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猪肉と散髪と、満月の夜。

知人が100kgもある猪を獲ったとのこと、早速「食べてみる?」という連絡をもらいました。
少し躊躇するも…昆虫食をリアルに浸透させられようとしている現状…
「そういうのよりずっとまとも!」と考え至り、分けていただくことに。
知人は山小屋に3日間通いつめ、やっと解体したそうです。

もらったお肉はかなりの量。
いわゆる獣臭を想像し、クンクンと匂いを嗅いでみるも血生臭さすらなく、しかし思いのほか分厚く切られた状態に腰が引けつつも…いちばんシンプルに「そのものの味」を確かめてみるべく、焼いて塩だけで食べてみることに。

フライパンで脂身から順に焼いてみるのですが、
焼き進めるごとに尋常ならざる煙…!
しかし完全に火を入れることも大事な気がして、
そこは強気でカリカリ状態まで焼き終え、いざ実食。

嫌なにおいは全くなく、豚肉より牛肉に近い感じ、
そしてものすごい噛みごたえ。
でも嫌な硬さではなく、野山を駆け回り引き締まった筋肉の繊維感と、合成飼料などで育っていないせいか、澄んでいて爽やかなうま味がありました。おいしかったです。

ただ、ガス台から振り返るとキッチン全体は白く煙り、あまりの脂由来の煙に家族はもうどこかへ避難したあとで、ひとり静かに山の恵みをいただいた夕餉でありました。
これ、2日間くらい室内のキッチンでおこなったら、換気扇や部屋の壁はすごいことになりそうで…残りを食べるなら外で焼いてね!と家族から忠告されましたけど、とても貴重なジビエ体験でした。

この日は満月の夜でしたが、100kgにもなる大猪が山から去り、食糧としてこの体に届いたこと、なんだかとても尊い感じがして、お月様に手を合わせた晩でした。

そして月明かりの庭の明るさに、ふと伸びていた髪を切りたくなり自前のケープを巻き、のんびりと散髪をしました。
もう15年以上は自分でカットしているでしょうか。最近は動画でもセルフカットが流行っていますよね。

美容師の方には申し訳ないですけど、昔から美容院が苦手で…、おしゃれすぎる美容師の人も、巨大な鏡で自分を見ることも、思ったような雰囲気にならない事も…毎度かぶりがちで繰り返されるビジネストークも…本当に苦手なのです。

昔、自分で切ってみたら好みの感じになり、失敗を繰り返しながらもだんだんとうまくなり今に至りますが「美容院に行かなくてはならない・自分では切れない」の概念を捨てると「気が向いた時・好きな時間・好きな分だけ」が自宅で叶い、それがなんとも気楽なのです。

何もかも値上げの昨今、カット料金も馬鹿にならないですよね。
他者に任せていた仕事を自分でも行えるようになることは楽しみの一つにもなります。有事の時でも一人で完結できることが増えるわけで、安心材料にもなります。

友人に話すと「ムリムリ.笑」とほとんどの人が言いますが「どうして?」でキョトンです。生きてるうちに自分の髪くらい自分で切ってみること、試してみる価値あると思うんだけどな~。

満月の夜、猪肉の栄養をいただき、髪が短くなった
標高500mに住む人の話でした。