく。僕らはいつか死んでしまう。死ぬから僕らは腐ってく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?