見出し画像

パフォーマンスいわれ25 サディスティックサーカス18「2018春 初コラボ龍崎飛鳥チーム」

2018年、春。今回は特別コラボレーションということで、京都のフェティシュバー「バルバラ」のママ、龍崎飛鳥氏との共演となった。
 
なぜこうなったか。キッカケは2017年春のサディステックサーカスであった。出番は違えどもサディスカ常連組は顔を合わせば挨拶をし、世間話をする。その中でも同業者SM班はやはり深い会話になったりする。そんな流れで飛鳥氏とも話していた際、やおら、
「早乙女に刺されて死んでみたい。そんなショーをやってみたい」
と言われた。私は一瞬「えっ?」と耳を疑った。飛鳥氏との出逢いも長いが、彼女の作る緊縛ショーに「陰」の部分はみられない。衣装やメイクをポップに仕立て、ファッショナブルな緊縛ショーだ。感情的にもさっぱりした印象の飛鳥氏なので、「死」というテーマを投げかけてくるとは思わなかった。

龍崎飛鳥氏を知ったのは1993年頃の雑誌「S&M スナイパー」のグラビアであった。その頃、SMクラブの女王様がフューチャーされ、メディアに顔出しOKの方々が増えた。その中の一人であったが、長身でスレンダー、背中の墨も美しいその姿に釘付けとなった。「こんなカッコイイ方が女王様として登場するようになったか」私は癖と関係なく、飛鳥氏の存在が気になりだした。一目惚れに近いのかもしれない。それからメディアに登場するたびに見ていたし、スナイパー本誌では飛鳥氏が関わるSMクラブへの出張取材も同行もさせてもらっていた。

そんな飛鳥氏からの提案である。私がびっくりするのも無理ないだろう。そんな私をよそに飛鳥氏は話しながらどんどんイメージが膨らみ、
「軍人の私、その妻早乙女。男装の麗人で刺されたい」
そこまでくれば私も納得。長身でスレンダーな軍人姿の飛鳥氏が見たい。即座にサディスカ団長にも話し、この企画がまとまった。

しかし私は札幌、飛鳥氏は京都。稽古は本番当日のみ。軍人の夫をなぜ妻が刺さなければならないのか、その後の後追い切腹をする妻。死に至る感情をある程度芝居で見せなければ伝わらない。
 そこで、捕虜を折檻する軍人の夫。その姿を見た妻は、捕虜を夫の情婦だと勘違いし、激怒。嫉妬し捕虜を刺そうとする。逃げる捕虜。さらに夫に詰め寄る妻。感情の昂ぶりが収まらず、夫の腹を刺す。夫は妻の勘違いも受け入れ、とどめに自らの眼を刺し抜く。下士官がやってきて、夫の無実を告げる。妻の動揺。夫を疑った詫びのために自らの腹を切る。というストーリーを二人で作り上げた。「眼を刺し抜く」というのは飛鳥氏自らがやりたいことであった。私はもう一つ何かラストが欲しかった。腹切りシーンで終わり、では何か物足りない気がした。でもそれは何か、、、。
 
そんな時、付き合いの深い切腹愛好家の方から、宝塚歌劇団のDVDを借りた(切腹とは関係ないが)。大団円で、結ばれなかった悲恋の男女が仲睦まじく登場し、踊っている。
 私はこれを観て「これだ!」と思った。妻の勘違いで悲しい夫婦の結末は、幻想シーンによって昇華され、二人は再び出逢って幸せになる。私はこれでこの物語は完成されると直感した。
 
それから苦労したのは音作りの飛鳥氏だった。メールで曲をやりとりしながら決めて行った。彼女のこだわりは私以上で、編集した音、一曲ずつに細やかな愛情が感じられた。

本番当日。
打ち合わせや稽古はもちろんやったが、それよりも私は楽しい、幸せな一日を過ごしていた。飛鳥チームはいつも人数が多く、華やかな雰囲気だった。実は私、羨ましいと常に思っていた。人付き合いが下手な私だが、ショーの前に語り合える仲間が欲しいと思っていた。今回も私たち二人の他、捕虜役二名、下士官一名、お手伝い一名、ヘアメイク一名。それぞれのプライベートタイムが有りつつも、楽屋は私が体験することのない女子会ムード。とても華やかである。テンションが上がる。
 ステージはもちろん全力で演じ、演りきった満足感でいっぱいだ。幻想シーンも作って正解だったと思う。哀しい切腹と、幸せな再会シーン。メリハリがつき、後味も幸せな気分である。
 
ステージ後は飛鳥ファンからの山のような差し入れを囲み、深夜のピクニック気分でチームのみんなと話し込んでいた。こんなシチュエーション本当に憧れていた。昔懐かしい、ストリップ劇場SM大会の楽屋みたいだ。私はこの雰囲気に酔っていた。若いメンバーたちは、ケーキやフルーツを頬張り、私は缶ビール片手に母のような気分でにこやかに見守っていた。私はあまりにも満喫しすぎ、帰りの飛行機出発時間を勘違いし乗り遅れる、という失態をしたが、この時間を買ったと思えば安いもんだ。
 
ほんと楽しかったなぁ。一生の思い出だ*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*

龍崎飛鳥・早乙女宏美コラボレーション
   「花いくさ」第2稿構成表
 出演:陸軍将校 龍崎飛鳥
    その妻  早乙女宏美
    捕虜中国女 
    軍人(女子)1,2名
シーン1(3分)
  夫と妻の睦まじさ。軍へ送り出す妻(妻はける)

シーン2(23分)
  軍人、捕虜を引き連れ入ってくる(本舞台)
  将校は捕虜を折檻

シーン3(2分)
  妻は夫の凛々しい姿見たさに軍へ
  折檻後の夫と捕虜を見、恋仲だと勘違い
  嫉妬した妻、肌身離さず持っていた懐剣で、
  捕虜を刺そうとする。阻止する夫
  捕虜は軍人に連れ去られる

シーン4(8分40秒)
  妻の嫉妬はおさまらず、夫に詰寄る
  見つめ合いながらジリジリと。夫は何も弁解しようとしない
  ついに妻、夫の腹へ刃を立てる。引き回す
  苦痛に歪む夫。
  自分の潔白を証明するため、妻から刃を取り、
  喉を刺し絶命する
  軍人駆けつける。「将校は潔白である」とさとす
(軍人が将校を連れ去るか、死人となって舞台に残るか?)
  妻はうろたえる。愛する夫を刺してしまった後悔
  そして自害を決意。腹切りする。妻、息絶える。

シーン5
幻想世界。スモークの中、夫と妻、再び手を取り合い、見つめている。
終わり

http://ag-factory.sakura.ne.jp/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?