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今日は特別な日にしようよ。

イルミネーションが街を彩る。それよりも眩しい愛と、これから芽生える恋が、積もった雪を溶かしている。ざくざくと音を立てながら、積もった雪に僕の足跡が着く。その足跡を後ろから、1人、2人と踏み潰していく。そして僕も、誰かの足跡を踏みしめる。人の流れをよく感じる。そして僕もこの流れの1つなのだ。

窓辺に飾っている小さなメリーゴーランドや、特設のスケートリンク。サイレントナイトとは程遠い街の賑わいと、弾ける笑顔と、魔法がかかったように頬を赤らめて、ただ1人を見つめる少女の瞳。花束を背中に隠す青年。ごめんねを言おうとしている口や、大好きを言う口の形。降り積っているのは雪だけではなく、人の思いもしっとりと積もっている。そしてそれはきっと、時間をかけて溶けていく。特別な日にしようだとか、今日は愛している人と過ごさないといけないとかいう義務感や、そんな気持ちが渦巻いている。イルミネーションは、そんな降り積った雪や気持ちを映し出している。

微妙な距離感を歩く2人は、繋ぎたい手を泳がせている。会話はぎこちない。オレンジ色に光る街が、少女をいつもより特別に照らしている。クリスマスが無ければきっとただの一日だ。そして、クリスマスが無くても、あの2人にとっては特別なんだろうな。そんな事を降りしきる雪の中考えていた。イルミネーションが包んだ優しい色に照らされる街と、足跡を踏みしめ続ける人の流れと、特別な日になったあの2人。クリスマスは幸せな日。誰かにとっては苦しい日。決断の日。特別でもない日。ただ言えるのは、皆が特別にしようと躍起になる日。そして僕は、そんな日を、格段に普通に過ごしたい。それなのにこの街は、異様な程に美しい。きっと美しくしてるのは、この日を特別にしようとした決断や、気持ちが降りしきる雪のように積もっているからだ。

会いたくて会えない夜。思いを空に広げる。雪はそれを祝福するだろう。この街は一緒にいてくれるよ。包んでくれるよ。1人ではないよ。この暖かい光は、いつしかの蟠りを溶かすだろう。春に雪が溶けるように。クリスマスのように特別な僕達は、いつでも、どんな日でも特別だ。胸が痛くて切ない夜も、後ろ向きになってしまう時も、鬱屈した心を平らげるだけの日々でも。僕らは必ず特別だ。

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