見出し画像

早くもJ1残留黄色信号。「ちぐはぐな意思統一」で負け同然のドロー | J1リーグ第10節

3点リードも残り23分で追いつかれる

4月27日(土)、ホームに湘南ベルマーレを迎えた明治安田J1リーグ第10節。前節終了時で20位のコンサドーレと18位の湘南、ともに勝ち点6で並ぶ残留争い直接対決となった。湘南は直近リーグ戦で7試合勝ちなし、さらにルヴァンカップも2回戦で敗退するなど、決して良いチーム状態ではなかった。


コンサドーレは不動のCBであるDF岡村 大八が欠場し、前節ボランチで出場したDF宮澤 裕樹が3CBの中央を務めることになった。スポーツ報知によれば、岡村は左わき腹の肉離れとされ、クラブ公式からの発表はない(4月27日17:31時点)。宮澤のCB起用に伴い、MF駒井 善成をボランチに下げ、1トップには復帰したFW鈴木 武蔵、左CBにはDF中村 桐耶が入った。

J1リーグ第10節 フォーメーション

前半だけで2得点。今季リーグ戦では初となる複数得点

残留争い直接対決、いわゆる“シックスポインター”といえるこの一戦。先制点が重要なだけに慎重な立ち上がりになるかと思われた。しかし、両チームともに積極的な攻撃が目立つ序盤だった。

この展開で強いのはコンサドーレ。前半23分、左サイドでMF青木 亮太とMFスパチョークのワンツーで相手DFを一枚はがすと、スパチョークがドリブル突破に成功。クロスはクリアされるものの、こぼれ球を青木が回収し、ペナルティエリア左からミドルシュートを突き刺した。シュート直前、体がやや開いていたため、ファーサイドを狙うかと思われたが、腰のひねりを使ってニアに強烈なシュートを放つ“青木らしさ”が発揮された今季初得点だった。

追加点は前半42分。右CKからMF浅野 雄也がボックス中央にクロスを上げると、つり出された相手GKの動きを見逃さなかったMF近藤 友喜がヘディングシュートを決めた。近藤は移籍後初ゴール。

前半を2点リードで折り返したコンサドーレ。しかし、大局としては湘南を上回っていたものの、得点に反して相手にとって脅威となる攻撃を数多く出せていたわけではない。実際、DAZNの中継で流れた統計データを見ると、コンサドーレの前半のゴール期待値(xG)は0.73だった。また、前半アディショナルタイムに宮澤が右腰付近を押さえ、ハーフタイムでDF家泉 怜依に交代したこともあり、決して安心できる試合ではなかった。

青木のゴラッソは復活の証

エンド変わった後半9分。中央で縦パスを受けたスパチョークがペナルティボックスやや左の青木にパスを送る。青木は中央に切り込みミドルシュート。これがゴール右隅に突き刺さり、この試合2ゴール目。コンサドーレは大きな大きな3点目を奪った。

攻撃か守備か、ポゼッションかカウンターか

湘南はハーフタイムで2枚替えを行うなど、攻撃を重視する姿勢を見せた。後半22分には途中交代直後の選手に得点され、2点差。1プレー前のDF馬場 晴也と相手FWルキアンのマッチアップで敗れたことが失点につながった。流れの中で裏を取られたり、空中戦で競り負けることはあれども、相手の背中に張りついた状態から、味方がボックス内の守備を整える時間を稼ぐこともできずに突破を許したのはいただけなかった。

失点直後の後半26分、コンサドーレはスパチョークと武蔵に代わり、DF高尾 瑠とFW小林 祐希を投入した。ボールキープに長けた攻撃的な両選手をこのタイミングで入れるならば、“ボールを保持しながら時間を進める”意図が感じられる。しかし、湘南の攻勢を受けるにつれてボールをつなぐ意識は薄れ、セカンドボールはことごとく相手に渡ってしまった。

2失点目は後半40分。ボックス内へのクロス対応が甘く、ヘディングの折り返しにフリーの選手が反応した。コンサドーレはクロス対応時にボールウォッチャーになったり、足が止まる選手が多く、次のアクションで後手を踏む。いまだに改善されない失点パターンを再演した。

直後の後半41分、コンサドーレは青木を下げ、FWキム ゴンヒを投入した。ボールが収まらない状況を解消すべく、前線でキープできる選手が必要だった。やはり、"ボールを保持して時間を進める”狙いだったのかもしれない。しかしながら、ピッチに立っていた選手たちは中途半端なクリアを繰り返し、ボールをつなぐ、もしくは前線に供給することを放棄した。

再三ふいにした意思統一の機会。その代償は大きかった

この試合、スーパーゴールやセットプレーなどで期待値以上のゴールが生まれ、3点のリードを手にした。その分、失点したとしてもチームとしての戦い方を整理するチャンスは多くあった。だが、すべての機会をふいにしてしまい、ちぐはぐなまま試合を進めてしまった。

今回のようにボールキープに長けた選手を投入するのであれば、自分たちのパスサッカーを曲げずにボールをつなぎ、試合をコントロールしなくてはならない。他方、ゴール前でブロックを敷くことでクリアに耐え、カウンターを狙うのであれば、MF原 康介やMF田中 克幸といった空いたスペースにドリブルで運べる選手を投入するほうがよい。

采配とピッチ内の戦い方が曖昧な状態は最も危険だ。ゴール前へのクロスを多用する相手にわずかなスペースと時間を与えることで、ケアすべきポイントが増え、対応が遅れる。ようやくクリアしたとしてもボールを収め、時間をつくれる選手には届かない。勝手にサンドバック状態を作ってしまっていた。

J1残留へ黄色信号。10節消化で勝ち点わずか7

コンサドーレは後半アディショナルタイムにCKから被弾。そのまま試合は3-3で終了した。ホームで残留争いのライバルに対し、3点リードを追いつかれたともなれば、ほぼ敗戦といっていい。10節消化時点で1勝5敗4分の勝ち点7(得失点-11)。シーズン途中に大型補強はできない財政状況を鑑みると、J1残留に向けて極めて厳しい状況といわざるを得ない。

次戦は5月3日(金)にアウェーでセレッソ大阪と対戦する。今一度、チームの戦い方を整理し、明確に意図をもって戦ってほしい。

感謝感謝です。

引用・参考資料
「J1札幌 MF宮沢裕樹が今季初3バック中央でゴール死守…最下位脱出へ向け27日・ホーム湘南戦」(2024年4月27日) スポーツ報知
https://hochi.news/articles/20240427-OHT1T51030.html?page=1 (最終閲覧日:2024年4月27日)

「札幌vs湘南の試合結果・データ(明治安田J1リーグ:2024年4月27日)」 J.LEAGUE.jp
https://www.jleague.jp/match/j1/2024/042701/live (最終閲覧日:2024年4月27日)

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?