見出し画像

Lost Legacy ~使われなくなったVintage Dredgeのカードたち~

はじめに

こんにちは。sapuriと申します。
今回はVintageのDredgeでかつて採用されていたが今となってはあまり採用されていないカードについての紹介とその理由についてコメントします。
私は過去のレシピを見ていると「なぜこんなに強いカードが採用されないのだろう?」という疑問がふつふつと湧いてくることが多いです。しかしVintage記事で採用理由については多弁に語られているものの、不採用の理由に着目している記事はそう多くないようです。
そういった記事も読み物として面白いのではないかと思い今回執筆に至りました。なお今回の記事は筆者がプレイしているPitch Dredgeの観点から記載しております。Mana Dredgeでは状況が異なっていると思いますがその点、ご了承下さい。


①Dread Return+大型クリーチャーパッケージ

執筆にあたり過去のDredgeのリストを改めて確認していたのですが、私がVintageに参入する直前の2020年頃まではDredgeにおいてほぼ必須に近いセットだったようです。
私のDredgeの師(私が勝手にそう思っているだけですが…)であるれん。さんがCreeping Chillを採用したDredgeで2020年2月頃Vintage ChallengeのSE入賞の結果を残されて以来次第に姿を消していきました。(余談ですが、この1点だけにおいてもれん。さんの功績は偉大だったと思っています。)

採用されていた大型のクリーチャーは
①Ashen Rider:パーマネント除去
②Elesh Norn, Grand Cenobite:クロック強化
③Dragonlord Kolaghan:クロック強化
④Flayer of the Hatebound:クロック強化
⑤Flame-Kin Zealot:ライフにダメージ
⑥Sun Titan:必要杯の吊り上げ
といった錚々たる面々で今でも戦場に出たら十分に通用するカードたちです。

しかしながら、近年の採用率は稀で0ではないものの採用率は大幅に下がっています。理由としては下記があげられます。

①動きが大振りでオーバーキルになりやすい。
Dread Returnは効果が派手で通った時の成功体験が記憶に残ってしまうカードなのですが、実際は唱えられないと墓地に落ちた時に何もしないカードにほかなりません。これは大げさに言ってしまえば「マリガン効果のないSerum Powderをデッキに入れていること」と相違ないということです。また、フラッシュバックの条件もかなり厳しく3体のクリーチャーを生贄にする必要があるので、「そもそもDread Return唱えてなくてもこのゲーム勝ってたんじゃね?」となる試合がまま見受けられます。また、唱えてからゲーム終了までの速度は凄まじいものの、上記の通り唱えるまでの準備に時間がかかってしまうため「早くゲームを終わらせるカードにならない点」も高速化した現在のVintageとはミスマッチです。

②墓地対策に弱い≒サイドボード後に不要杯となりやすい
①で上述した通りですがこのカードは基本的に唱えられないと何もしないカードになります。そういったカードは墓地対策が大量投入されるサイド後には優先的にOutされていくので残念ながらこのカードもその対象になりやすいです。稀に今でもDeathrite Shamanを投入したフェアデッキに取られているThe Tabernacle at Pendrell Vale対策にAshen Riderを取られている方を見ます。一見理にかなった選択のように見えますが個人的には懐疑的・否定的です。そもそもThe Tabernacle at Pendrell Vale下において、Dread Returnを唱えられる状況であれば、複数対のIchoridが墓地に落ちている状況と考えられます。そうであるならば、Ashen RiderでThe Tabernacle at Pendrell Valeのリムーブを目指すよりもIchoridとCreeping Chillで直接相手のライフを狙いに行ったほうが近道となるでしょう。

以上の理由からDread Returnはその採用数を大きく減らしました。効果自体は極めて強力なカードですので今後何かしらの形で複数のクリーチャーを戦場に効果的に出せるカードが出てきたり、釣上げ先に強力なカードが登場したりすれば再度注目される可能性は大いにあると思います。

②Gitaxian Probe

Vintageの青系のデッキにはほぼ間違いなく採用されている制限カードで、極めて強力な1枚です。その強さは折り紙付きでレガシー以下のフォーマットではすべて禁止されてしまいました。1枚1枚のカードが他のフォーマットに比べて桁違いに強いVintageにおいて、相手の手札が見れるというのは大きなアドバンテージとなります。青いので各種のピッチカウンターの餌にもなり、Dredgeにおいては先手の1ターン目にBazaar of Baghdadの起動後に唱えることで即Dredgeができるカードとなっています。しかしながら現在では採用されることが少ないカードとなってしました。

採用されない理由は下記の2点です。
①唱えているのでカウンターされてしまう/マナを追加で要求されてしまう
Dredgeはその構造上、デッキの中の大部分は唱えることのないカードで、相手プレイヤーとしてはカウンターがハンドで腐っていることが多いです。特にMental MisstepsやForce of Negationといった対象の狭いカウンターはほとんどあてどころのないカードです。Gitaxian Probeはそれらの格好の的となってしまいます。また同様に主にMUDやDnTが取っている追加マナ要求カードに対しても無力です。Thalia, Guardian of ThrabenやTrinisphereがそれらの筆頭です。同じキャントリップであれば、同じ2点で起動できるStreet Wraithのほうが確実性は高いです。加えてStreet Wraithは色が黒いクリーチャーであるため、Ichoridの餌になる点も見逃せないポイントとなります。

②手札を見ることができる旨味が他のデッキよりも薄い
①に加えて唱えて通った時のバリューが他のVintageのデッキと比べて少ないという点があります。というのもDredgeはピッチで呪文を唱えるという性質上行えるアクションがかなり限られています。手札を見て相手の最適杯をケア・カウンターするというのが理想ですが、カウンターを持っているかどうかは他のデッキよりも運次第という様相が強いため、通った時のありがたみが他のデッキと比較するとかなり薄いです。

とはいえ安全確認できる点は優秀ですし、キャントリップとしての性能も悪くありません。Dredgeにおけるキャントリップはミラーマッチや対Bazaar系デッキのメインボード戦において先手後手の優位をひっくり返すことができる数少ないカードのため、今後同型が増えてきた場合には採用を検討する余地があると考えています。

③Bloodghast

土地を置いたらマナコストを支払わずに墓地から線上に戻ってくるクリーチャーです。Vintage以外ではModernのDredgeやLegacyのHogaakなどでも良く目にするクリーチャーだと思います。Pitch Dredgeはその構造上マナを支払えないので、優秀な墓地からの回帰要因ではありますが、こちらも最近はあまり採用されることがなくなってきました。採用されない要因は下記の通りです。

①クロックとして遅すぎる
Bloodghastは2/1で相手のライフが10点以下の場合は速攻を得ますが、1~2T目にTinkerから野生のSphinx of the Steel Windが飛び出しうる現環境下において、このカードは悠長すぎます。せめて、3/1程度のクロックであって欲しいところです。

②枠がない
Bloodghastはその能力上、Bazaar以外の土地を入れざるを得なくなります。筆頭となるのは、WastelandやStrip mine、Dakmor Salvageとなるのですが、これらのカードは墓地においても何もしないカードであるためデッキの枠を大きく食ってしまいます。優秀なカードがひしめくDredgeの中で優先順位が下がっていき必然的に採用されなくなってきた側面があると考えています。

③相方が採用されなくなった
今回トピックとして挙げたカードのうちの2/3がこのカードとのシナジーになるカードです。
①Dread Return
④Bridge from Below
⑤Cabal Therapy
⑥Hogaak, Arisen Necropolis
これらのシナジーとなるカードの採用が減ってきたことに正比例して採用が減ってきた面があります。

④Urza’s Sagaトークンにブロックされる
ご存じの通り現在のVintageの癌です。このカードから生み出される構築物トークンは容易に3/3まで到達してしまうために、クロックとしての性能が相対的に落ちてきてしまったという面は否めないです。一方でシナジーとなるWastelandやStrip MineはUrza’s Sagaには有効杯であるので、Tinker系に何かしらのテコ入れが入り環境が低速化した場合はこの欠点は薄くなります。(Urza’s Sagaはコンボデッキがコンバットで勝てるようになってしまったという点が最大の害悪です。)

上記の理由から採用が減ってしまいました。このカードの非採用理由は根深く、他のカードとのシナジーとも大きく関わっています。今後、環境が低速化した上でWastelandをメインに入れる有効性が認められる場合には採用を検討される可能性がありますが、構築枠を大きく使用するためいずれにしてもなかなか難しいのではないかと思っています。

④Bridge from Below/⑤Cabal Therapy

この2枚については筆者が過去に別筆した『Silversmote Dredgeについて考える』について同内容が記載されていますので、ご拝読いただければと思います。当時と構築に変化はありましたが、基本的な考え方に変化はありません。

⑥Hogaak, Arisen Necropolis

Hogaakは、MH1の害悪クリーチャーです。当時のModern環境を完全に破壊しメインボードに墓地対策を入れさせることにもなった恐ろしいクリーチャーでもあります。今なおVintageのメタの筆頭格デッキであるHogaakvineとして姿を残し続けていますが、Dredgeではその姿を見ることはほとんどなくなってしまいました。

①クロックとして遅すぎる。
Hogaakが唱えれるのはBridge from Belowを絡めたうえで最速2T、通常は3Tからというところだと思います。何度も重複したことを述べていて恐縮なのですが、現在のVintage環境において、コンバットできるのが4T目というのは遅すぎます。筆者もHogaakが遅すぎるといわれる日が来るとは思いませんでした。

②Bridge from Below/Cabal Therapyの不採用
最大の相方といえるこの2枚が不採用になってしまったため、自然不採用となっている側面があります。この2種8枚の枠が変化したことによって構築の軸がずれたことによってDredgeは様々な面から変化を遂げたといえます。

③仮想的の弱体化
このカードはJeskai ArcanistにおけるContaiment Priestの戦場存在下でも手札から唱えられるクロックであるという点が優秀なポイントでした。また、墓荒らしに対してDeathrite ShamanやTarmogoyfを乗り越えてコンバットに行けるという点も着目されていました。現在の環境下ではこれらの仮想敵は下火となっており、優位性を失ってしまったといえます。

Hogaakは墓荒らし系のデッキがメタゲームで優位性を取り戻した場合、再度採用される余地は高いと思います。但しそのためにはUrza's Sagaが環境から減ることが前提となりそうです。果たしていつメスは入るのでしょうか…。

おわりに

如何だったでしょうか。
今回記事をまとめて自分の中でこれらのカードの不採用の理由を言語化することができたことは大きな収穫でした。その中でもとりわけ、多くのカードに共通しているのは、『速度がない』という点だったと思います。現在のVintageを握っているのはいかに高速化させて、青系のコンボデッキと張り合うかということは間違いないでしょう。
一方でこれらのカードは今でこそ使われていないものの、いずれも唯一無二の能力を持っていることは間違いなく、環境次第では改めて使われる日が来ることがあると思います。私自身はデッキビルダーではないため、環境調整は他のプレイヤーの方に任せがちなのですが、折を見て色々なDredgeを試していきたいと思いました。

以上となります。ご拝読ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?